【読書メモ】マインドフルネス瞑想入門
- 作者: 吉田昌生
- 出版社/メーカー: WAVE出版
- 発売日: 2015/01/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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前回読んだ本で、マインドフルネスが仕事のパフォーマンスに与える効果はよくわかりました。
この本はグーグルの事例を中心としたビジネス寄りの本だったので、もう少しビジネスから離れたところでフラットな視点での効果や理論、実践者の具体的な実践例が知りたくてもう一冊マインドフルネスの本を読んでみることにしました。
マインドフルネスの科学的な研究の話から、成り立ちとなった東洋思想の話まで幅広くわかりやすく解説されていてより理解を深めることができました。要点を押さえつつ、約140ページであっという間に読めてしまう手軽さもあって、マインドフルネスを実践するモチベーションを高める意味でもちょうどよい分量です。CDも付属していて実践的な内容が凝縮された書籍です。
マインドフルネスとは
この本では以下のように説明されています。
「今、ここ」に、100%心を向ける在り方
脳科学からみたマインドフルネス
まずは書籍で紹介されている科学的な効果についてピックアップします。
サラ・レイザーの研究
前頭前皮質への血流が増え活性化していき、「自分や他人の思考や感情の動きを対象化して理解する力」が高まっていく
ケリー・マクゴニガルの研究
3時間経験すると、注意力と自制心が向上し、11時間後には「集中力を持続したり、気が散るものを無視したり、衝動を抑制したりするのに重要な領域の神経」について脳に変化が現れたと言われている。
マサチューセッツ総合病院とドイツのギーセン大学の研究者らの研究
16人の被験者がマインドフルネスのストレス解消コースを8週間体験し、その前後に脳のMRIを撮影して瞑想経験のない17人と比較したとのことです。
- 脳内の海馬と呼ばれる部位にある灰白質の容積が密集し、増大した
- 海馬は学習や記憶、感情、思いやり、内省などに関係する
- 扁桃体においては、灰白質の容積が減少
- 扁桃体は不安や恐怖に関連する
- いらいらや不安を抑えられ、感情的な行動が減り、適切な意思決定ができやすくなる
瞑想の基本・実践のコツ
姿勢
- 骨盤を安定させる
- 下腹の腹圧を感じながら、背骨を気持ちよく伸ばす
- 首や肩、上半身の余分な力を抜いていく
呼吸
気持ちのいい呼吸であることが大切
- 鼻先を出入りしている息を観察する
- 呼吸によって変化している身体の感覚を観察する
瞑想を深める5つのポイント
- 今、ここに在る(「過去」や「未来」ではなく「今」に思考を集中する)
- 何もしない(思い通りにコントロールしようとする「doing」モードから、努力せずにただ存在する状態「 being」モードに切り替える)
- ジャッジしない(感じたもの、気付いたことに対して、良い、悪い、と評価や判断をしない)
- 受け入れる(ジャッジせずにありのままを受け入れる)
- 毎日やる(実践して身につける)
アウェアネス=気づく力
「セルフモニタリング能力」や「自覚力」とも言う。「現実をありのまま観察すること」を重視しており、アウェアネスを高めることで自分」と「思考」や「感情」との間に「スペース」が生まれる。
自分の心を客観的に観ることで、「気づく自分」が養われ、無意識的な思考や感情から開放され、ストレスが軽減されていく
ラベリング
浮かんでくる雑念の対処法であり、気付いたことを言語化し、自覚することでありのままを受け入れる方法です。
例)
- 音が気になった⇒音
- 仕事のことを考えた⇒雑念
- 眠くなった⇒眠気
「ラベリング」することで、それが対象化され、手放しやすくなり、また呼吸や身体の感覚に戻ることができます
ストップ
ラベリングしても消えない場合に、心のなかで、「ストップ!」と叫ぶことで、頭の中を空っぽにします。
徹底的に向き合う
思い浮かんでくるのを無理に抑えようとせず、とことん向き合う方法です。瞑想中に湧いてくる雑念、心配事や気がかりなこと、どうしても考えたいことを、徹底的に考えてみる方法です。
さまざまな瞑想
一般的な仏教の瞑想法では、次のサマタ瞑想で集中力を育て、ものごとをあるがままに観察するビパッサナー瞑想へと移っていくとのことです。より実践的な瞑想の事例ではありますが、これらがベースとなって一般的なマインドフルネスの方法が組み立てられていることが理解できます。
サマタ瞑想
- 「止」の瞑想
一つの対象を定めた上で、その対象に集中を高めていく手法で、注意を特定の対象に向けます。呼吸を観察する瞑想もサマタ瞑想のひとつです。
ビパッサナー瞑想
- 「観」の瞑想
対象を定めずに心に感じたことをありのまま観察する手法です。doingモードからbeingモードに切り替えて瞬間瞬間の心の状態、五感で感じられることをマインドフルに観察していきます。
ベースにある東洋思想
マインドフルネスのベースとなっている東洋思想を知っておくことで、湧き出てくる思考との向き合い方もより深まると思います。先人たちの思想によって支えられていることを考えれば数日実践しただけで何かが得られるような期待をもたずにじっくり取り組むことができるかもしれません。
諸行無常
この世のあらゆるものは、つねに変化している。一瞬たりとも、同じ状態にない。移ろいゆくものである
無我の境地
自分という感覚が消えて、悩みや苦しみから開放された状態
本当の自分
- 考えていること、感じていることを、少し引いたところから観察している「意識」
- この純粋な、無色透明な「意識」が生命のエッセンスである
もっとマインドフルに生きるために
最後は心理学的な解説を交えたマインドフルネスの効果について、いくつかピックアップします。マインドフルネスの実践の先に得られるものが少しだけわかったような気がします。
感情を調整する力を高める
前述のアウェアネスが高まると今まで無意識に反応していたことに気づけるようになる。これを心理学では「無意識」の「意識化」と言う。これを習慣化することで自分自身を開放化できる。
「怒り」は例外
「怒り」は二次的な感情と言われているとのこと。怒りの背後には「恐れ」や「不安」などの一次感情がある。
「怒り」の対処法は、その根っこにある自分に生じた一次感情に気付いてあげること
自分の感情に気づき、それを受容します。それから、相手の怒りの根っこにある感情にも気づき、それに共感していく。
思考と感情の裏にある「モノの見方」に気づく
変えることができるのは、「考え方(思考)」です。「考え方」を変えることで、間接的に「感情」を変えることができるのです。
自分と思考を分ける
コップに水が半分入っているところをイメージしたときに頭の中に湧いてくる思考はポジティブなものとネガティブなものがありうる。
- 水が半分しかない
- 水が半分もある
幸不幸は考え方次第であり、自分と思考を切り離すトレーニングを実践しておくことで感情に振り回されず行動することができるようになる。