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【読書メモ】マイクロソフト伝説マネジャーの世界No1プレゼン術

マイクロソフト伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術

マイクロソフト伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術

ビッグワードなタイトルなので少し敬遠していたところがありましたが、読んでみると著者が考えるプレゼンの基本が丁寧に解説され、後半には応用的なテクニックまで紹介されていて学びの多い内容でした。

時間と空間の共有

本書で終始言われているのは、プレゼンは「時間と空間の共有」ということです。発表者と聴き手の、「お互いにとって貴重な時間と空間」を共有する場という前提のもとで、お互いにとって価値の高い時間と空間を作ることにフォーカスした内容になっています。そう考えると冒頭で著者が述べている「プレゼンの3つのゴール」は非常に納得のできるゴールだと言えます。

プレゼンの3つのゴール

  • 聴いた人がハッピーになる
  • 聴いた人から行動(決断)を引き出す
  • 聴いた内容を他人に言いふらしたくなる

ビジョンと核

3つのゴールに向けてまず重要なのが「ビジョン」と「核」です。

ビジョン

ビジョンは当然、3つのゴールへ誘導するものでなければなりません。プレゼン資料を作るうえでまずこれをはっきりさせることが重要だと著者は述べています。

  • 相手から相手からどんな行動を引き出したいか
  • 相手にとってハッピーな未来とはどういうものか
  • 聴いている人たちがいかに「自分事」として捉えてくれるか

ビジョンが明確になると次に「核」を作ります。核は次のように述べています。

プレゼンの根幹をなすメッセージ

つまり、プレゼンの内容を一言で説明できるメッセージが核です。

1つの章を割いて核を作るための考え方やテクニックがいくつか紹介されています。個人的には「あるあるを集めて否定する」が参考になりました。

あるあるを集めて否定する

プレゼンのビジョンの沿って課題となる「あるある」を集めてそれを否定する言葉を考えて核にするテクニックです。

本書では例としてグローバル人材になれない人の課題として次のような「あるある」を集めています。

  • ダラダラ残業
  • 会議に遅れる
  • 成長のチャレンジしない
  • 問題を先延ばしする

この「あるある」をまとめると、「時間の意識が低い」ことが課題だと言えるので、それを否定する「時間は有限だと意識し続けること」を核となるメッセージにします。

ハッピーな未来

ビジョンと核をつくるうえで重要なのが「ハッピーな未来」という部分です。3つのゴールにも通じるもので本書でも何度も出てくる言葉であり一番のキモです。別の場所でも著者が語っていてネットに記事があがっているので合わせて読むと理解が深まります。

logmi.jp

www.strategic-presentation.com

構成&スライドづくり

他の書籍でも述べられているようなテクニックが著者の観点で紹介されていますが、印象に残っているものをいくつかピックアップします。

ロジックエラーによって聴衆の心は離れる

主食と言えばご飯か、パンですよね

例として述べられているのは上記のような論理です。プレゼン者にとってはそうかもしれませんが、聴いている人が麺類などの反論をイメージしてしまうとロジックが成立しなくなって聴き手が興味を失ってしまうというものです。これは私自身も失敗の経験があり、難しい部分だと思います。著者も「なかなかのくせ者」と表現していますが、「聴衆目線のロジックになっているか」が重要であると述べています。

アジェンダは必要ない

アジェンダをつけるメリットは理解できるものの、冒頭の通り「時間と空間の共有」が重要な価値なので、アジェンダ通り進めることよりもその時その場のライブ感が重要だと述べています。ただし、「ビジョン・核・話し方という3つの話をしますよ」というような聴き手のイメージを喚起する演出の一部であれば問題ないとのことです。

また、アジェンダと同じ理由で「起承転結」も1つのテクニックであるものの必須要件ではないと述べています。個人的にはアウトラインを作る時に意識することが多いので新鮮な視点でした。

話し方の極意

この章も著者の経験に基づくテクニックがたくさん紹介されていて参考になりますが、特に印象深かったものを1つピックアップします。

導入が命!アイスブレイク

導入部分がうまくいかず、なかなか一体感やプレゼン特有のライブ感を作れないと、聴いている人たちもなんとなく所在なげになりますし、いつまで経っても話に集中することができません

LTレベルの勉強会では、アイスブレイクまできっちりやるのはなかなか難しいかもしれませんが、それでも導入部分の重要性は改めて感じました。最適なのは自己紹介にプラスアルファで1つぐらいネタを作っておくのがおすすめだと述べています。

最初から大きな笑いを狙いに行くと却って変な空気になり、プレゼンの進行に支障を来たします

これは私も感じたことがあります。アイスブレイクで意図せずウケてしまうとその後のスライドの説明のペースを乱してしまうことがあります。「ジョークは軽くで良い」とのことです。

人に教えることほど、勉強になることはない

巻末ではどうやって人に教えるかを考えることでプレゼンは上達できると述べています。上記のドラッカーの言葉が紹介されていますが、これはプレゼンに限らず理解を深めるために重要なことだと思います。

冒頭では誰かに話したくなることがプレゼンのゴールの1つだと述べられていました。つまりプレゼンは学びを提供するものであり、聴き手が理解を深めるために誰かに説明したくなるような意欲をもたせて終わることが1つのゴールと言えるのかもしれません。