【読書メモ】動機づける力
【新版】動機づける力―モチベーションの理論と実践 (Harvard Business Review Anthology)
- 作者: DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2009/10/09
- メディア: 単行本
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ハーバード・ビジネス・レビューの論文からモチベーション理論に関するもをの取り上げて一冊にまとめられた書籍です。組織のリーダーはチームが最大のパフォーマンスを発揮できるように様々な知識を得る努力をすべきだと思っており、この本はそのための教科書的な内容です。後半はマネジメントから経営寄りのテーマにまで踏み込んでいますが、そのぶん長く手元に置いておける内容とも言えます。
書籍にまとめられている論文のテーマは既に一般的に広まっているものも多いので、元となったハーバード・ビジネス・レビューの論文と合わせてネット上の参考情報などをまとめておきます。
モチベーションとは何か
ハーズバークの二要因理論に関する論文です。仕事における満足度はある特定の要因によって満足/不満足が決まるのではなく、満足に関する要因と不満足に関する要因が別々に関係しているという理論です。満足に関する要因が「動機づけ要因」で、不満足に関する要因が「衛生要因」です。組織のリーダーはモチベーションを成り立たせるこの2つの要因を理解し、うまくマネジメントすることが求められます。
新しい動機づけ理論
我々の行動の基盤となる4つの欲動が存在し、それぞれの欲動に対する組織上の対策方法があります。
- 獲得への欲動⇒報奨制度
- 絆への欲動⇒企業文化
- 理解への欲動⇒職務設計
- 防御への欲動⇒業務管理と資源配分プロセス
また、4つの欲動を上げるカギを握るのは直属の上司であり、上司の能力が4つの欲動を満たす組織能力と同等に重要と評価されています。
知的労働者のモチベーション心理学
インナー・ワーク・ライフ(個人的職務体験)とは知的労働者が内面に持つもので、3つの相互作用がパフォーマンスに影響を及ぼすとされています。
- 感情
- 認識
- モチベーション
インナー・ワーク・ライフに最も影響する上司の行動として重要なものは次の2つです。
- 仕事を進捗させる
- 人間として尊重する
組織のリーダーにはこれらを意識したマネジメントが求められます。
MBO失敗の本質
多くの企業で取り入れられているMBO(目標管理)ですが、組織と個人の目標が乖離して形骸化している例も少なくありません。上司がMBOの目的を正しく理解し、以下のような条件・要素を意識してうまく連動させることが重要とされています。
MBOの実効性を高める3条件
- モチベーションについて検証する
- グループを単位とする
- 評価者を評価する
MBOを導入する前に考慮すべき3要素
- 理想自我の理解
- 部下による自己検証
- 上司の自省
ピグマリオン・マネジメント
ピグマリオン効果とは周囲の期待や働きかけによって成長を促す教育心理学の理論です。
逆に、期待しない「沈黙」は期待値の低さを伝えてしまうことになったり、一定以上の期待値は逆効果となることもあり、周囲の期待や働きかけをマネジメントすることの重要性が説かれています。その中で直属の上司の能力こそが最も影響力が大きいということで、マネジメントの重要性も説明されています。
モチベーショナル・リーダーの条件
「マクレランドの欲求理論」によると労働者には「達成動機」「権力動機」「親和動機」の3つの欲求があるとされています。優秀なマネジャーは親和動機以上に権力動機が高い傾向があり、組織の成果視点で自己をコントロールするマネジメントが求められます。
マネジャーの権力動機は周囲に影響を及ぼすものでなければならない。つまり、個人の利益だけでなく、組織全体の利益にもなるようにコントロールされている必要があるのだ。
理想職場のつくり方
モチベーションが高く育成に成功している組織は「シグニチャー・エクスペリエンス」をうまくマネジメントできているとされています。「シグニチャー・エクスペリエンス」とは以下のように説明されています。
組織において従業員たちが経験できる、目に見える全体的な特徴のことである。それ自体、会社に価値をもたらすものだが、組織の文化と価値観を示すシンボルとしても強力かつ安定的に機能する。
Y理論は万能ではない
X理論は「人間はなまけものなのでルールや命令で管理しなければならない」とする理論で、Y理論は「人間には自己実現の欲求があるので、自主性を尊重して自己成長の環境を提供しなければならない」とする理論です。X理論、Y理論のどちらが良いというものではなく、組織特性と業務から以下の2つにフィットするものが良いとされています。
- 公式特性
- 公式に決められた業務慣行
- 環境特性
- その職場で働く個人が抱いている主観的な認識であり、あるべき方向
以下の3つの基本的なコンティンジェンシーの関係は互いに影響しあっているとされています。
- 組織と業務のフィット
- 個人のセンス・オブ・コンピタンスへの動機
- 業務のパフォーマンス
結局のところ、X理論かY理論か、あるいはその他の理論か、というのは、業務と人材にフィットするように組織を構成するのが最も重要であるということです。
本物のリーダーは社員と業績を秤にかけない
どうすれば業績を維持しつつ高いモチベーションを引き出し続けられるのか?という問いに対して、優れた組織のリーダーには以下のような戦略が必要であるとしています。
- 人心を掌握する
- 信頼を勝ち取る
- 社員と強い絆を築く
- 目標に焦点を絞る
- リーダー層全体の能力を向上させる
- 共通の目的を掲げる
- よりよい社会づくりに貢献する
- 周囲に誇れる業績を上げる
- 成長機会を提供する
- 幅広い視野を備える