【読書メモ】北海道日本ハムファイターズ流 一流の組織であり続ける3つの原則
北海道日本ハムファイターズ流 一流の組織であり続ける3つの原則
- 作者: 白井一幸
- 出版社/メーカー: アチーブメント出版
- 発売日: 2017/03/03
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ITエンジニアとプロ野球選手は全く違った業種ですがプロに徹する仕事のスタイルは似ている部分が多いと思っています。例えば、自分の持っている技術を駆使してチームのためにパフォーマンスを発揮する点、パフォーマンスを発揮するためのスタイルが人それぞれで個人個人のやりかたを積み上げることでチームの成果につなげる点、職場以外での技術の磨きかたも(やる/やらないも含めて)個人のスタイルに委ねられている点などです。私が野球好きということもありますが、このような類似点から野球の理論や事例から学べることはたくさんあると思っています。今回もたまたまこの本を手にとって読んでみましたが非常に参考になるマネジメントの本でした。
著者の白井さんは、当時は万年最下位とまで言われていた日本ハムファイターズでコーチとして若手を育成しチームを立て直して44年ぶりの日本一に貢献した人物です。当時の日本のプロ野球界では事例が無い中でコーチング理論のような科学的手法を取り入れた組織づくりの手腕はビジネスの世界でも注目されています。
2017年のシーズンでコーチを退任され、現在はテレビやラジオの解説者として野球界に関わりながら、全国各地で企業研修や講演も行われています。
著者自身も冒頭の「はじめに」で次のように書かれており、これまで取り組んできたマネジメント理論が野球以外でも活用できることを示唆しています。
コーチという現場の、いわば中間管理職としてチームの改革に努めてきました。強いチームをつくるために、何を意識して、どのような関わりをしてきたのか、その考え方はどこからきているのかを伝えることで、スポーツ分野だけではなくリーダーとして組織を導く多くの人たちに役立てていただけることを願っています。
また、白井さんは現役時代、日本ハムファイターズの選手としても素晴らしい実績を残されているかたです。そういうバックグラウンドや人物像についても情報を補って読むとさらに理解を深めることができると思います。
一流の組織であり続ける3つの原則
冒頭に書いてある3つの原則を読めばこの本がマネジメントについて書かれていることがすぐわかると思います。
- 実力
- 正しい方向で、正しい方法で、正しく練習をすれば実力がつく
- チームワーク
- チームの目標を全員で共有して一人ひとりが役割を果たす
- メンバー全員がチームの目標を自分の目標に設定
- 運
- 「最後にツキまくっている」のが日本一になれるチーム
- 最後に運を呼び込むのは、意識してできることを愚直にやり続けている選手
この3つの原則を徹底するためにメンタリングやコーチングの手法を取り入れています。
メンタル・コーチング
エンジニアの世界も会社組織で仕事をしていくためには個人の技術力だけでなくチームプレーが必ず必要になるので、コーチングの手法の重要性を改めて感じることができます。
選手に考えさせる
目標は無理につくるものではなく、「なんとなくこれをやりたい」という願望から出てくるものです。
- さまざまな観点で願望が具体的になるような関わり、向上心や好奇心が芽生えるきっかけづくりをつづける
- 達成の方法を学ぶ前に、達成したときにどんな価値があるのかをありありと描いて、どんどん膨らませていく作業が大事
- 会社から求められることをいち早く終わらせれば、自分の好きなように過ごせると考えることもできます
コーチングは手段の1つにすぎません。選手を指導の型にはめるのではなく、方法はたくさんあっていいと思っています。時にはティーチングも、カウンセリングだって必要になります。状況に応じて最適な手段を使い分けていくのです。 押すしかないときには、よいタイミングで押してやらなければならないのです。
明らかなミスへの対処
- 具体的な改善方法を一緒に考える
- 言い訳は一切出さない
- 反省しているのも、何が問題かいちばんわかっているのも本人
具体的な指示
- 「思い切っていけ」ではなく、どうしたら思い切りが出るのか考えて、具体的に指示する
- 「なるようにしかならない」というのはあきらめ。「これさえやっていれば大丈夫」という確信のもとで「このプレーに徹する」と決めて、あとは結果を受け入れる
「自分さえよければいいんだ」と思って普段から練習している選手が急にチームの勝利という重荷を背負えば潰れてしまいます
マネジメント
「体育会系は苦手」という言葉をよく聞きますが、こうして読むとエンジニアの世界でも体育会系的な根性論や曖昧な指導をしてしまっている現場は多いのではないかと感じます。
意識してできることを最後まであきらめずに全力でおこなう
- 指導内容が選手に定着しないのであれば、選手ではなく指導する側に何らかの問題がある
- いつでも誰にでも言い続ける
- 言いづらい選手、言いづらい場面でも言う覚悟を決められるかどうかが指導者としていちばん大切
あきらめずに選手に関わり続ける
- 選手に必要かどうか
- 指導者としてできることは何か
- できることはやり続ける
- 最後は選手に決める権利がある
- でもあきらめずに関わり続ける
監督にもコーチにもよい成果が出せるように100パーセントのエネルギーを注ぐ
「あいつは自分の意見が通らないとパワーを発揮しない」と思われているコーチと、「どんなときでもおれの決めたことに100パーセント尽くしてくれる」と思われているコーチ。どちらの進言を監督は取り入れやすいでしょうか?
どういう指導者になればいいか?
答えは「自分が選手だったらどういう指導者から学びたいか」を考えれば見えてきます。 選手は間違いなく実績を残している人から学びたいのです。しかし、それ以上に学びたい人がいます。実績を残して、なおかつ学び続けている人です。
黙って結果を出すのが謙虚ではない
- 冷めている人が多いからこそ言い続けるのです。伝え方を変えて言い続けるしかありません。
- 有言実行しかダメだ。言ったもの勝ちだ。
- 始める前に謙虚で、結果が出たあと傲慢な人は山ほどいます。自信をもって始めるために、やるべきことをすべておこなって準備するのが、何かに臨むときのほんとうに謙虚な姿勢です。
一流の指導者とは?
- 最初に任せて、最後に責任を取ります
- 二流の指導者は最初に責任をとって、最後に責任をなすりつけます
- リスクの大きい決断をするときほどコーチ陣には相談しない
- 同意を求めたら責任を負わせてしまうからです
成果と結果が同時に出ないというのは誰でもわかっていることです。結果とは成果の積み上げです。結果を出すためには、成果を出し続けるしかありません。
技術を活かしてチームとして成果を上げるためには理論を裏付けとしたマネジメントを愚直に行うことが求められるのだと改めて感じました。
参考