【勉強会メモ】第0回 PM Meetup by pmconf 〜リモートワーク時代のプロダクトマネジメント〜
- 日時:2020-04-27(月)19:00 - 20:30
- オンライン
バーチャルSNS cluster を使ったオンライン勉強会に初めて参加してみました。
自分のアバターをバーチャル空間で動かしてオンラインなのにその場で発表を聞いているような感覚で閲覧できたり、拍手とか様々なリアクションができたりという点はとても面白いスタイルだと思います。バーチャル空間なので他の参加者のアバターが普通に視界を遮って見えなかったりするのはオンラインなのに不自由という、若干めんどくささはありました。あと、Mac Book Proのリソース的に厳しいのか、ずっとCPUが唸っていまいした。
事前アンケート簡易まとめ
今回のテーマに関して参加者に事前アンケートがあり、その結果が発表されました。詳細は運営のかたから発表されるのかもしれませんが、ざっくりメモした内容をまとめておきます。
- PdMに従事している:約7割
- リモートワークをしている:9割以上
- 開発チームでリモートワークしている:9割弱
- 開発チームの生産性は変わらない:5割弱
- リモートワークによってPdMが変わった/特に変わらない:それぞれ3割強
- プロダクトの開発ロードマップを変更または変更を検討:5割以上
- マーケティング計画・営業計画を変更または変更を検討:5割以上
- プロダクトのKPIは変わらない:約3割
- 生活様式が変化した:9割以上
- この状況が半年ぐらい続く:3割強
- 不可逆な変化をもたらす(大きく変化):6割以上
リモートワーク時代のプロダクトマネジメントのKPT
参加者全員から意見収集しました。以下は主なもの。
※時間の関係でPとTのみ
Problem
- 雑談や雰囲気での状況把握が難しい
- ブレスト、深いディスカッションのしにくさ
雑談や雰囲気での状況把握が難しいことに関するTry
- アイスブレイク、ミーティングの前後5分を雑談にする
- リモートお茶会、ランチ、飲み会(温泉とかもあった)
- 絵文字を多めに使う
- 常時オンライン、雑談ルーム設置、1on1などの機会強化
ブレスト、深いディスカッションのしにくさのTry
みんな試行錯誤してるな、という印象。私のチームでも朝夕のチェックイン・チェックアウトを厚めにやっていたり、ニコニコカレンダーでその日の気分を聞いたり、常時Zoom接続したりなどいろいろ試しているところです。ツールの活用はどれか1つが票を集めているというわけではなかったので、どれが一番ということはなくチームの置かれている環境などに合わせて使いこなしていくしかないのだろうと思います。
【読書メモ】ケン・ブランチャード リーダーシップ論
- 作者:ケン・ブランチャード,ケン・ブランチャード・カンパニー
- 発売日: 2012/12/07
- メディア: 単行本
『1分間マネジャー』『1分間リーダーシップ』などの著者によるリーダーシップ論の集大成ともいえる名著です。著者はまたマネジメントのコンサルティングを行うケン・ブランチャード社のCSO(Chief Spiritual Officer)でもあります。そのブランチャード社の長年の研究と経験がまとまった約450ページの大作なので読むにはちょっと気合が必要ですが、それだけの価値は十分ある内容です。
ハイパフォーマンス組織
本書ではまず、より高い成果を目指すリーダーが持つべきハイパフォーマンス組織のイメージについて書かれています。ハイパフォーマンス組織とは何か?を知らなければ、高い成果をあげるリーダーにはなれないということです。
ハイパフォーマンス組織とは、最高レベルの顧客・従業員満足と成功への熱意により、長期にわたって傑出した業績をあげつづける企業のことである
著者はハイパフォーマンス組織の持つ特徴を6つの要素にまとめて、SCORESモデルをつくりました。
SCORESモデル
- Shared Information and Open Communication
- 情報開示と開かれたコミュニケーション
- Compelling Vision
- 説得力のあるビジョン
- Ongoing Learning
- 継続的学習
- Relentless Focus on Customer Results
- 顧客結果への徹底したフォーカス
- Energizing Systems and Structures
- 活力を与えるシステムと構造
- Shared Power and High Involvement
