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レディオキャットハテナ

【読書メモ】モチベーション・マネジメント

モチベーション・マネジメント

モチベーション・マネジメント

モチベーションに関する様々な理論について、概要レベルでまとめられた本です。モチベーション理論の基礎学習として使える教科書的な書籍と言えます。 以前のエントリーに、同様の主旨の本として『動機づける力』というものもありました。こちらはハーバード・ビジネス・レビューの論文からまとめられた本でした。

radiocat.hatenablog.com

モチベーションについて本書の冒頭で次のように書かれています。

成果は、能力とモチベーションの関数だ。(中略)
モチベーションは容易に変動する。

つまり、変動要素の大きいモチベーションのマネジメントが成果を出すためには重要ということです。能力開発も、もちろん重要ですが、

同じ能力でも、モチベーション次第で成果が違ってくる。

というのが、モチベーション・マネジメントの根底にある考え方です。
本書はモチベーションをマネジメントするための様々な研究結果や理論が引用されています。それらのいくつかの参考情報をまとめておきます。
実際には1冊の本でかなり幅広い範囲をカバーしているので、この書籍だけでなくこのような参考情報を個別に掘り下げていくことでモチベーション・マネジメントの理解を深めることができると思います。

欲求の階層に応じたモチベーション・マネジメント

本書では野村総合研究所の調査結果が引用されていますが、やりがいを感じる仕事の意識調査の結果から次のように述べられています。

働くこと自体によってもたらされる充実感や成長感のような内的報酬が重要性を増している。

マズローの欲求段階

モチベーションの話題で必ずと言って良いほど引用される理論です。

www.jimpei.net

昨今の動向から以下の欲求段階に動機づけられて働いている人が多いことが示唆されます。

科学的管理法

これも必ずと言って良いほど引用される理論です。

ja.wikipedia.org

  • 作業管理
  • 作業の標準化
  • 作業管理のために最適な組織形態

この3つ原理で労働者を管理する手法ですが、前出のような働きがいの価値の変化によってこのような労働者を縛り付ける管理手法は欠点があると認識されています。

2要因理論

そしてもう一つ引用されている有名な理論がハーズバーグの2要因理論です。

www.motivation-up.com

満足感を引き出す要因(動機づけ要因)と不満要因(衛生要因)は切り離されたもので別々に対処すべきであるという理論です。職場環境を良くして衛生要因を高めてもそれは不満の解消にしかならず、満足感が引き上げられるわけではないというものです。

達成動機を刺激するモチベーション・マネジメント

達成動機

心理学者マレーの研究

ja.wikipedia.org

人間は独力を以って高水準の目標を達成しようとする欲求があり、これによって行動が規定されると仮定し、達成動機には成功願望と失敗恐怖の二つの欲求から構成される

成功したいという欲求と失敗を恐れて回避したいという欲求のバランスをマネジメントするということです。

アトキンソンの公式

達成動機の理論に対してアトキンソンが提議した公式です。

www.create-ts.com

達成に向けて喚起されるモチベーション=Ms(達成動機)×Ps(成功確率)×Is(成功の誘因価)

達成動機のモチベーションを上げるには成功確率や成功の誘因価を高めるマネジメントが求められます。例えばスキルを上げる(成功確率)、達成の意義を説明する(誘因価)などです。

回避に向けて喚起されるモチベーション=Mf(失敗回避動機)×Pf(失敗確率)×If(失敗の負の誘因価)

回避動機に対しても基本的に同じで、スキルを上げて失敗確率を低めたり、失敗したときの心理的不安を和らげるなどのマネジメントが求められます。

内発的動機づけによるモチベーション・マネジメント

X理論・Y理論

マクレガーが提唱したこれまた超有名な理論です。

ja.wikipedia.org

X理論はいわゆる「アメとムチ」の理論で、人間は怠け者なのでアメとムチを与えなければ働けないという考え方です。
Y理論は人間はもっと高次元な欲求を持っていて目標に向けて自主的に行動することができるという考え方です。

外発的動機づけと内発的動機づけ

デシ教授の実験により内発的動機づけという考え方が生まれました。

millkeyweb.com

X理論のように外から報酬を与えられることで行動を起こさせることを外発的動機づけと言います。ところが、デシ教授の実験では報酬がなくても熱心にパズルを解く子供が確認され、報酬を与えることでむしろ意欲が低下することもわかっています。

