【読書メモ】3分間コーチ
ひとりでも部下のいる人のための世界一シンプルなマネジメント術 3分間コーチ
- 作者: 伊藤守
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2008/03/13
- メディア: 単行本
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コーチングと言うと、1on1など、会議室などの場所に1対1で対面し、まとまった時間を使って行うものだというイメージがあります。しかし、部下とすれ違いざまのたった3分間でもコーチングの手法を使い「今その場で、目の前に起こっていることについて話す」ことで部下の成長や課題解決をサポートできるというのがこの書籍の内容です。多忙なマネージャにとって有効な手法と言えます。ちなみに、 『コーチング・マネジメント』 と同じ著者の書籍です。
セルフトーク
誰かと会話したあとで、その場では会話しなかった内容が自分の心の中でしばらく続くことがあります。「◯◯のように言えば良かったな」とか「◯◯と回答したほうが良かったな」と、会話の内容が頭の中で継続して展開されるような状態をセルフトークと言うそうです。
会話そのものではなく、会話のあとのセルフトークが、人の行動を決定するため、3分間の部下とのコーチング・カンバセーションによってこのようなセルフトークを生み出すことが重要であるとしています。
※参考
気づいただけでは行動は変わらない
コーチングによる気づきは重要ですが、実際には気づきだけですぐに行動には繋がらないことが多々あります。実際に行動を起こすまでに以下のような過程が必要です。
- 会話の中での気づき
- セルフトークでの熟考
- 選択
- 行動
熟考し、選択する時間が必要
であり、それを促して行動に繋げるのが3分間コーチによる日々のコミュニケーションなのです。
業務の妨げとなる課題をコーチする
「業務を妨げる、もしくは、そのスピードをおくらせてしまう要因」は以下の5つであるとしています。
- 優先順位がわからない、間違っている
- スキル不足(実行のためのスキルが足りない)
- 優柔不断(小さな取捨選択を迷って、なかなか決められない)
- 不安(失敗や自分に対する評価への恐れから、途中経過の開示が遅れる)
- モチベーションの低下(たいていは1〜4の結果として起こる)
3分間コーチによって、日々の会話の中で上記のようなタイミングを逃さずキャッチアップし、コーチすることができます。
3分間コーチにとって大切なことは何を話すかよりも、どんな場面で話すか
また、日々の3分間コーチによって問題になる前に部下自身が気づき、回避行動を促すこともできます。
大切なのは、事が起こってからコーチするのではなく、事が起こる前に、予測し、それをコーチする
ビジョン・メーキング
イメージは記憶できない
会話を通じ、問いかけを通じ、さまざまな可能性を思い描く過程で鮮明になっていく
ビジョンはイメージと同じで示すだけで記憶させることは難しいと著者は述べています。組織のビジョンを明確にして示すのはマネジャーの重要な仕事の1つなので、そのビジョンを部下に伝えて組織に浸透させるためにも3分間コーチは役立ちます。
フィードバックとフィードフォワード
フィードバックとフィードフォワードを使い分けることで3分間コーチの効果が高まります。
フィードバックは次のようなものだと述べられています。主に業務の課題に対するコーチに使います。
今のきみのやり方を見ていると、わたしははらはらする
少し急ぎすぎているように見える
フィードフォワードは次のようなものだと述べられています。前出のビジョン・メーキングなどに使います。
チームの未来はどういうものに見える?
我々の顧客は、我々のサービスにどのぐらい満足しているのだろうか?