- 権限移譲と高関与
他のマネジメント理論、リーダーシップ論などでも重要視されている要素が一通り凝縮されているように思います。その中でも特にビジョンと顧客、権限移譲についてはそれぞれ1つの章でテーマを設けて説明されています。『カスタマー・マニア』『ザ・ビジョン』など単独のテーマで別の書籍を書いていることからも著者が重要視していることが伺えます。
状況対応型リーダーシップII
SLII理論(Situational Leadership II)と呼ばれる、4段階のリーダーシップ・スタイルを使い分ける理論です。詳細は本家ブランチャードのサイトに次のように書かれています。
診断は、D1(「意欲満々の初心者レベル」)からD4(「自立した達成者レベル」)までの4つの開発レベルから、当てはまるものを見極めます。そして、メンバーのレベルに合わせて、S1(指示型)からS4(委任型)の4つから適切なリーダー行動を選択するのです。
S1からS4のリーダーシップスタイルは次のとおり説明されています。
- S1:熱心な初心者=指示型
- 熱心で学習意欲がある、楽観的で張り切っている
- 具体的に実演してあげる、試験を課すだけでなく答えも教えてあげる
- S2:幻滅した学習者=コーチ型
- 能力の片鱗を見せつつあるが、困惑し、いらだちを覚えることもある
- 引き続き指示を続け、アドバイス、質問や提案、双方向の会話を増やす
- S3:有能だが自信を欠く実践者=支援型
- 完全に一本立ちすることにためらい、意欲が高揚したり不安に陥る、不安定さ
- 指示の必要はほとんどない、努力を背後から支援
- S4:自立した達成者=委任型
- 単独で活動できるだけでなく、周囲の手本になっている
- 意思決定や問題解決は本人にまかせ、自分で自分の領分を管理させる
状況対応型リーダーの3つのスキル
また、SLII理論を用いるリーダーに必要な3つのスキルが説明されています。
- 診断
- 能力と意欲に注目
- 柔軟性
- 4種類のリーダーシップを使い分ける
- 結果指向のパートナーシップ
- 対話の質と頻度を高め、部下に同意してもらう
これら3つのスキルを使ってSLII理論を用いるリーダーシップは次の4段階の変容をたどるとしています。
- 自律リーダーシップ
- 1対1リーダーシップ
- チーム・リーダーシップ
- 組織リーダーシップ
自律リーダーシップ
権限委譲を成功させるために組織とリーダーがすべきことは、イニシアチブをとるためのスキルを備えた自律リーダーを育てることである。
SLII理論のリーダーシップスタイルが指示型から委任型へ向かうように、自律リーダーを育てることが第1段階目の変容です。
自律リーダー3つの秘訣
- 思い込みの枠をはずす
- 制限は問題ではない。問題なのは、時間やお金、地位や権力を唯一の源泉と考えることだ
- 自分のもつ力を活用する
- 地位の力、人柄の力、仕事の力、関係の力、知識の力
- アイ・ニード(必要がある)=説得力のある言葉で協力を求める
- 成功に向けて協力しあう
- イニシアチブをとって目標を達成するのに必要な方向づけと支援を得る
自律リーダーと成功に向けて協力しあう信頼関係が構築できたら次の段階に入ります。
1対1リーダーシップ
このテーマに関しては「結果指向パートナーシップ」と「1分間マネジャー」という形で2つの章にわたって説明されています。
すぐれたパフォーマンスは全て明確な目標からはじまる
「結果指向のパートナーシップ」については、目標管理をベースに前出の権限委譲に加えて「継続的学習」も交え、1対1の関係においてパフォーマンスを上げるリーダーシップです。次の3つに大別されます。
- 業績目標設定
- パフォーマンス・コーチング
- 成績評価
1対1リーダーシップに必要なもう1つのスキルが3つの基本コンセプトから成り立つ「1分間マネジャー」です。
- 1分間目標設定
- 1分間称賛法
- 1分間叱責法
1つ目は前述の目標管理と重なる部分です。残りの2つはモチベーション・マネジメントやリーダーの誠実さ公正さなどについて語られています。「1分間マネジャー」のテーマには単独で著者による書籍も出ているので、この書籍を元にまた別の機会にまとめたいと思います。
- 作者:ケン・ブランチャード,スペンサー・ジョンソン
- 発売日: 2015/06/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
チーム・リーダーシップ
ブランチャードは、なぜチームなのか?について以下のように述べています。
