【読書メモ】未来に先回りする思考法
- 作者: 佐藤航陽
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2015/08/27
- メディア: Kindle版
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メタップス創業者の佐藤 航陽氏による書籍です。
エンジニアとしてどんな技術に投資するか、IT企業のマネージャとして組織をどんな方向に導くか、という課題に対してヒントを与えてくれる内容だと思いました。著者はこの書籍について次のように述べています。
本書は、世界中で、ビジネスの最前線に立ち試行錯誤を繰り返した末に得られた、「社会の変化を一本の線として考えるための原理原則」をまとめたものです。
変化を線で捉える
長期的に見れば、人間が想像できるようなアイデアは、そのほとんどが実現されます。結局、アイデア自体は、将来における「点」なのです。そのときは突拍子もないように思えても、時間の経過とともに、技術面や価格面でのブレイクスルーによってピースが埋まっていき、いつかどこかで進化の「線」に取り込まれます。
テクノロジーはそれが発現された部分だけを見れば「点」ですが、その背後には点と点をつなぐ線となる変化が起こっています。これはジョブズが言った「点と点をつなぐ」という有名な言葉にも通じる考え方なのかもしれないと思いました。
テクノロジーの3つの「本質」
- 人間を拡張するものであること
- いずれ人間を教育しはじめること
- 掌(てのひら)からはじまり、宇宙へと広がっていくこと
すべてのテクノロジーは人間が直接的に行う何らかの行動を拡張する形で浸透してきました。そしてそのテクノロジーはいずれ人間の精神や行動を縛るようになり、いずれはその存在感を感じなくなるほど日常の当たり前のものになるということです。
未来に先回りする思考法
未来に先回りするために重要なのは次の3つであるとしています。
テクノロジーを「知る」4つの段階
- 使える
- ポテンシャルがわかる
- なぜできたのかを原理から理解している
- 実際の作り方がわかる
著者は、重要なのは3の「原理」を知っているかどうかであるとしています。
物事の原理を知り、より効率的な別のアプローチも思いつき、技術的にもそれが実現可能であると理解できれば、最後は適切なタイミングにアクションを起こすだけです。そして、そのためには、必要なリソースを調達する必要があります。実は、これが最も難しいのです。
テクノロジーの原理を知ることでそのテクノロジーが目的としている線の先を知ることができます。そのうえで現在地を理解し、その線の先にある場所へ適切なタイミングでアクションを起こすということです。
ロジカルシンキングの弱点
著者は未来に先回りするうえでロジカルに考えすぎることの危険性を指摘しています。
将来的に新しい情報が得られるであろうことを考慮に入れた上で、一定の論理的な矛盾や不確実性をあえて許容しながら意思決定を行うことが、未来へ先回りするための近道です。
著者のブログでも書かれていました。
論理的に説明できるようになってから事を起こすようでは未来に先回りしているとは言えないということだと思います。
Googleの20%ルールはリスクヘッジ
ロジカルシンキングの弱点という話にも関連した、本書の中でも特に面白い発想だと感じたのがこの考え方です。
どれだけ多くの経験を積んでも、この世界の「不確実性」からは逃れることができない、いっそのことそのリスクも理解した上で組織をつくるという理詰めの選択の結果が、あの「20%ルール」なのです。 本当に合理的な判断とは、自分が完全に合理的な判断ができるという考えを諦めて、不確実性を受け入れつつ、意思決定を行うことです。
未来にどんなテクノロジーが浸透するか、Googleの経営者ですら分からないので、経営的に見れば一定の非合理的な20%の遊びをもたせることで、リスクヘッジしているという考え方です。
テクノロジーの原理を知り、その現在地や将来性をロジカルに語れることは大事ですが、未来に先回りしてテクノロジーの進化に乗り遅れないためには、その将来を眺めつつ時には非合理的とも思える意思決定を行う大胆さも必要であるということです。言うは易く行うは難しではありますが、そこは本書を深く読むことで何らかのヒントが得られるかもしれませんので、興味のあるかたはぜひ。