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【読書メモ】アナロジー思考

アナロジー思考

アナロジー思考

2011年に出版された、アナロジー思考の理論と具体的な活用方法が紹介されている書籍です。著者はこれ以外にも思考法に関する書籍を多数出版されています。このアナロジー思考の理論がベースとなっている別の書籍もいくつかあるようです。

アナロジー思考とは

発想力には2つの要素があるとしています。

  • 多様な経験や知識を持っていること
  • それらをいま発想の対象としているものに結びつけること

アナロジーが貢献する領域は後者です。過去の知識や経験を新たな発想に活かすアナロジー思考の重要性について、藤子・F・不二雄氏の「いただきのすすめ」を引用して説明しています。

この世の中、ほんとうに新しいまったく無から作り出す創作というものはなく、過去の作品からなんらかの影響をうけずにいられないのではないか、という思いがしてきます

maedamusashi.com

推論には大きく以下の3つの種類があります。

アナロジー思考はアブダクションに相当する思考法であるとしています。

ferret-plus.com

アナロジー思考の活用方法

アナロジー思考は4つのステップで構成されます。

  1. ターゲット課題の設定
  2. ベース領域の選択
  3. ベースからターゲットへのマッピング
  4. 評価・検証

構造的類似

ベースからターゲットへマッピングするために2つの共通点(類似)に着目します。類似には「表面的類似」と「構造的類似」がありますが、アナロジー思考は構造的類似に着目します。

共通点を見出す上での注意事項

  1. 共通点が、ターゲット領域での目的に合致したものであること
  2. 共通点が適切な抽象レベルに(高すぎず低すぎず)あること
  3. 共通点と同時に、目的とするターゲット領域での利用方法に関連する相違点も併せて考慮すること

例えば「猫好きの人」に売れる新商品のアイデアを考える時に、「哺乳類である」というように抽象化レベルを高めすぎると人間も当てはまってしまい目的にはそぐわなくなります。また、犬をベース領域にした場合、容姿や習性などの猫好きの人からすると無視できない相違点も多々あり、合わせて考慮する必要があります。

遠くから借りてくる

著者はベース領域を選択してマッピングすることを「借りてくる」と表現しています。また、ターゲット課題に対して因果関係が薄そうなベース領域のことを「遠くのもの」とも表現しています。借りてくるためには、要素を単純化して構造的類似を見つけますが、その際になるべく遠くから借りてくることが良いアイデアを生むとしています。

「遠くから借りてくる」のは「近くから借りてくる」のに比べて、抽象化した本質的な共通点を抽出する点で難易度は高くなるが、その分応用範囲も広くなると同時にアイデアも斬新なものになるという特徴がある

抽象化思考

抽象化が得意な人には以下のような思考パターンがあるとしています。

  • 図解してシンプルに表現する
  • 極論し、二項対立で考える
    • 極論とは、枝葉を切り捨ててある一点の特徴だけを切り出して議論することであり、これも抽象化思考である
  • 「格言好き」である
  • たとえ話が的確である
  • 似顔絵やあだ名をつけるのがうまい
  • 「美しさ」にこだわる
    • 抽象化するために構造的な美しさに着目する
  • 飽きっぽく話が飛ぶ(ように見える)
    • 構造レベルで同じものに早く気づいて次の話題に移る

また、抽象と具象は両輪がそろって初めて新しい発見が生まれるとしています。

抽象化思考とは、具体的な事象を抽象化し、さらにそれを再び別の形で具体化するという、「往復運動」であるので、これらの両方の言葉をうまく操れることが重要といえる

具体性がなく抽象的な話ばかりだったり、反対に具体的な話ばかりで結局何が言いたいのかわからない場合は良いアイデアには繋がりません。

アナロジーの使用上の注意

  • 「状況証拠」であって「物的証拠」ではない
  • アナロジーの拡大解釈による誤用に注意
  • 仮説を立てるのに役立つが検証したことにはならない

アナロジー思考はあくまで類推であり、答えが導かれるわけではありません。前出の抽象化レベルが高すぎる例のように使い方を誤ると間違った類推にたどり着きます。導き出されたものはあくまで仮説であり、検証するには論理的にデータを活用して裏付ける必要があります。

具体的な活用法

具体的なアナロジー思考の事例として、電力網からインターネットへのアナロジー、組織から個人へのアナロジーなどを紹介し、ビジネスへ応用できる可能性を提示しています。

新しい勝ちパターン

著者はアナロジー思考を新しい勝ちパターンと表現しています。ネット上にもアナロジー思考を解説した記事がいくつか存在し、著者自身が解説しているものもあるようです。

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