効率的なチームでは、個々に仕事をしているときよりもすぐれた決定を下すことができ、複雑な問題をずっと多く解決できる。さらには創造性を高め、スキルを伸ばすことも可能だ。
ハイパフォーマンスを目指すなら個を踏まえたうえでチームでの成果を目指すことが求められるのです。ハイパフォーマンス・チームの特徴として「PERFORM」が存在しなければならないと述べています。
- 目的と価値観(Purpose and values)
- 権限移譲(Empowerment)
- 人間関係と意思の疎通(Relationships and communication)
- 柔軟な対応(Flexibility)
- 最高の生産性(Optimal productivity)
- 認定と評価(Recognition and appreciation)
- 士気(Morale)
著者はチームの発達段階を5つに分けています。
- 方向づけ
- 不平不満
- 統合
- 生産
- 終結
ブランチャードは、5段階目の終結以外の4段階をSLII理論のS1〜S4と一致させることを勧めています。つまりチームが方向づけの段階は指示型、不平不満の段階はコーチ型、統合の段階は支援型、生産の段階は委任型と、チームの発達段階に合わせてリーダーシップスタイルを変えていくのです。
組織リーダーシップ
組織全体のリーダーシップは変革を導くことであり、チームや1対1のリーダーシップよりさらに複雑であると筆者は述べています。変革に直面した人々は6つの段階の懸念を抱きます。
- 情報にかかわる懸念:何が変わるのか、なぜ変わるのかなどの情報を必要としている段階
- 個人にかかわる懸念:自分自身はどうなるかを組織の各個人が懸念している段階
- 実施にかかわる懸念:変革を実施するにあたって何がどうなるのか、どのような援助が得られるのかなどを懸念している段階
- 影響にかかわる懸念:変革への関与、報酬、評価などへの懸念段階
- 協同にかかわる懸念:人々との連携や変革の広めかたなどを懸念している段階
- 改善にかかわる懸念:アイデアを改良したり、改革を進めて、どうすればより良いものにできるかを懸念している段階
ブランチャードはこれらへ対処するためにも、SLII理論を使うことを勧めています。1〜6に段階が進んでいくのに合わせてS1〜S4へとリーダーシップの段階を変えていくのです。
変革の遂行にまったく関与していないと、人々はほぼその変革を快く思わない。世間一般の考えとは逆になるが、人々は変化に抵抗するのではない。支配されていることに抵抗するのだ。
つまり、変革に対しても初めは支持型でアプローチし、変革が進むにつれて支援から委譲へと段階を踏んでリーダーシップのスタイルを変えていきます。また、ブランチャードは変革を導く8つの戦略を提示しています。この戦略もまた、SLII理論の4つのリーダーシップ段階、6つの懸念段階と連動しています。
変革を導く8つのリーダーシップ戦略
- 関与し、影響をもたらす機会を増やす<成果ー賛同>
- 変革のメリットを説明する<成果ー変革を支持する説得力のある証拠>
- 未来を心に描く<成果ー刺激的なビジョン>
- 連携を確実にするための試み<成果ー協同の取り組みとインフラ整備>
- 可能性を与え、奨励する<成果ー新たなスキルと意欲>
- 遂行と支持<成果ー成果に関する説明責任>
- 定着させ、拡大する<成果ー持続可能な成果>
- さまざまな可能性を探る<成果ー選択肢>
ここまで見てきたようにブランチャード社が提唱するSLII理論は個人から組織まで様々な状況と、対象の変容段階に合わせて活用できる、リーダーシップのベース理論なのです。
サーバント・リーダーシップ
著者は世界をより良い場所にするには特別な種類のリーダーが必要であると述べています。その特別な種類のリーダーがサーバント・リーダーシップです。サーバント・リーダーシップは近年よく聞くようになったバズワード的な言葉です。支援型リーダーというような解説が多いですが、本書の説明の中では以下の説明がサーバント・リーダーシップを発揮するリーダーの説明として最もイメージしやすいと感じました。
マネジャーの顧客は部下である。ひとたびビジョンと方向性が定まったら、マネジャーは部下のために働くのだ。
サーバント・リーダーがすべきことを5つの言葉の頭文字から「SERVE」としてまとめています。
SERVE:サーバント・リーダーのすべきこと
- See the future(未来を見通す)
- ビジョンの力