自己を有能で自己決定的であると感知することができるような行動

これが内発的動機づけです。

職務特性モデル

ハックマンとオルダムは内発的動機づけを高める職務特性を5つの要素でまとめました。

www.earthship-c.com

  1. 多様性
  2. 完結性
  3. 重要性
  4. 自律性
  5. フィードバック

これら5つの職務特性を知覚することでモチベーションを高く維持できるというものです。

外発的動機づけによるモチベーション・マネジメントの工夫

デシ教授の実験で外発的動機づけの欠点が指摘されたとはいえ、誰しも全てにおいて自己目的的に行動できるわけではなく、外発的動機づけが必要な場面もあります。

自己決定理論

内発的に動機づけられるようになるまでの外発的動機づけの段階を分類した理論です。

learn-tern.com

以下の4段階で内発的動機づけに近づいていきます。

  1. 外的統制
  2. 取り入れ
  3. 同一化
  4. 統合

褒め方のモチベーション・マネジメント

ドゥエック氏はパズルの実験で能力を褒めた子供と過程を褒めた子供のグループでは後者のほうがモチベーションを維持して成長できることを発見しました。

wired.jp

原因帰属スタイルでモチベーションを高める

原因帰属理論

失敗の原因を何に帰属させるかという原因帰属のスタイルを統制(内的統制/外的統制)と安定性(安定/不安定)の組み合わせで4つの要因に分類する理論です。

psychologist.x0.com

内的統制 外的統制
安定的 能力 課題の困難度
変動的 努力

安定的というのは変化しないものに原因帰属させることを意味します。例えば内的統制型の人はうまくいかなかった時に「能力が無かった」と考えるとモチベーションが下がります。これを「努力が足りなかったんだ」という変動的に変えることでモチベーションを維持できます。

気分や感情でモチベーションを高める

インナー・ライフ・ワーク

アマビールとクラマーが知的労働者のパフォーマンスを決定づける重要な要因を研究しました。

studyhacker.net

次の3つの要素が影響を及ぼして仕事のパフォーマンスを決定しているとしています。

  • 認識
  • 感情
  • モチベーション

状況認知でモチベーションを高める

楽観主義と悲観主義

ノレムとキャンターの研究で楽観主義・悲観主義を4つのタイプに分類しています。

diamond.jp

  • 戦略的楽観主義:過去と未来のパフォーマンスに対してポジティブな認識を持つ
  • 防衛的悲観主義:過去のパフォーマンスにはポジティブだが将来には悲観的
  • 非現実的楽観主義:過去のパフォーマンスにネガティブだが将来にはポジティブ
  • 真正の悲観主義:過去にも将来にもネガティブな認識

戦略的楽観主義と防衛的悲観主義が良いパフォーマンスを発揮できるとされています。つまり、必ずしもポジティブな心理状態にすることが良いパフォーマンスを生み出すとは限らず、防衛的悲観主義者の場合はむやみに安心させるようなサポートよりも不安を抱えながらもやりたいことをやり通せるようなサポートが必要になります。

自己認知でモチベーションを高める

学習性無気力感

セリグマンの「オペラント条件づけ」によって提唱されました。

ja.wikipedia.org

長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれた人や動物は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなるという現象

要するにどうせ頑張っても無駄だという事を学んでしまってやる気を失うことです。

自己効力感

反対にやればできるという期待をモチベーションに変えることが自己効力感です。

heart-quake.com

心理学者のバンデューラは自己効力感を高める4つの方法を提唱しています。

  1. 成功体験
  2. モデリング(代理体験)
  3. 人からの説得
  4. 生理的・感情的状態

自動動機理論

無意識的に動機づけが行われる状態のことを自動動機理論と呼びます。

shuchi.php.co.jp

ランダムに並んだアルファベットの文字列の中から特定の単語を見つけ出す実験で「成功」や「達成」のようなモチベーションを刺激する言葉を見つけたグループはパフォーマンスが高かったという結果が得られたそうです。

関係性によってモチベーションを高める

自己決定はモチベーション向上の重要な要素ですが、日本人の場合は大事な人のために頑張るという傾向もあります。そのため日本的なモチベーション理論では他者との関係性が重要であるとされています。

ピグマリオン効果

期待を伝えることでそのとおりに変容していく効果があるとして、それをピグマリオン効果と呼びます。

ja.wikipedia.org

期待することの効果は関係性のうえでも重要だとされています。反対に期待をかけずこの人はだめだというレッテルを貼ることで起こる状態を「ダメージ症候群」と呼び関係性のうえではこのような態度を無意識的に相手に与えてしまわないように注意する必要があります。

目標管理によってモチベーションを高める

目標を設定することでモチベーションを高めるマネジメント手法が 目標設定理論 です。

フィードバック

目標設定理論を研究したロックとレイサムによると、目標管理の中でモチベーションに影響を与える重要な要素がフィードバックであるとされています。

www.hitachi-systems.com