【読書メモ】メタ・コーチング
- 作者: L.マイケル・ホール,ミシェル・デュヴァル,田近秀敏,<,協力>,●泉本行志●稲田隆一●小屋一雄●高野潤一郎●山村佳央,佐藤志緒
- 出版社/メーカー: ヴォイス
- 発売日: 2010/08/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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メタとは「〜を超えて、〜より上の、〜に関する」という意味だそうで、ハイレベルなコーチングの本ということでしょうか。メタ・コーチングについて冒頭で次のように説明されています。
ICF(The International Coach Federation:国際コーチ連盟)系のコーチングでは、「感情を扱うのはセラピー」「信念や価値観は取り扱わない」などのルールがあるため、主に「行動」や「パフォーマンス」にだけ注意を払ってきています。
最近ではマネジメントや育成に取り入れられる事例もよく聞くので、行動やパフォーマンスに着目する手法は参考になるかもしれないと感じて読んでみました。
本書は大きく2部構成になっており、1部はコーチングの理論をベースにメタ・コーチングの理論を解説しています。
メタ・コーチングとは?
私たちが自分の体内に取り込んでいる「意味」や「意味の構造」に関する手法である。意味や意味の構造は、世の中における私たちのありようを決めるものである。そして、変化と学習を習慣化すれば、変化と学習は本能となり、持続的に意味や意味の構造に影響を及ぼし続けることができる。
7つのコア・コーチング・スキル
卓越したコーチングの実現に向けた9つの重要スキル
- フレーミングとリフレーミング
- タスキング:目的や目標達成に向けて有効なタスク(課題や朝業)を与える
- チアリーディング(応援・承認する)
- 説明責任を課す/モニタリング
- パターン検出
- モデリング
- ベンチマーキング
- ステップ・バック
- プロファイリング
メタ・コーチングではコーチの学習効果を高めるためにこれらのスキルをベンチマーキングするためのレベルを5段階で定義しています。詳細は書籍に譲りますがコーチングスキルをベンチマーキングすることで、コーチングの課題を見つけて改善していくヒントが得られると感じました。
変化の促進
第2部ではクライアントの「変化」に着目して、コーチがチェンジ・エージェントとして変化を促進していく役割についてまとめられています。2部に書籍の半分以上が割かれており、変化を促進するためのスキル向上がメタ・コーチングの実質的なコアスキルであると考えられます。
4つの変化軸(段階)
まず、変化は4つの段階があるとされています。
- モチベーション軸
「変化の必要性を感じ、変化を起こしたいという願望・動機といった「心-身体-情動:システムのエネルギーが十分にあるかどうか」を示す段階
- 決断軸
「何を変えるべきか、なぜこれまでの古いやり方が機能しなくなったのかについて、十分な理解と知識があるかどうか」を示す段階
- 創造軸
「その変化を現実のものとするための、具体的な行動計画を持っているか?」「変化のプロセスに応じた適切なアプローチを持ち、実際にそれに着手し、実験することができるかどうか?」を示す段階
- 定着・改善軸
「その新しい行動に対する、具体的な報酬や支援があるかどうか?」「継続的な検査、モニタリング、評価、フィードバックが得られるか?」「その新しい行動を自らの新たな習慣や新たな反応として、関連する種々の要素や従来のやり方と統合することができるか?」を示す段階
4つの軸でのチェンジ・エージェントの役割
コーチが「チェンジ・エージェント」として果たす役割は8つあります。
- 啓発者
- 挑戦者
- 探求者
- 誘発者
- 共同創造者
- 実現者
- 強化者
- 検査者
コーチは4つの段階ごとにこれらの役割を使ってチェンジ・エージェントとしての役割を果たしていきます。
モチベーション軸
- 啓発者 はビジョンを引き起こす
- 挑戦者 は、現状の苦痛について確認し、現状の延長線上にある未来の耐え難い状況のイメージ化を手伝う
決断軸
- 探求者 は「変化を引き起こすレバレッジ・ポイントが何であるか」を探求する
- 誘発者 としてクライアントが変化を起こす決断に踏み切るように促す
創造軸
- 共同創造者 はクライアントと協力して新しいインナーゲームを構築する
- 実現者 は変化を実現させるための行動を求める
定着・改善軸
- 強化者 は、新しい変化が定着するように支援する
- 検査者 は、計画を実行して得られた成果や現実について、さまざまな視点から検査・評価を行う
メタ・コーチングではこれらの役割を使いこなすスキルのレベルも5段階で定義しています。変化のコーチング・スキルのレベルを分析することでクライアントの変化を促進するための課題を見つけてコーチングスキルを伸ばしていくことができそうです。
メタ・コーチングを理解し、活用するためには5段階のレベルの内容を理解し、自分のスキル・レベルを分析して高めていくことが重要だと言えます。コーチングの専門ではないので内容は少し難解でしたが、コーチングを取り入れてスキルを上げていくために自分の現状を理解し課題を見つけて改善していくために役立つ書籍だと感じました。
【勉強会メモ】スクラム道関西 オープン・ジャム
- 日時:2019/07/11(木) 19:30 〜 21:30
- 場所:TAM COWORKING OSAKA
テーマ無しのフルオープン・ジャムは久しぶりでした。
途中の議論はすっ飛ばして自分がなるほどと感じた部分だけ思い出してまとめていますがご了承ください。深く理解したい場合は参加してその場で話に参加するのが一番だと思います。
初心者がスクラムするには?
