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【読書メモ】異文化理解力

仕事でオフショア開発をやっている関係で紹介された本です。過去の仕事も含めて異文化に触れる機会はわりと経験しているつもりでいましたが、この本を読んでみると異文化についてまだまだ理解できていないことが多いと痛感しました。

また、本書で出てくるカルチャーマップという各国の文化をマッピングしたものを見ると日本が世界の中でもわりと極端な領域に配置されている事が多く、世界から見れば特異な国であると感じました。本書でも触れられていますが、異文化理解力の難しいところは自分の文化内ではあまりにも当たり前のことなので、異文化間の問題に気づけないところにあります。知っていればすぐに気づけることが、理解不足のために気づくことすらできず、不安やストレスを抱えて仕事を続けることにもなりかねません。そう考えれば異文化理解力というのはグローバルな環境で仕事をするためには必須のスキルといえます。

大都市のコンビニなどのように日本人以外と接する機会は増えてきていますが、同僚や取引相手が日本人でないことが当たり前となる未来もそう遠くないかもしれません。そんな未来に向けて異文化理解力というスキルを身につけるためには必須の教科書的な本だといえます。

カルチャーマップの8つの指標

著者は8つの指標それぞれでカルチャーマップをまとめています。指標が8つあるのは、例えば次のようなケースがあるためです。

率直にものを言うローコンテクストな文化のいくつかは、ネガティブな批判を伝える際は遠回しで間接的に言うことがあり、反対に普段遠回しにものを言う文化のいくつかは相手の欠点をはっきりと包み隠さず伝えることがある

書籍では前者はアメリカ、後者はフランスと述べられています。つまり、ある指標では同レベルに分類されている文化間であっても、別の指標では全く違うことがあります。グローバルなマネジメントにおいては、これらの指標を念頭に置いて相手の文化と場面に応じた接し方をすることが求められます。

1. コミュニケーション(ローコンテクストvsハイコンテクスト)

ローコンテクストは伝達に多くの言葉を要するのに対して、ハイコンテクストは少ない言葉で行間を読みます。日本はもちろんハイコンテクスト側になります。どちら寄りの文化であるかは歴史的背景も関係していると書かれています。

歴史の長さと民族の単一性の度合いがコミュニケーションのあり方に影響を与えている

同じ思想を持つ民族が長く一緒にいれば多くの言葉をかわさなくても伝わりやすいということです。

2. 評価(直接的なネガティブ・フィードバックvs間接的なネガティブ・フィードバック)

冒頭で引用したアメリカとフランスの事例のように、その人の能力や業績の評価をフィードバックする際にネガティブな内容をストレートに伝えるかどうかは、コミュニケーションの指標とは違った配慮が必要になります。直接的なほうが好まれる文化で間接的なフィードバックを行うと、回りくどい、わかりにくいと受け取られて信頼を損なう可能性があるため、間接的であるほうが安全というわけではありません。また、直接的であればどんなことを言っても良いわけではなく、無礼なフィードバックはさらに事態を悪くします。

3. 説得(原理優先vs応用優先)

一般論や概念をしっかり掘り下げてから結論を出すのかの度合いが原理優先です。ドイツでは裏付けとなる理論をしっかり説明してから結論を述べるのに対して、アメリカでは結論ありきで応用例を次々とあたっていきます。グローバルなチームの場合は理論をしっかり説明してから応用例に入るなど両方を取り入れるプロセスが必要になりますが、それによってイノベーションを生み出せます。

4. リード(平等主義vs階層主義)

平等主義の文化では職務上の階級は役割であり、上長であっても一人の人間として平等に接することが好まれます。階層主義では職務上の階級を意識した接し方が必要になります。業務上必要であっても階級を超えた相手に直接コンタクト取るようなことは批判の対象となります。平等主義の文化では職務上の階級を意識したふるまいや行動は逆に信頼を失います。実際には両方の文化を持つグローバルチームの場合、どちらもマネジメントできる柔軟性を身につけなければならないと述べられています。

5. 決断(合意志向vsトップダウン式)

物事を決めるときに全員で合意を取るか、責任者が鶴の一声で決めて進めるか、これもそれぞれの文化で逆の行動を取れば信頼を失います。前者であれば勝手に決める上司、後者では決められない上司ということになります。難しいのは両方の文化が混在したグローバルチームの場合です。合意のとり方をチームで決めておくことが良いとされています。

もしあなたが合意志向とトップダウン式文化の両方がいるグローバルチームと仕事をするときは、連携の最初の段階で意思決定の方法をはっきりと話し合い合意をとろう。

ちなみに、ここでは日本の稟議システムが「階層主義かつ超合意主義」とやや皮肉とも取れる形で紹介されています。

6. 信頼(タスクベースvs関係ベース)

仕事は仕事として信頼を築くか、プライベートで食事を共にしたり家族ぐるみで付き合うなどの関係を重視するかです。ここでも日本の飲みニケーションが紹介されていたりします(文化としては消えつつある気もしますが)。

7. 見解の相違(対立型vs対立回避型)

対立意見を大切にするか、そうした対立は回避するかです。日本はもちろん対立回避型です。面子を重視する文化の場合は対立意見が出ることが面子を失うとして嫌われますが、対立意見を出さないほうが失礼だとする文化もあります。このあたりは階層主義とも関連しているかもしれません。

8. スケジューリング(直接的な時間vs柔軟な時間)

簡単に言うと時間に厳しいかどうかですが、何に価値を置くかという視点で捉えています。著者の事例として、講演時間をきっちり守る文化もあれば、時間だからと質問を打ち切るよりも時間を延ばしてでも質問を受け付けるほうが良い文化があることが述べられています。

参考

HENNGEという企業のインタビュー記事ですが、書籍内でも紹介されているカルチャーマップが紹介されています。

hennge.com

著者本人のYoutubeチャンネルでカルチャーマップについて語っている講演が紹介されています。


The Culture Map: The Future of Management

ハーバード・ビジネス・レビューでの著者の紹介記事です。ビジネス視点で異文化マネジメントの重要性が書かれています。

www.dhbr.net