【読書メモ】生きている会社、死んでいる会社
生きている会社、死んでいる会社―ー「創造的新陳代謝」を生み出す10の基本原則
- 作者: 遠藤功
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2018/02/23
- メディア: 単行本
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BOSSとの1on1で話題にあがって興味を持って読んだ本です。タイトルから分かる通り会社の経営者やマネジャーが読むようなゴリゴリのビジネス書ですが、変化の激しい現在のビジネス環境に沿った内容なので、アジャイルの思想に通じる部分も多く現場の視点で読んでも参考になる部分はたくさんありました。アジャイル開発は、ビジネスから切り離された従来のモノづくりの工程を見直し、ビジネス側に引き込むことを目指して考えられた開発手法であることを改めて感じました。そして、この本の内容が理解できてもアジャイル開発は理解できないというのは矛盾を孕んでおり、EMが現場をアジャイルに変えれないのはミドルマネジメントとして「生きている会社」への道筋を作れていないかもしれないという危機感にもつながってきます。
というわけで開発の現場のリーダーやマネージャーも読むべき本かと思います。実際、ミドルマネジメントの重要性にも1章まるごと割いて触れています。以下の記事でも著者自身が解説しています。
書籍は3部構成になっています。開発の現場視点で個人的に刺さったポイントをまとめておきます。
会社の目的は「創造」
会社は社会に必要とされる限り存続し続けることができる。これを突き詰めると、会社の目的は社会や顧客が必要とする価値を「創造」し続けることであると述べられています。
挑戦ー実践ー創造ー代謝
挑戦と実践の重要性として、Googleのエリック・シュミットの以下の言葉が引用されています。
プロダクト開発はより柔軟で、スピードが求められるプロセスになった。劇的に優れたプロダクトを生み出すのに必要なのは巨大な組織ではなく、数え切れないほどの試行錯誤を繰り返すことだ。
創造し続けるためには挑戦と実践も重要であり、会社が為すべきことは「挑戦ー実践ー創造」の3つに集約されるとしています。
そして、生きている会社であるための最後のピースが「代謝」です。著者は、経営は「老化との闘い」とも述べています。生きている会社であり続けるためには、定期的な新陳代謝を行い、新たな「挑戦ー実践ー創造」のサイクルを生み出すのです。
業務改善の4つの視点「ECRS」
本編とは少し話がそれますが、代謝のための業務改善の視点として「ECRS」が紹介されています。大事なのはこの順番に改善を進めることです。
- Eliminate(やめる)
- Combine(集約する)
- Replace(代替する)
- Simplify(簡素化する)
「生きている会社」の3つの条件
熱
会社を創業したときの熱気や高揚感を共有し、広げていくことの難しさとして慶應義塾大学の清水勝彦教授の言葉が引用されています。
経営理念があるとか、ないとか、ビジョンが明確だとか、明確でないとかというのは、本当はあまり意味のない議論です。大切なのは、経営理念、ビジョンの意味を自ら実感・共感できるかどうか、イメージできるかどうかということであり、納得することです。ですから、言葉だけでなく、その背景、ストーリーを語らなければ、理念の共有は難しい。 逆に言えば、言葉なんてどうでもいいのです。
これは経営だけでなく、組織やプロダクトに対しても昨今ではよく言われることです。
理
現実と向き合い、徹底的に理詰めすることの重要性も述べられています。
大切なのは現実と向き合い、「事実」(fact)に徹底的にこだわることである。 一次情報にこだわらなければ、リアリズムのある「理」にはなりえない。底の浅いロジックよりも、たとえ断片的ではあっても「決定的な事実」(conclusive fact)こそが「理」を担保する。
ここでは変化の激しい現代の状況を表す「VUCA」という言葉も紹介されています。
- Volatility(不安定性)
- Uncertainty(不確実性)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity(曖昧模糊)
また、陳腐で平凡なことも徹底的に磨き上げるこもと重要であるとし、そのポイントの1つである「スピードを武器にする」ことについて以下のように述べています。
- 敏捷性(agility)は非凡な移動速度だけでなく、動作の方向性を正確に決定する判断の質や速さも含まれている。つまり「速さ×的確性」が敏捷性である。
- 変化が常態化している中では、実行したあとの「リアクション」、つまり学習、対応のスピードの重要性が高まっている。
情
情とは人の「心」のことであり、
「生きている会社」になろうと思うのであれば、人の「心」が仕事にあらわれるような努力と工夫が不可欠である。
と述べています。全員がやりがいを感じて働いている会社が生きている会社なのです。
どうすれば「生きている会社」をつくることができるか
具体的にどうするかについて、実践すべき「10の基本原則」がまとめられています。ここは本書の大事な部分だと思いますがとても書ききれないので本書に譲ります。
「突破する」ために必要な6つの力
生きている会社にとって、突破するミドルマネジメントが重要であるとしています。マネジメントの中で比較的若い層でじっくり取り組むだけの時間があり、リスクをとって挑戦できるポジションであるからです。「突破する」とは生きている会社のための「挑戦ー実践ー創造」を推進することです。そのために、ミドルマネジメントは6つの力が必要であるとしています。
- 観察する力
- 跳ぶ力(発想転換)
- 伝える力
- はみ出る力
- 束ねる力
- 粘る力
リーダーに求められる5つの資質と行動様式
最後に生きている会社を支えるリーダーに求められる5つの資質と行動様式をピックアップします。現場のリーダーにとっても大事なことだと思います。
- 時代に先んじる
- ネアカである
- 現場に寄り添う
- 逃げない
- 最後は責任をとる
※参考