- チームのリーダーに説明したら好感を得られた
- ふりかえりなど部分的にアジャイルの要素を取り入れてみる
外部から指導しても改善マインドが育たないチーム
- ルールや仕組みを外部から与えても現場の当事者がその価値を理解しないと改善に目を向けにくい
- 少しずつ成功体験を蓄積して改善の価値に気づいてもらうと良いかも
スプリントが失敗したにも関わらずチームはふりかえりで失敗の原因深掘りよりもリファクタリングを改善アクションに選択した
- 選択が問題なのかどうかはチームの状況による
- スプリントが失敗したことよりプロダクトを改善することが求められる状況なら問題ではない
- プロダクトにとっていずれが重要かをPOが判断していない可能性がある
- スプリントレビューでPOがスプリントの完了や今後の見通しについて方向性を示すと良いかも
POがプロダクトに対して優柔不断で決断力が弱い
- POはビジネスの理解や経営的な判断力も必要
- 売上や利益は意識しているか?
- ビジネス方面の勉強もしてもらう
コーチング式タイプ別診断
- 参加者の Keazy さんが研修で診断を受けたという、人を自己主張と感情の強さによって4つのタイプに分類する診断手法
- (実は私も会社の研修で受けたことがあります)
- チームのメンバーのタイプをお互いに知ることによって、コミュニケーションを取りやすくしたり関係性を良くするという使い方ができる
- 診断結果は与えられた役割やタイミングなどによって変わる
- 自分が思っているタイプと相手が思っているタイプが違うことはありそうで、鵜呑みにしすぎないように注意したほうが良いかも
※参考
兼任スクラムマスターがチームから理解を得られていない
プロジェクトへのスクラムの取り入れ方
- 作者: Jonathan Rasmusson,西村直人,角谷信太郎,近藤修平,角掛拓未
- 出版社/メーカー: オーム社
- 発売日: 2011/07/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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非スクラムのチームがお試しでスクラムをやってみたい
- 始める前にバックログの整理など準備期間は必要
- POとスクラムマスターを誰がやるか決める
- できたかどうかの評価とフィードバックも必要
- 状況が整っているなら本格的にやってみるのもアリ
- マネージャの働きかけや調整力は必要
【読書メモ】アナロジー思考
- 作者: 細谷功
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2011/07/28
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2011年に出版された、アナロジー思考の理論と具体的な活用方法が紹介されている書籍です。著者はこれ以外にも思考法に関する書籍を多数出版されています。このアナロジー思考の理論がベースとなっている別の書籍もいくつかあるようです。
アナロジー思考とは
発想力には2つの要素があるとしています。
- 多様な経験や知識を持っていること
- それらをいま発想の対象としているものに結びつけること
アナロジーが貢献する領域は後者です。過去の知識や経験を新たな発想に活かすアナロジー思考の重要性について、藤子・F・不二雄氏の「いただきのすすめ」を引用して説明しています。
この世の中、ほんとうに新しいまったく無から作り出す創作というものはなく、過去の作品からなんらかの影響をうけずにいられないのではないか、という思いがしてきます
推論には大きく以下の3つの種類があります。
アナロジー思考はアブダクションに相当する思考法であるとしています。
アナロジー思考の活用方法
アナロジー思考は4つのステップで構成されます。
- ターゲット課題の設定
- ベース領域の選択
- ベースからターゲットへのマッピング
- 評価・検証
構造的類似
ベースからターゲットへマッピングするために2つの共通点(類似)に着目します。類似には「表面的類似」と「構造的類似」がありますが、アナロジー思考は構造的類似に着目します。
共通点を見出す上での注意事項
- 共通点が、ターゲット領域での目的に合致したものであること
- 共通点が適切な抽象レベルに(高すぎず低すぎず)あること
- 共通点と同時に、目的とするターゲット領域での利用方法に関連する相違点も併せて考慮すること
