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【読書メモ】プロフェッショナルマネジャー

プロフェッショナルマネジャー

プロフェッショナルマネジャー

久々にガチの経営本を読んでみた。アメリカのITT社をコングロマリット経営で14年半連続の増収増益に導いたハロルド・ジェニーン氏の経営回顧録であり、ユニクロの柳井さんが最高の教科書と絶賛する本。読んでみると今までの経営理論を覆すような新しい発見があるわけではなく、他の経営書でも言われているような基本的な経営の精神をベースに、地道に事業を経営してきたことがよく分かる。ただしそれらは14章というボリュームにまとめられていることからもわかるように、事業を経営するうえで直面する様々な状況・場面に合わせて徹底的に向き合ったうえで様々な言葉で表現されている。マネジメント向けの本ではあるものの、会社の事業に主体的に関わりたいと考えている人でれば誰もが読んでおいて損はない本だと思います。

経営に関するセオリーG

セオリーGとはジェニーン理論のこと。つまり著者自身の理論。

ビジネスはもちろん、他のどんなものでも、セオリーなんかで経営できるものではない。

ビジネスのセオリーに厳密に従って経営している会社はひとつもない。事業の運営を心得ている人は事業とともに生き、事業とともに成長してきた。

経営の秘訣

セオリーGでは経営の秘訣は3行でまとめられると言っている。これがこの本で最も重要なポイント。

本を読む時は、初めから終わりへと読む。 ビジネスの経営はそれとは逆だ。 終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをするのだ。

経験と金銭的報酬

ビジネスの世界での報酬は経験と金銭であり、どちらの報酬が重要かというと、以下のように述べている。

金は後回しにして、まず経験を取れ

ジェニーン氏は経験を求めてITTの社長を引き受けた。

2つの組織

どの会社にも以下の2つの組織がある。

組織図に書き表すことができる公式のもの

これはITTと他の会社を比べても少しも変わらない。

その会社に所属する男女の、日常の、血のかよった関係

ITTの本当の経営は顔を突き合わせての会議において行われており、その中で生じたのが上記のもう1つの組織である。

経営者の条件

経営者は経営しなくてはならぬ

論理的に完璧な説明ができることは何の意味もない。やり始めたことをやり遂げること。やれる限りのことをやりつくして満足のいく結果を出すのが経営者である。不十分な結果を受け入れて弁解してはならない。自分の定める基準に従い結果を達成しなくてはならない。もしそれが不可能ならあらゆることをして達成できる基準で結果を出すのが経営者である。

リーダーシップ

リーダーシップは経験によって備わる。そのため命令や可視化では発揮できない。

リーダーシップが発揮されるのは、言葉より態度と行動においてである

会社の人びとはリーダーと一緒に自分自身のために働いている。そのためリーダーの命令ではなく態度と行動からくる指導によって会社が成功に近づく。

エグゼクティブの机

きれいな机は科学的経営への、ビジネス・スクール仕立ての方式へのデータの整理保存への、過度に厳格な時間の配分への、機構化した権限委譲への、そしてまた未来が自分のプラン通りのものを生み出すというあてにならない確信に基づいた無保証の自信と独りよがりへの固執を象徴している。

マネジメントが必要とされる水準の仕事をしながら机の上をきれいにしておくことは実際のところ不可能である。机の上がきれいな経営者はそれを他の誰かに委譲している。そこに含まれているものをよく知らずに責任と権限を委譲すると、委譲された人間が失敗してもそれを救済することができない。もし委譲された人間がそれらを難なくこなしている場合は、彼らがいずれ最高責任者に取ってかわるだろう。

最悪の病 - エゴチスム

強い自己愛を含んだ自己中心的な態度

このようなエゴチスムは企業やそこから波及する国全体の生産性へも影響するほど危険なものだ。それは失敗への極端な恐怖に根ざしている。しかし実際は失敗より成功によって破滅させられる。エゴチストは成功によって個人的虚栄心にのめり込み、周囲の人々の心は離れていく。エグゼクティブがエゴチスムに支配された場合、その影響は組織にとどまらずやがて会社全体に及ぶ。

成功は失敗よりもずっと扱いにくいもののように私には思える。なぜなら、それをどう扱うかは、まったく本人しだいだからである。

数字が意味するもの

数字が強いる苦行は自由への過程である

数字はシンボルであり、数そのものと同じくらい重要な個性がある。ある数字に対してその背後の流れを読み解くとプラスの結果なのか、マイナスの結果なのかなどから損失を抑えて体制を健全化することができる。ほしいと思う情報が欠けていれば新たな数字を要求する。数字を徹底的に読み続ける苦行によって経営の自由が与えられる。

買収と成長

コングロマリット多角化経営)による企業の買収は企業の株価と価値の差を生み出し混乱を招くものとして批判を浴びた。しかし、ITTが行った買収は買収した企業もITT自身も同様に成長させてきた。

良い経営がおこなわれれば、コングロマリットは顧客のニーズに奉仕して反映し、成長する。しかし、経営が不良なら、自らの重みのためにつまずき、倒れる。それは他のどんな会社とも同様だ。

企業家精神

企業に所属しながらかつてのアメリカの企業家精神を回復するような、企業内企業家はどこにいるのか?というと、どこにもいない。大企業が株主の権利を侵さずに会社を賭けるようなリスクを冒すことはできない。それでも未来の動向は企業家にかかっているように思われる。利益の上がらなくなった事業を大企業から切り離して立て直したり、既に出来上がっている事業を少数の有識者が引き継いで成長させるかたちは存在する。しかし成長してなお企業家でいることは難しく歴史は繰り返される。

取締役会

会社の所有者の権限とマネジメントの業績基準とのつながりが曖昧でアメリカ企業の取締役会は十分に機能していない。マネジメントの業績達成の基準を明確にし、取締役会をマネジメントと分離して独立性を確保し、健全な経営を行うことで究極的な効果をもたらすだろう。

気になること - 結びとして

良い経営の基本的要素は、情緒的な態度である

マネジメントには目的と献身が必要で、それらは情緒的な自己投入によって実行されなければならない。経営の機械的要素(会社の機構と組織、生産、管理などもろもろのシステム)も情緒的な態度がゆきすぎないために重要であるが、重点を置きすぎて情緒的な要素の価値に関心を置かないと不十分である。

やろう!

実績こそきみの実在だ。ほかのことはどうでもいい。マネージャーとは”実績をもたらす人間”だと私が定義するのはこの理由による。他人あるいは自分自身に対してどんな言抜けを考案しようと、この事実を変えることはできない。