コミュニケーションによるマネジメント
著者はコミュニケーションについて以下のように述べています。
- 生産性に直結している
- 組織の活動のすべてに関係している
コミュニケーションを交わさないでは、業務は円滑に前に進まないし、部下の育成もかないません
マネージャも、話し上手な人もいれば無口な人もいます。しかし、マネジメントでは必要な時、必要な場所で言葉を使って必要なことを伝えなければなりません。どのようなタイプのマネジャーにとってもコミュニケーションは重要かつ貴重な機会であり、3分間という短い時間を有効に活用することが組織のマネジメントにつながるということだと思います。
【読書メモ】図解コーチングマネジメント
- 作者: 伊藤守
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2005/04/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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コーチングの理論と実践方法が体系的にまとめられた書籍の「図解」版です。「図解」ではないほうの書籍は、これからマネジメントにコーチングを取り入れたい人がじっくり読んで理解したい場合に、「図解」のほうはある程度コーチングを理解した人が書籍を手元に置いて実践に向けておさらいしたり、実践後に自分の理解や行動をチェクするなどの場合に活用できると思います。
私の場合は、直近でコーチングの手法を取り入れた話し方、聞き方、習慣など特定のテーマの本を読んできて大体のことは理解できているつもりではあるものの、改めてコーチングの全体像をおさらいするために読みました。コーチングの知識について体系的にまとまっていて、図を活用したわかりやすさ、要点が整理された100ページ弱のボリュームなど、実践向けで常に手元に置いておきたいと思える内容です。
図解ということで、コーチングが有効な人材と領域について図解されていた内容を改めて図で整理してみました。
コーチングが有効な人材
仕事に対するリスクの高さを縦軸、従事する人材の能力の高さを横軸とした場合、コーチングが最も有効なのは「リスクが高い職務に従事する能力の高い人材」、次に有効なのが「リスクが低い職務に従事する未熟な存在」とのことです。
前者は元々自分で考えて行動を起こす意欲のある人がコーチによってさらにドライブされるイメージだと思います。後者は自分で考えて行動を起こす習慣が無いけどポテンシャルはある人にコーチすることで覚醒させていくイメージだと思います。
コーチングが有効な領域
仕事の重要度を縦軸、緊急度を横軸とした場合、コーチングが最も有効なのは「重要だが緊急ではない事柄」とのことです。
緊急度が高い場合はコーチングに頼らずともやるしかないので、緊急度は意識しなくても良い重要な領域でコーチングを活用するのが良いのだと思います。
要点が体系的にまとまっている本なので、そこからさらにピックアップしてもあまり意味がありませんが、個人的に改めて意識したいと感じたキーワードを紹介しておきます。
フューチャーペーシング
ゴールの次をビジュアライズさせる手法のことです。
それを達成したら次に何をやりますか?
ゴールは行き止まりではなく駆け抜けるものなので、コーチは次のゴールをイメージさせてクライアントに広い視界を見せてあげることが求められます。
※参考
エコロジカルチェック
変わることにはリスクもあるので、バランスが大事です。やり方を変えたいと思っても行動が伴わずちぐはぐになってしまったり、行動を起こしても意識が追いついておらず違和感を持ってしまうなど、何かうまくいかないということはあります。
- 考え、感情、意図、行動の状態をチェックする
- 変化によって生じる歪みをチェックしてバランスをとる
やり方を変えたことで、「気分はどうか?」「違和感はないか」などコーチが質問してバランスを確認するのがエコロジカルチェックです。
※参考
【読書メモ】質問力ノート
- 作者: ルパート・イールズ=ホワイト
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2004/02/14
- メディア: 単行本
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コーチングで最も大事なことが「傾聴」で、とにかく「自分から話をしない」「聴くことに徹する」とよく言われます。しかし、実際には要所要所で何かを喋らないと会話は進まないので、聴くに徹するためにも大事なポイントで最低限の質問をする必要があります。たいていの場合は質問をすることで会話の流れを作っていくため「質問力」は重要なスキルになります。コーチングの手法に沿って会話の流れを作るための質問のしかたを具体的な事例も交えながら解説しているのがこの本です。120ページほどの書籍ですが、質問のしかたに絞った内容で、表面的な質問のしかただけではなく、背景となる考え方、行動のしかた、質問する相手への意識など、具体的に掘り下げた内容で質問することの意味や効果の理解を深めることができます。
会話の流れ
まずは質問者が質問することによってこれから展開される会話の流れを以下のようにイメージします。
会話の流れ | 焦点を当てる対象 | 質問のスタイル |
---|---|---|
会話を始める | 相手 | オープン |
問題を明確にする | 相手 | オープン |
議論を発展させる | 相手 | オープンとクローズド |
問題を解決する | お互い | オープン |
行動を決める | 相手またはお互い | クローズド |
ここでのポイントはオープン・クエスチョンを基本の質問スタイルとしながら、重要なポイントでクローズド・クエスチョンをして会話の流れを作っていくことです。相手に焦点を当ててオープン・クエスチョンすることで、相手が考える機会をつくり気付きを促します。問題に焦点を当てたり、次の行動を決める重要なポイントではクローズド・クエスチョンをします。
良い聞き方をする7つのポイント
以下のようなポイントを意識することで相手に発言を委ねるオープン・クエスチョンの中でも会話の流れをつくっていきます。
- 聞くことに集中する
- 客観的になる
- 判断しない
- (相手が)理解しているかどうか確認する
- ポジティブなボディランゲージを使う
- 聞いていることを相手に伝える
- 沈黙を大切にする
オープン・クエスチョンをつくる5W1H
5W1Hには「発見の疑問詞」と「行動計画を立てるための疑問詞」という大きく2つの役割があります。
発見の疑問詞
- WHAT⇒何?どんな?