例えば「猫好きの人」に売れる新商品のアイデアを考える時に、「哺乳類である」というように抽象化レベルを高めすぎると人間も当てはまってしまい目的にはそぐわなくなります。また、犬をベース領域にした場合、容姿や習性などの猫好きの人からすると無視できない相違点も多々あり、合わせて考慮する必要があります。
遠くから借りてくる
著者はベース領域を選択してマッピングすることを「借りてくる」と表現しています。また、ターゲット課題に対して因果関係が薄そうなベース領域のことを「遠くのもの」とも表現しています。借りてくるためには、要素を単純化して構造的類似を見つけますが、その際になるべく遠くから借りてくることが良いアイデアを生むとしています。
「遠くから借りてくる」のは「近くから借りてくる」のに比べて、抽象化した本質的な共通点を抽出する点で難易度は高くなるが、その分応用範囲も広くなると同時にアイデアも斬新なものになるという特徴がある
抽象化思考
抽象化が得意な人には以下のような思考パターンがあるとしています。
- 図解してシンプルに表現する
- 極論し、二項対立で考える
- 極論とは、枝葉を切り捨ててある一点の特徴だけを切り出して議論することであり、これも抽象化思考である
- 「格言好き」である
- たとえ話が的確である
- 似顔絵やあだ名をつけるのがうまい
- 「美しさ」にこだわる
- 抽象化するために構造的な美しさに着目する
- 飽きっぽく話が飛ぶ(ように見える)
- 構造レベルで同じものに早く気づいて次の話題に移る
また、抽象と具象は両輪がそろって初めて新しい発見が生まれるとしています。
抽象化思考とは、具体的な事象を抽象化し、さらにそれを再び別の形で具体化するという、「往復運動」であるので、これらの両方の言葉をうまく操れることが重要といえる
具体性がなく抽象的な話ばかりだったり、反対に具体的な話ばかりで結局何が言いたいのかわからない場合は良いアイデアには繋がりません。
アナロジーの使用上の注意
- 「状況証拠」であって「物的証拠」ではない
- アナロジーの拡大解釈による誤用に注意
- 仮説を立てるのに役立つが検証したことにはならない
アナロジー思考はあくまで類推であり、答えが導かれるわけではありません。前出の抽象化レベルが高すぎる例のように使い方を誤ると間違った類推にたどり着きます。導き出されたものはあくまで仮説であり、検証するには論理的にデータを活用して裏付ける必要があります。
具体的な活用法
具体的なアナロジー思考の事例として、電力網からインターネットへのアナロジー、組織から個人へのアナロジーなどを紹介し、ビジネスへ応用できる可能性を提示しています。
新しい勝ちパターン
著者はアナロジー思考を新しい勝ちパターンと表現しています。ネット上にもアナロジー思考を解説した記事がいくつか存在し、著者自身が解説しているものもあるようです。
【勉強会メモ】スクラム道関西 オープン・ジャム
いつもどおりディスカッションを行うオープン・ジャム形式ではありますが、前回からテーマを決めて実施しているようです。今回のテーマは「ふりかえり」でした。まずは「ふりかえりファシリテーションの基礎」と題したセッションを聞いて、その後、参加者が議論したい事を付箋に書き出してOSTに入りました。
セッションは「アジャイルレトロスペクティブズ」に出てくるふりかえりの5つのステップに沿って、実践的な解説を織り交ぜた内容でした。
アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き
- 作者: Esther Derby,Diana Larsen,角征典
- 出版社/メーカー: オーム社
- 発売日: 2007/09/01
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- 場を設定する
- データを収集する
- アイデアを出す
- 何をすべきか決定する
- レトロスペクティブスを終了する
個人的には「データを収集する」で解説されていた以下の言葉がとても大切なことだと思います。
事実を元に感情にフォーカスする
事実を元にできずに感情にフォーカスしてしまう段階や、事実だけにフォーカスしてしまう段階を経てこの大切さを実感できるようになるのではないかと思います。
OSTでは以下のような議題が出ました。私が参加した議論だけ簡単にメモを残しておきます。
反省点が多くて暗い時のファシリテート
- 問題が多くても貯め込んだままにしておくのは良くないので全て吐き出してもらう
