【読書メモ】人生の扉を開く最強のマジック
スタンフォードの脳外科医が教わった人生の扉を開く最強のマジック
- 作者: ジェームズ・ドゥティ,荻野淳也,関美和
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2016/11/12
- メディア: 単行本
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スタンフォード大学の脳外科医で「共感と利他主義の研究教育センター(CCARE)」の創設者兼所長でもあるジェームズ・ドゥティ氏の自伝的書籍です。少年時代にマインドフルネスを教わって「なりたい自分」をイメージしながら脳外科医を目指し、それを実現します。決して順風満帆というわけではなく様々な困難や挫折を乗り越えてCCAREの設立につながっていくその半生は、映画のようにドラマチックで大きな感動がもらえました。この本はそうした物語としての面白さに加えてマインドフルネスに関する基礎知識と、脳外科医である著者ならではの脳のメカニズムの解説がうまく組み込まれて融合しています。これらの知識的要素も活用できる場面が多く有用だと感じたのでピックアップしてまとめておきます。なお、著者自身が書籍の内容を解説した記事があるので合わせて読んでおくと参考になります。
マインドフルネス
著者が少年時代に教わった「マジック」は、以下の4つのテクニックから成り立つマインドフルネスのやり方でした。
- 体を緩める
- 頭の中の声を止める
- 心を開く
- なりたい自分を描く
著者はマインドフルネスのことを以下のように述べています。
脳と心が力を合わせるとき、誰もが驚くようなマジックが起きる
テクニックとしては過去記事にある他の書籍と同じだと思います。
脳のメカニズム
物語の中ではマインドフルネスの土台となる脳のメカニズムについてもいくつか述べられています。
神経可塑性
可塑性(かそせい)と読みます。以下のサイトで次のように解説されています。
自己の活動や心的経験に応じて、脳が自らの構造や機能を変える性質のこと
著者はマインドフルネスが神経可塑性に与える影響について次のように述べています。
いまでは、神経可塑性は脳が本来備えた機能の一部だということが科学的に認められている。脳を鍛えれば集中力や注意力が増し、頭の中の声に邪魔されずに、明快で賢い判断ができるのだ。
マインドフルネスによって神経可塑性が促進されるということです。著者の言うように一般的にも広まってきているようです。
※参考 www.nippon.com
闘争・逃走反応
脳が驚異を認識したり生存への恐怖を感じたりすると、交感神経という自律神経の一部が活発に動き出してアドレナリンが放出される。また、視床下部から分泌されるホルモンが副腎を刺激して、コルチゾールが放出される。(中略)それが高じると、生き残りに必要でない身体の機能はほとんどすべて停止してしまう。(中略)実際に生き残りをかけて闘っている場合にはそのすべてが重要になるが、急性ストレス反応が長く続くと、心と身体にさまざまな負の影響が表れる。
過剰なストレス状態が続くと心身のパフォーマンスが低下してしまう。一般的にも「適度な緊張感」が良いということがよく言われますが、マインドフルネスによって心をコントロールする能力を高めて過剰な緊張状態を回避することができるということです。
※参考 diamond.jp
心拍変動
心臓は知性を持つ臓器で、脳から大きな影響を受けるだけでなく、わたしたちの脳にも、感情にも、理性にも、選択にも大きな影響を与えることが研究で示されている。脳からの支持を受け身で待つのではなく、心臓自身が考え、身体のすべての部分に信号を送り出している。
マインドフルネスのテクニックの中で呼吸を整えるものがありますが、これも脳に影響を及ぼし、心をコントロールするためのものなのです。最近の研究では呼吸法だけで自律神経をコントロールするテクニックも研究されています。
※参考 diamond.jp
心拍変動と呼ばれる心臓のリズムは、人の内面の感情の状態を反映し、自律神経系の影響を受ける。
人への感情・共感は脳ではなく心臓からくるとされています。
※参考 aishinbun.com
心のアルファベット
著者が瞑想でリラックスするために唱えているおまじないが紹介されています。これはアルファベットのCから始まる10文字「CDEFGHIJKL」で、「心を開く10カ条」とも述べられています。とても良いおまじないなので最後にそれらを記しておきたいと思います。
このアルファベットは僕自身を僕の心につなぎとめ、心を開いてくれる。このおかげで、僕は意志と目的をもって毎日を始めることができる。(中略)これは僕の意志の言葉だ。僕の心の言葉だ。
- Compassion(共感)
- Dignity(尊厳)
- Equanimity(平静)
- Forgiveness(ゆるし)
- Gratitude(感謝)
- Humility(謙虚さ)
- Integrity(誠実さ)
- Justice(正義)
- Kindness(思いやり)
- Love(無償の愛)