- Engage, Develop(人を巻き込み、育てる)
- 1対1リーダーシップ
- チームリーダーシップ
- 組織リーダーシップ
- Reinvent continuously(たえざる改革)
- 最高のリーダーは学習者である
- Value results and relationships(結果と人間関係を重んじる)
- 結果を出せたかどうか
- 人がついてくるかどうか
- ついてくる人がいなければ、長期的に結果を出し続けることは非常に難しい
- Embody the value(価値観を体現する)
- 信頼を基礎に置き、自分の価値観を表明して、それに合致する生活を送る
これらはここまで本書が説明してきたリーダーシップ論とも連動しています。つまり、サーバント・リーダーはハイパフォーマンス組織を生み出すリーダーシップを持っているリーダーです。
リーダーシップの視点を決める
本書の最後は読者にリーダーシップ観を打ち立てるように求めています。様々な言葉から自分自身の人生の目的、価値観などに合う言葉を選び出し、リーダーシップの中心となる価値観を築く流れが解説されています。まずは2つの視点で言葉をピックアップします。参考までに私がワークショップ的にピックアップした言葉を紹介しておきます。
- 好ましいと思う性格
- 凝り性
- 社交性
- 創造性
- ユーモアのセンス
- 人間関係で成功した例
- 意欲を引き出す
- 行動する
- コーチする
- 助ける
最後に、ピックアップした言葉を組み合わせて自分自身のリーダーシップの価値観となる定義を作ります。
- こだわりとユーモアを大切に行動する。またそれをコーチする。
- 人と人との関わりを助けることで、創造性の意欲を引き出す。
なんとなくそれっぽい価値観が出てきたように思いました。本書ではさらにここから自分自身の信念や、周囲からの期待、自分が周囲へ期待することなどをまとめて何ページにも渡るリーダーシップ観を文章化した実例が紹介されています。約450ページを読み込んでここまでたどり着いたら、リーダーシップ観を文章にまとめてみると良いと思います。
【読書メモ】21世紀の共感文章術
- 作者:坪田 知己
- 発売日: 2016/09/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
最近、文章術の基礎的な本をいくつか読み漁ってきましたが、やはりそれだけではなく共感を呼ぶ良い文章を書くという発展・応用的な視点も取り入れたいという思いからこの本を手に取りました。技術はもちろん大切ですが、伝える内容と情熱も大切であり3つがセットである(後述)という点が本書のポイントだと思います。ただ、読み手が何を求めているかを意識して伝えたい内容を絞るということは今まで読んできたどの本でも言葉を変えて言われていることであり、本質的には同じことのように思いました。
著者は新聞記者として勤めた経験を持ち、いろいろな人が書いた文章を添削、指導されているかたです。情報のあふれる時代だからこそ、「自分の文章」を書くことが大切であると冒頭の「はじめに」で述べています。
「3秒、30秒、3分」の法則
著者によると人の注意力は次の3段階の法則があるとのことです。
- 初めの3秒を使って「要・不要」を判断
- 30秒でリード文、第1段落を読む
- 興味が湧くと3分を使うが、つまらなければそれ以降は見ない
3秒で興味を持ってもらえるタイトル、30秒で読みたいと思える書きだし、3分で飽きさせない文章の書き方が大切ということです。
やや脱線しますが、同じような法則で人間関係が決まるという話もあります。本質的には同じかもしれません。
- 第一印象(3秒)=文章のタイトル
- 挨拶・自己紹介(30秒)=冒頭の文章
- 話の内容(3分)=文章の内容
いい文章の3条件
いい文章は次の3つの条件が揃っていることが重要だと著者は述べています。
- 何を言いたいのかが明快・簡潔
- リズム感があって読みやすい
- 筆者の気持ちが伝わる
技術的にどうこうではなく、状態に着目している点が本書の特徴です。もちろんこの3つの条件を揃えるためにはある程度の技術が必要だと思いますが、技術だけではないという意味で状態に着目していると思いました。
5つのチェックポイント「かきくけこ」
良い文章を書くための観点と書き方について一通り説明した後のチェックポイントとして頭文字をとって「かきくけこ」で説明されています。
- (カ) 書き初め 読者を引き込む工夫が大事
- (キ) キラーメッセージ 「これが言いたい」の一文を書けていますか?
