【読書メモ】 孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきた すごいPDCA
孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきた すごいPDCA―――終わらない仕事がすっきり片づく超スピード仕事術
- 作者: 三木雄信
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2017/02/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (3件) を見る
孫社長の右腕としてソフトバンクを成長させた元社長室長の三木雄信氏が、会社の急成長を支えるために従来のPDCAに独自のエッセンスを取り入れてより高速にPDCAが回せるように取り組んだ手法をまとめた書籍です。著者はこの手法を「高速PDCA」と呼んでいます。
高速PDCAとは
まず冒頭で、著者がずっと見てきた孫社長の仕事のやり方と比較して、普通の人の仕事が滞るのは次のような原因があると述べています。
仕事を滞らせる6つの原因
- 計画に完璧さを求めること
- 一球入魂主義
- 期限の甘さ
- 数値で設定されていない曖昧なゴール
- 検証の中途半端さ
- 自前主義
これらは全て「高速PDCA」を回すことで解決できるとしています。
ソフトバンク3原則
ソフトバンクで高速PDCAを実践している背景として、最も大事にしている次の3つの原則が紹介されています。
- 思いついた計画は、可能な限りすべて同時に実行する
- 1日ごとの目標を決め、結果を毎日チェックして改善する
- 目標も結果も、数字で管理する
この3原則を満たす仕事のやり方が「高速PDCA」です。
高速PDCAを回すことで身につく力
- 自分で考える力
- 数字を使う力
- ムダがなくなる
- 高いモチベーション
- 失敗を恐れない力
高速PDCAの8ステップ
高速PDCAは次の8つのステップで実践します。
- 大きな目標を立てる(週、月単位など)
- 小さな目標を立てる(1日が原則)
- 目標達成に有効な方法をリストアップする
- 期間を決めて、すべての方法を同時に試していく
- 毎日、目標と結果の違いを検証する
- 検証をもとに、毎日改善する
- 一番優れた方法を明らかにする
- 一番優れた方法を磨き上げる
高速PDCAを支える数字へのこだわり
ソフトバンクのような会社の成長スピードを支えている背景として「高速PDCA」が非常に重要な役割を担っていたことは確かによくわかります。ただ、個人的に本当に重要なのは本書の中盤に書かれている高速PDCAを実践するための数字へのこだわりの部分だと感じました。ただ闇雲にPDCAを高速で実践すれば良いわけではなく、PDCAを高速に回すためどのように数字を切り取り、目標を設定し、日々検証するかが「高速PDCA」にとって一番重要な部分なのです。ただ、本書ではテクニックの一部が紹介されているだけです。あとは自分で考えて実践せよという事だろうと思います。
月間、週間ではなく「毎日」の目標を設定する
ソフトバンクではまずは「実行ありき」で、Planではなく「目標+実行」から全てが始まります。
- 大きな目標は「ナンバーワン」を基準に決める
- ナンバーワンは人、情報、金が集まってくる
- 小さな目標は「毎日できること」で定義する
毎日の目標を定義する流れは以下の通り。
- 仕事をプロセスに分ける
- 「大きな目標へつながる毎日の行動」を見つける
- 目標を達成する「具体的なアクション」を設定する
ここがソフトバンクが実践する「高速PDCA」の一つの肝だと思います。「ナンバーワン」と「毎日できること」は目標を立てる上でとてもシンプルな基準です。目標を立てる時にそれが実現可能か?を深く考えるまでもなく答えが出せるからです。だからこそ「目標+実行」が可能なのです。
高速PDCAを回すために数字を扱う
高速PDCAを回すためのテクニックがいくつか紹介されています。このあたりは少しテクニカルな話で、様々なところから情報の入手が可能だと思います。
多変量解析
T字勘定
可視化の手段としてT字勘定の考え方を応用することで「入ってきた数」と「出ていった数」が日々追跡できて良いという話でした。
高速PDCAを実践する
後半は「高速PDCA」を実践するためのヒントとしていくつかのノウハウが紹介されています。
6:3:1の法則
一番良い方法を6割、次に良い方法を3割、新しい方法を1割にして仕事をすることで以下のような3つのメリットが得られます。
- 成果を確保しつつ、さらに上をめざしていける
- 不足の事態、世の中の変化に柔軟に対応できる
- 新しく試した方法が失敗しても、大きな痛手にならない
まぁしゃん理論
本番の前から準備を重ね、相手が自分から望んで寄ってくるような状況をつくる
「鯉とりまぁしゃん」という鯉とり名人の話で、「イエス」を引き出す手法として紹介されています。事前に栄養をとってしっかり準備して体温を温かくして水中に入ると人肌の温かさで鯉が集まってくるので、あとは腕の中にそっと受け止めるだけで鯉がとれるという話です。
人を動かすには見える化
3つのポイント
- その方法を実行した場合に問題になりそうなことをすべて洗い出す
- 問題の洗い出しは、関係者全員で行う
- うまくいかなかった場合の代替案を提示する
マウンテンガイド理論
高速PDCAを回すためには何でも自分でできるわけではなく、人の力を借りることも重要だとされています。
初めて挑む山に最短ルートで登るには、その山を知り尽くしたガイドを雇うのが確実
人の力を借りる3つのコツ
- 話を聞く前に、本を読んでおく
- 良い質問を用意しておく
- ビジョンを語る
おわりに
「常にナンバーワンを目指して高速PDCAを回すことでソフトバンクは成長を続けてきた」というのが本書の締めくくりです。ここからどういう共感や教訓を得るかは人それぞれですが、高速PDCAはそういう概念的なものであり実装は人それぞれなのだろうと思いました。PDCAを高速に回すためにどういう数字を使うかを徹底的に考え、それを高速に実践するためにありとあらゆる様々なアクションを起こすことで、高速PDCAが実現されるのです。