【読書メモ】人と組織を効果的に動かすKPIマネジメント
- 作者: 楠本和矢
- 出版社/メーカー: すばる舎
- 発売日: 2017/10/21
- メディア: 単行本
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4月で新年度を迎えた企業はそろそろチームや組織の目標が決まっているころだと思いますが、個人的に最近一番参考にしているのがこの本です。KPIを決めることも大事ですが、自分たちの現状を見つめ直したうえでチームが今一番やるべきことを見つけ出すためにもこの本に書かれていることがとても参考になります。チーム目標を決めるための教科書だと思っています。
具体的な内容はぜひ書籍を読んで頂くのが良いと思いますが、目標設定の教科書とすべきKPIマネジメントの重要性について簡単にまとめたうえで、書籍に出てくるいくつかの用語や理論について整理しておきます。
KPIとは
KPI関連の用語についてはいまさら説明不要と思いますが、書籍内での定義・使い方を簡単に整理します。詳しい解説はネット上にたくさん見つかるのでそれらを参考にすると良いでしょう。
KFI(Key Financial Indicator)/KGI(Key Goal Indicator)
- 売上、利益など、事業活動の大目的である「財務的な成果」を把握するための指標
KRI(Key Result Indicator)
- KFIに最も効果的につながっていく「あるべき状態(KR:Key Result)」がどの程度成立しているかを把握するための中間指標
- KRIがあることで、どのようにターゲットが動き、導入につながっていくかという「ストーリー」が明確に描けないと機能しない
KAI(Key Action Indicator)
- 重要活動指標
- KRIを高めていくための具体的なアクション
- どれだけ「個人として/組織として」実施したかを把握するための指標
KPIマネジメントとは
著者は「なぜKPIマネジメントが必要か?」について、以下の3点をあげています。
- 競争環境の複雑化
- 個人の生産性向上が急務
- 雇用人材の多様化
特に重要なのが、
組織の知恵を結集し、自社ならではの「勝ち筋」を見つけ、明確に絞り込まれた指標のもと、組織全体としてそこに注力していくことが求められる
という事です。「勝ち筋」というのは、言い換えればKRIの説明にも出てくる「ストーリー」です。つまりKRをいかにうまく整理するかがKPIマネジメントの重要なポイントです。
インサイト探索
インサイトとは、以下のように説明されています。
すでに表面に現れているものではなく、本人自体が未だ気づいていない隠れたニーズ、建前でなく本音の部分、刺激によって出てくる感情などを意図して使われる。
マーケティング用語では顧客に対して使われますが、この書籍では顧客に限らず組織の関係者やステークホルダ全般に対して使われています。
KRを導くために重要なのがインサイト探索であると述べています。
確証バイアス
心理学の用語です。インサイト探索の際に確証バイアスによって都合のよい情報ばかりを集めてしまう危険性が述べられています。
アナロジカル・シンキング
アナロジーはある事柄に対して類似性のある別の事柄に適用する認知過程のことで、戦略的な意思決定の際に使う手法のひとつです。インサイト探索で有効な手法のひとつとして紹介されています。
アナロジーのさらに具体的な論理的推論の手法として演繹法と帰納法、アブダクションが出てきます。これらは問題解決の分析手法としてビジネスシーンで広く使われている手法だと思います。
KPIマネジメントの整理と成果
本書の中盤では実際の企業でのKPIマネジメントの事例が紹介されています。その中で企業の事業戦略を分析して以下の項目にまとめています。KPIを整理する際にこの項目によるまとめ方は参考になりそうです。
- 大目的
- サービスをとりまくステークホルダの意識
- どういう状態になれば目的につながるか
- KPI
- アクション
- 成果
管理者がチェックするための視点
最後の章では設定したKPIを上位の管理者がチェックするための視点が説明されています。これはセルフチェックの際にも役立ちそうです。
- ターゲット/対象者の選び方は適切か
- 正しく「あるべき状態(KR)」を設定できているか
- 正しく「キーアクション(KA)」を設定できているか
- ストーリーは全体的に納得感があるか