- 問題をはっきりさせる
- 考えさせる
- WHY
- 説明を求める
- 原因を特定する
- HOW
- アイデアを探る
- 考えさせる
ここでのポイントはWHATをうまく使うことです。WHYは原因を特定する重要な質問ができますが、聞き方によっては「なぜそんな事をしたの?」というような批判と受け止められる場合があります。そこで、「どういう理由でその行動をしたのですか?」という形で、「その理由は何?」というWHATの質問に置き換えます。
行動計画を立てるための疑問詞
- WHO
- WHEN
- WHERE
これらは次の行動を決める場合に使うことで、具体的な内容を決定します。
よい質問をする方法
最後によい質問をする方法の10項目を紹介しておきます。
- 会話の前に「どんな会話にするか」考える
- オープン・クエスチョンを用意しておく
- 答えを誘導するような質問はしない
- 選択を限定するような質問は避ける
- 鋭い質問をする
- 目的に合った言葉を使う
- 質問はシンプルにする
- 質問は1回に1つだけにする
- 自分が質問されたら答える
- 練習する
【読書メモ】図解コーチングマネジメント
- 作者: 伊藤守
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2005/04/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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コーチングの理論と実践方法が体系的にまとめられた書籍の「図解」版です。「図解」ではないほうの書籍は、これからマネジメントにコーチングを取り入れたい人がじっくり読んで理解したい場合に、「図解」のほうはある程度コーチングを理解した人が書籍を手元に置いて実践に向けておさらいしたり、実践後に自分の理解や行動をチェクするなどの場合に活用できると思います。
私の場合は、直近でコーチングの手法を取り入れた話し方、聞き方、習慣など特定のテーマの本を読んできて大体のことは理解できているつもりではあるものの、改めてコーチングの全体像をおさらいするために読みました。コーチングの知識について体系的にまとまっていて、図を活用したわかりやすさ、要点が整理された100ページ弱のボリュームなど、実践向けで常に手元に置いておきたいと思える内容です。
図解ということで、コーチングが有効な人材と領域について図解されていた内容を改めて図で整理してみました。
コーチングが有効な人材
仕事に対するリスクの高さを縦軸、従事する人材の能力の高さを横軸とした場合、コーチングが最も有効なのは「リスクが高い職務に従事する能力の高い人材」、次に有効なのが「リスクが低い職務に従事する未熟な存在」とのことです。
前者は元々自分で考えて行動を起こす意欲のある人がコーチによってさらにドライブされるイメージだと思います。後者は自分で考えて行動を起こす習慣が無いけどポテンシャルはある人にコーチすることで覚醒させていくイメージだと思います。
コーチングが有効な領域
仕事の重要度を縦軸、緊急度を横軸とした場合、コーチングが最も有効なのは「重要だが緊急ではない事柄」とのことです。
緊急度が高い場合はコーチングに頼らずともやるしかないので、緊急度は意識しなくても良い重要な領域でコーチングを活用するのが良いのだと思います。
要点が体系的にまとまっている本なので、そこからさらにピックアップしてもあまり意味がありませんが、個人的に改めて意識したいと感じたキーワードを紹介しておきます。
フューチャーペーシング
ゴールの次をビジュアライズさせる手法のことです。
それを達成したら次に何をやりますか?