- (ク) 組み立て 構成を考えましょう
- (ケ) 結語 どういう言葉で終わるかが大事
- (コ) 語順を入れ替えると、流れがよくなるところに注意しましょう
この5つはやや技術的な要素になっています。前述の3つの条件を満たすことを意識して5つの技術を使いこなすということです。
文章を書くための3点セット
共感を呼ぶ文章を書くためには、技術だけがあってもダメで、次の3点セットが必要だと述べています。
- 書く技術
- 書く内容
- 書こうとする情熱
技術はもちろん大事ですが、そもそも魅力的な内容であり、書き手にそれを伝えたいという思いがあって良い文章が書けるのです。
【読書メモ】日本語練習帳
- 作者:大野 晋
- 発売日: 1999/01/20
- メディア: 新書
文章の書き方の本としては言わずと知れた名著ですが、ちゃんと読んだことがなかったので読みました。先日読んだ『 クレイジーで行こう! 』でも、正しい日本語を使うために、著者がこの本を社員に紹介していることが書かれていたので、読んでみたいという気持ちがいっそう高まって一気に読みました(余談ですがこのように読書で得た情報をきっかけに自分に動機づけして一気に本を読むのも読書のテクニックの1つだと思います)。
本書は、タイトルの通り正しい日本語を使うための思考の訓練書です。単なる文法理論や論理的な文章術だけでなく、言葉ひとつひとつが生まれた歴史的背景まで遡って意味を考えることで、正しい言葉を選んで使うことができるようになります。読んでみると、日本語の奥深さを改めて実感するとともに自分がいかに適当に言葉を選んでアウトプットしていたか気付かされます。
ものごとの理解を深めるための言葉
本書では、「思う」と「考える」はどう違うのか?が例にあげられ、まず単語の意味の違いに敏感になることが求められています。その言葉が生まれた背景まで遡った解説を読むことで、微妙な違いを表現するためにそれぞれの言葉が必要であったことを理解し、正しい言葉を選ぶ思考が得られます。
異文化の輸入によって意味づけされ拡張してきた言葉
著者によると、ヤマトコトバという古い言語体系が確立した古代の日本にはまだ文字がなかったようです。その後、中国文明と一緒に漢字が輸入された時、儒教や仏教、医学や薬学を学ぶために漢字を取り入れて、日本語の漢字が生まれました。同じように明治時代にはヨーロッパ文化を取り入れて片仮名が生まれています。
日本人は非常に忠実に、「この言葉の由来は何か」ということを字で書き分けています。漢字以前のヤマトコトバは平仮名、中国文明から来た概念や言葉は、漢字で書いています。ヨーロッパ文明から来た言葉は片仮名です。
言葉の背後にある由来や意味を理解したいという思いから漢字や片仮名が生まれてきたことがわかります。つまり、日本人は異文化や他者を理解するために自身の言葉を拡張し、豊かな文章表現力を身につけてきた民族なのです。
敬語も輸入によって生まれた
人を上下でとらえる敬語は中国の家父長制の考え方が輸入されてから漢語とともに広まったようです。そのため、ヤマトコトバに由来する言葉には相手を上下で扱うものはありません。そのかわり遠近で扱います。近く(内)が親愛、遠く(外)が尊敬になります。自分のことを「うち」というのもこれに由来します。次のような表現がヤマトコトバに由来する尊敬語の元になっています。
- 近くのものは「こ」や「そ」で表す
- 「これ」「それ」「こなた」「そなた」
- 遠くのものは「あ」や「か」で表す
- 「あれ」「かれ」「あなた」「かなた」
家の外=自然に起きることは自分の力ではどうにもならないものとし、畏敬を込めて表す言葉がやがて尊敬語として扱われうようになりました。「おいでになる」「いらっしゃる」のような表現も外で起きることに「なる」「ある」という畏敬を込めたことから生まれた尊敬語です。
古代の心性では、「自然のこと、遠いことと扱い、自分はそれに立ち入らない、手を加えていない」とするのが、最高の敬意の表明でした。その表現が言語形式の上に定着し、後々まで伝承されて、自発の助動詞ル・ラル、後のレル・ラレルが同時に尊敬の意を表し、現代に至った。だから、尊敬形にはナルを使い、レル・ラレル・アルの付いた形があわせて使われているというわけです。
上下の概念が家父長制という制度から人為的に表現されたのに対して、ヤマトコトバに由来する遠近の表現は自然のようなどうにもならないものを敬意を払いながら理解しようと生まれたものだということに日本の文化的なものを感じます。
言葉は相互理解の手段であり規範でもある
言葉について、著者はあとがきで次のように述べています。
言葉は制度とか決まったものとかではない。しかし思うままに造形する絵画のような、主体性だけによってなされる表現行為でもない。言葉には社会的な規範がある。その規範にかなう形式に従わなければ、主体的に自分の気持ちや事柄を相手に表現することはできない。受け手は規範に従って表現を受け取り、理解につとめる。聞くことも読むことも、主体的な能動的な行為です。それは規範に従うことを通して成り立つ。言語とはそういう表現行為、理解行為の全体をいうのではないか。
