【読書メモ】カイゼン・ジャーニー
カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで
- 作者: 市谷聡啓,新井剛
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2018/02/15
- メディア: Kindle版
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DevLove関西の発刊イベント に参加する予定なのでそれまでに読もうと思いつつ結局前日までかかってしまいました。
『カイゼン・ジャーニー』は開発の現場をより良くしていくためのカイゼンのプラクティスを架空の物語をベースに紹介していく改善の旅の話です。物語は一人から始めて、チームで強くなり、みんなを巻き込むという3部構成で展開します。
物語とともに紹介される改善プラクティス
著者の1人である 市谷さんのブログ によるとそのプラクティスは全部で61個あるそうです。これらのプラクティスはどれも一般によく知られたもので、内容は解りやすく魅力的ではあるものの、実際にやってみようとするとなかなかうまくいかないことも多いものです。スクラムもそうですが、これらのプラクティスは定義は解りやすく理解は容易ですが、適用は各自の裁量に委ねられており各現場の事情に合わせて取り入れる必要があるためうまく活用するのは簡単ではありません。そのためこの本ではプラクティスを物語の一部に組み込んで適用の一例として紹介することで、定義を理解するだけで終わらせないように工夫されているのだと思われます。
スクラム開発と改善プラクティス
本書で紹介されている改善のプラクティスはスクラム開発がベースになっていますが、スクラム開発でなければ取り入れられないわけではありません。朝会やふりかえりをはじめとして、従来の開発プロセスでも取り入れられるものはたくさんあります。もちろん、技術が多様化し複雑さの増す開発の現場でスクラム開発は重要な改善プラクティスの1つとも言えます。しかしスクラムを取り入れてもそれだけで現場が大きく改善するわけではなく、他の様々な改善プラクティスを取り入れて前進させる必要があると感じました。
改善のための越境
物語の終盤部分を読んで私は不覚にも泣いてしまいました。ネタバレになるので詳しくは触れませんが、この本で度々語られる「越境」は改善のための重要な手段ですが、改善の究極の価値は越境することで得られるのではなく越境によって自分が救われることなんだろうと感じた瞬間でした。
スクラムマスターと改善
ところで、1つだけ欲を言うと物語の中でもっとスクラムマスターを巻き込んで欲しかったなと思いました。もちろん、究極的にはスクラムマスターがいなくても自ら改善を進められるチームが理想ではありますが、技術が多様化し複雑さの増す現代の開発の現場においてスクラムマスターと開発チームが協力して現場を前進させていくことは不可欠ではないかと思っています。スクラムマスター1年生としての偏見にまみれた個人的な感想です。
改善プラクティス
最後に、個人/チーム/チーム外の3部それぞれで紹介された改善のプラクティスを箇条書きでピックアップしておきます。これらをどうやって現場に取り入れるのか、興味があれば是非一読をおすすめします。プラクティスの中で実践していないものがあるならば、それはまだ改善の旅が途中ということなのかもしれません。
なお、文中では「インセプションデッキのアップデート」のようなプラクティスもありましたが、プラクティス名をキーワードとして紹介したいだけなのでここでは省きました(なので数えても61個はありません)。
一人から始める
- タスクボード
- 朝会
- ふりかえり
- 1 on 1
- XP
チームで強くなる
- スクラム
- スプリントプランニング
- プロダクトバックログ
- スプリントレビュー
- スプリントリファインメント
- インセプションデッキ
- Working Agreement
- 成功循環モデル
- 期待マネジメント
- ドラッカー風エクササイズ
- ファイブフィンガー
- 狩野モデル
- むきなおり
- 合宿
- 星取表
- モブプログラミング
- バリューストリームマッピング
- ECRS
- カンバン
- ポストモーテム
- 感謝のアクティビティ