ゴールは行き止まりではなく駆け抜けるものなので、コーチは次のゴールをイメージさせてクライアントに広い視界を見せてあげることが求められます。
※参考
エコロジカルチェック
変わることにはリスクもあるので、バランスが大事です。やり方を変えたいと思っても行動が伴わずちぐはぐになってしまったり、行動を起こしても意識が追いついておらず違和感を持ってしまうなど、何かうまくいかないということはあります。
- 考え、感情、意図、行動の状態をチェックする
- 変化によって生じる歪みをチェックしてバランスをとる
やり方を変えたことで、「気分はどうか?」「違和感はないか」などコーチが質問してバランスを確認するのがエコロジカルチェックです。
※参考
【読書メモ】相手を変える習慣力
- 作者: 三浦将
- 出版社/メーカー: クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
- 発売日: 2016/04/22
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コーチング関連でたどり着いて読んだ本です。前著も有名のようなので合わせてどうぞ。
- 作者: 三浦将
- 出版社/メーカー: クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
- 発売日: 2015/11/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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また著者のサイトでも関連情報を参考にすることができます。
相手を変える習慣力とは
相手を変える習慣力は、相手を変えてやろうとする意図を減らせば減らすほど、身に付けることができる
まずは自分が変わる重要性が説明されています。
アドラー心理学をベースに、相手を変えようとするのではなく自分自身が変わることの必要性を理解し、コーチングの手法によって相手を受け入れ、承認して自分自身の接し方を変えていき、それによって相手が変わっていく、というのが「相手を変える習慣力」の大まかな流れです。
アドラー心理学
相手を変えてやろうとする意図を減らすほうが良いという説明としてアドラー心理学が引用されています。
幸福の3原則
- 自己受容
- 能力や地位や年収が高いからと言って、自己受容が高いとは限らない
- 他者信頼(所属感)
- 自分の居場所がないと感じる状態があり、自分の居場所を見つけるために、自分を受け入れてくれる場所に身を置こうとする
- 貢献感
- 人への貢献感、「ありがとう!」をいただける喜びは、何よりの強烈な幸福感であると同時に、人間が根源的に求めることでもあります
- 人は人に傷つき、人に救われる
そして、アドラー心理学の「目的論」をベースに相手に接することで習慣を変えられるというのが本書の主旨です。
原因論 | 目的論 |
---|---|
Whyなぜ? | Howどうしたら? |
過去 | 未来 |
ダメ出し | 承認 |
レッテル貼り | 状態を観察 |
勇気くじき | 勇気付け |
防御 | 心を開く |
萎縮 | 潜在力発揮 |
アドラー心理学については「嫌われる勇気」の過去記事も参照。
コーチング
そして、目的論をベースに相手を変えるための具体的な手法としてコーチングの手法をピックアップして説明されています。
コーチングは潜在意識から意識(健在意識)に上げて気付きを起こす
ラポール
まずは相手との関係性をつくるラポールの重要性について述べられています。
特に、本当のラポールとは
まずこちらから相手を認め、相手を受け入れることから始まる
と、その重要性を述べています。
具体的な手法は以下のようなものがありますが、参考情報はたくさんあるので詳細は割愛します。
※参考
メラビアンの法則
人は人の真意を、言葉よりも、言葉以外からのメッセージで感じ取る
これもよく引用される情報ですが、言語情報:聴覚情報:視覚情報は7:38:55の割合だと言われています。
※参考
傾聴
良いコミュニケーションの基本は、上手く話すことではなく、しっかりと傾聴すること
言葉以外の重要性からしっかり傾聴することが重要であるとし、具体的には以下のような行動について説明されています。
- 相手が話しやすい雰囲気づくり
- 笑顔
- うなずき、あいづち
- 繰り返すスキル(オウム返し)
- 相手の話に興味を持つ
- 相手の話を取らない
コーチングについても過去記事がいくつかあるので参照。