言葉を発する側はもちろん、受ける側もその規範を理解してコミュニケーションを取ることで互いの理解を深めあうことができる、言語はそういう能動的な道具なのです。
「ハ」と「ガ」の違い
例えば、「私は文章を書いている」と「私が文章を書いている」では、意味がどのように変わって、どのように理解されるのか?というように、たった1文字の言葉の選び方によって表現が決まります。その1文字の違いをお互いに理解しコミュニケーションの規範にすることで相互理解が深まります。
「ハ」の使い方は問答形式、静態的記述
「ハ」を使う場合は場が設定されたり状態が設定される、静態的な表現になります。
- 話の場の設定:山田くんはビデオにうずもれて暮らしている
- 対比:山田さんは碁は打つが将棋は指さない
- 限度:四時からはあいています
- 再審:美しくはなかった
「ガ」の働きは動態的、新事実発見的
「ガ」を使う場合は状態の変化や生まれた場面をとらえる、動態的な表現になります。
- 名詞と名詞をくっつける:彼が病気をして医者にかかった話は聞かない
- 現象文をつくる:花が咲いていた
例としてあげた、「私は文章を書いている」と「私が文章を書いている」についてもそれぞれ込められる意味が変わってきます。例えば、前者は「私」に軸が置かれ、食事したりネットを見たりすることもあるけど、今この場では文章を書いているんだよ、という意味になります。後者では「文章」のほうに軸が置かれ、はてなブログでは様々な人が文章を書いて公開しているけど、今この文章を書いているのは私なんですよ、という意味に読み取れます。たった1文字ですが、相手に何を伝えたいか、どの言葉を選べば意図が伝わるかを考えて選ぶことが重要です。そして、どれを選ぶかは自分本位ではなく、共通の規範を理解して選択する必要があります。
相手をよく理解しようと努力する
前述のあとがきで、著者は以下のように考えを述べて締めくくっています。
言葉は天然自然に通じるものではなくて、相手に分かってもらえるように努力して表現し、相手をよく理解できるようにと努力して読み、あるいは聞く。そういう行為が言語なのだと私は考えています。
どの文章術の本にも良い文章を書くには他者理解が重要だと書かれています。他の文章術の書籍とは視点を変えて言葉の由来などの歴史的背景にまで踏み込んだ書籍ですが、他者理解に努めるということが文章表現なのだと締めくくっている点は共通しており、文章スキルを高めるためには忘れてはいけないポイントだと改めて理解できます。
【勉強会メモ】DevRel/Online #1 〜初のオンライン開催〜
- 日時:2020/03/11(水) 19:00 〜 22:00
- 場所:オンライン
DevRelとは「Developer Relations」のことで、簡単に言うと開発者向けのマーケティング活動のことのようです。最近、自社のイベントが活発で(コロナ騒動になる前ですが)それに絡む機会が増えてきたというのも参加の理由ですが、何より大阪ではあまり機会の無い種類のイベントということもあって参加しました。諸事情により作業の合間に横目で見る感じでの参加になってしまったのでやや雑なまとめになっています。そういう参加の仕方も可能という意味ではオンラインはありがたいですね。
DevRelの基本とオンラインミートアップの作り方
MOONGIFT 中津川さん
Developer×PR = RevRel
DevRel担当者は開発者の良心
- 関係性を保つ
- 人の声を聞いて開発に活かす
- それぞれケアする
PR=広報+傾聴
なんで開発者?
- マーケティング⇒ドリルを売るな穴を売れ
- 開発者は超かっこいいドリルがほしい
開発者はマーケティングではリーチできない誰かにサービスを提供できるようになる
- 開発者がプラットフォームを魅力的にする
- プラットフォーム上で動くアプリが魅力的だからみんな使う
- DevRelを通じてそういう開発者にソフトを作ってもらう
プラットフォームの可用性を広げる
DevRelの4C
- Code
- Content
- Conductor
- Communication
今日はコミュニケーションの話
なのにコロナ
- 人が病気になったり、なくなったりする
- RevRelCon Tokyoが中止に
- オフラインイベントができない
- ハンズオンがやりづらそう
プラス要素
- オンラインイベントが増える
- 時間、地理的束縛なくイベントに参加
- 満員電車に乗らないでいい
- 会社にいかなくてもいい
- 学校に行かなくてもいい
意外と悪いことばかりじゃない
オンラインミートアップの始め方
基本的な作り方
テーマを決める
- コミュニティ=同じ共通点を持った人間の集まり
- 広すぎず、狭すぎず、車輪の再発明にならず
- 同士を募る
イベントを企画
- コンテンツを決める
- 登壇者あつめ
- ハッシュタグ
- オンラインでは話したくないという人はいる
- オンラインだと1ヶ月前は長すぎる?