- 問題を全部出してもらったうえで大事な事にフォーカスさせるのがファシリテート
- 時間管理はファシリテーターの重要スキル
- 以下のようなものを除外するのがファシリテート力
- 本質から逸れている
- 次のスプリントで改善できない
- チームで解決できない
- データを集めて早めに絞り込む
- 一番大事な問題に早く気づく
- 強引に時間を切って終わらせるのは大事な問題が曖昧になる
- チームが自力で着地出来る範囲で誘導する
- そのうえで時間内に終わればなお良い
ふりかえりのふりかえり
ふりかえりを振り返るためのテクニック
- プラスデルタ
- ハピネスドア
- ファイブフィンガー
- ファシリテーターが次に活かすためのふりかえりにする
- チームが成熟していればあえて「ふりかえりのふりかえり」をしなくても、ふりかえりの中で自ずとフィードバックが得られる
- ふりかえりをふりかえる時間が無い事も…
社内システムでアジャイルするためにユーザー部門の協力を得る
【読書メモ】嫌われる勇気
- 作者: 岸見一郎,古賀史健
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2013/12/13
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図書館で100人以上の待ち行列に予約して1年以上経過してすっかり忘れてしまっていた本ですがせっかく読んだのでメモを残しておきます。
表紙に副題として書いてある通りアドラー心理学に関する本です。青年と哲人という2人の対話形式で哲人がアドラー心理学を解説していくストーリーになっており、アドラー心理学を学ぶ書籍としてはとてもわかりやすい内容だと思います。
ちなみに書籍に関して読後に調べて知りましたがTVドラマにもなっているようです(TVドラマはあまり見ない…)。
著者の1人である岸見氏はアドラー心理学の第一人者として様々な記事が公開されています。
アドラー心理学の考え方
この本で述べられているアドラー心理学の内容についてざっくりまとめると以下のようになります。
- 目的論
- 過去の「原因」ではなく、いまの「目的」を考える
- 自分の経験によって決定されるのではなく、経験に与える意味によって自らを決定する
- すべての悩みは、対人関係の悩みである
- 自由とは、他者から嫌われることである
- 他者の評価を気にかけず、他者から嫌われることを恐れず、承認されないかもしれないというコストを支払わないかぎり、自分の生き方を貫くことはできない
共同体感覚
- 所属感
- 生まれながらに与えられるものではなく、自らの手で獲得していくもの
- 勇気づけ
- 横の関係に基づく援助
- 人は「わたしは共同体にとって有益なのだ」と思えたときにこそ、自らの価値を実感できる
- 自己への執着を他者への関心に切り替え、共同体感覚を持てるようになること
- 必要な3つの要素が円環構造で成り立つ
- 自己受容
- ありのままの自分を受け入れる
- 肯定的なあきらめ⇒「変えられるもの」と「変えられないもの」を見極める
- 他者信頼
- 人々は自分の仲間だと思う
- 裏切りを怖れない
- 他者貢献
- 貢献感⇒目に見える貢献でなくてもかまわない
- わたしは誰かの役に立っていると実感する
- 幸福とは、貢献感である
- 自己受容
エネルゲイア
エネルゲイア的とは現実活動態的と訳されています。アドラー心理学の考え方である今現在のありのままを受け入れることを指しています。そのため、人生とは過去の連続である「線」ではなく、「連続する刹那」であると表現しています。
- 人生とは、いまこの瞬間をくるくるとダンスするように生きる、連続する刹那なのです
- 目的地は存在しない
「他者に貢献するのだ」という導きの星さえ見失わなければ、迷うことはないし、なにをしてもいい
人生の目的を設定しないかわりに「他者貢献」を指針として今その瞬間に注力する刹那的な生き方によって「自己受容」「他者信頼」「他者貢献」の3つの円環構造を維持し、幸福になることができるということです。
ワーカーホリック
個人的には以下の部分にぐぬぬとなりました。
ワーカーホリックの方々は、人生の特定の側面だけに注目しています。おそらく彼らは「仕事が忙しいから家庭を顧みる余裕がない」と弁明するでしょう。しかし、これは人生の嘘です。仕事を口実に、他の責任を回避しようとしているにすぎません。本来は家事にも、子育てにも、あるいは友人との交友や趣味にも、すべてに関心を寄せるべきであって、どこかが突出した生き方などアドラーは認めません。