集客
- SNSとか
- 既存と変わらない
イベントを実施する
参加者を保持する
- オフラインイベントほど積極的な対話が生み出せない
- Slackへの誘導など、イベント後の対話を生み出す工夫が必要
- イベントは一期一会なので、あらかじめ準備しておく
オンラインならではのTips
Cluster
- VRチャットサービス
- 登壇者視点で見れば、参加者がいるのが分かるのが嬉しい
- 普段感情が出しづらい日本人にしてもエモーショナルになりやすい
Zoom
- 一番安定性、音声品質が高い印象
- 無料で複数人は40分
- 月2000円
YouTube Live
- 100人を超える参加者が集まった場合も加納
- 遅延が長い
- OBSはマシンパワーを使う
- 配信PCは配信専門になるので別途PCが必要
- 配信PCもZoomに入っていると音がハウリングする
参加者を留めておく方法
- Slack,Discode
オンラインイベントを実施する上で私は何を考えどう行動したか
鈴木さん@Microsoft
イベントの開催に関する政府のメッセージ(政府)
カンファレンスの開催状況
イベントキャンセルの判断
- DroidKaigiのスピード感、透明性
- オンラインに切り替え
- 3,000万円の赤字?
決行したイベント、キャンセルしたイベント、それぞれの主催者の判断を尊重してほしい
オンラインイベントという選択肢
- スピーカーやスタッフがスタジオに集まって配信
- 現地でのコミュニケーションが取りやすい
- 全ての関係者が同じオンライン上で参加
- やや難易度は高まる
事例1:MS Open Tech Night
- MS主催
- これまでもオンラインを並行(元々リモート参加のほうが多い)
- Zoom使用
事例2:VS Code Meetup
- 有志のコミュニティ
- 毎回オンライン参加者が多い
- LT募集
- 機材トラブルで40分押し
- 最大視聴者数500名超
事例3:Teams Live/Zoom/YouTube Live
- シンガポールのMSのDevRel担当
オンラインイベントへの不可逆な流れ
オンラインイベントが当たり前になっていく?
- GitHub Japan Meetup Workshop⇒中止
- 韓国では実施した⇒どうやった?確認中
Lift and Shift
- オフラインのイベントを移植
- オンラインファーストの流れ
modernization
- アーカイブ前提
- 親しい距離感
多くのコミュニティがオンライン前提に
- デジタルの非同期コミュニケーション+オンラインイベント
Meetup video shooting Meetup
マニュアルを作ることを目的
Online Demoを通じてスピーカーの注意点をまとめてみる
おだしょーさん@Microsoft
Azure Cosmos DBからMobile App作るデモでしたので割愛。
[LT] オンラインイベントやってみた youtube Live編
kondoyukoさん
- アバター
- リアクション
- チャット
- ファイルアップロード機能に連携する
よかったこと、やりにくいところはnoteへ
[LT] PDUデザインから設計するDevRel
ayatokuraさん
全てが私たちのお客様と考えて行動する
私達のゴール(プラットフォーマー)
開発者をヒーローにする
ルール1:開発者と話をする
- P:デベロッパーの文化やスタイル
- D:ユーザーの文化やスタイル
- U:自分たちの文化やスタイル
ルール2:開発者にとって何が一番良いのかを考えて行動する
- エンゲージメント
- 多くの開発者が最近考えていること
- どの言語をやっておけば良い?
- どうやったら年収をあげられる?
- フルスタックじゃないとだめ?
ルール3:技術情報を提供する
- 技術の未来を信じ、熱量を持って伝える
ルール4:開発者の困ったを一緒に解決する
- 気づき⇒学ぶ⇒チャレンジ⇒採用
ルール5:開発者をヒーローにする
- 現実社会にインパクトを与え評価される
- 海外と日本の開発者文化が異なる
- 時差がある
- 言語の違い