【勉強会メモ】1on1を学びたいエンジニアのためのワークショップ
- 日時:2020/01/23(木) 19:00 〜 21:00
- 場所:Sansan株式会社 関西支店
久々の勉強会メモです。主にワークショップ形式だったうえ、スライドも公開されているためあまり参考にはならないと思いますが、メモを残しておきます。
ワークショップのほうはコーチング方式で、コーチ、クライアントと、オブザーバー(横で観察し、後でアドバイスする)の3人1組で5分間の1on1を3セット(3つの役割を交代して1まわり分)やりました。「相手に興味を持ち、話題を拡張する質問をする」というのを特に意識してやってみようということで、実際にやってみると様々な気づきがありました。いろいろな人が集まった勉強会ということで、テーマは自由でどんな仕事をしているか、とか今日はどういう目的で来たのかといった簡単な質問から入って、追加の質問で掘り下げていく流れでしたが、どんどん質問していくと意外な方向に話が向かって「こんな答えをするとは自分も思っていなかった」ということがありました。仕事で1on1をする時は何か成果を出そうと意識するあまり、逆に意外性を生むような掘り下げた質問ができていないのかもしれないと思いました。そういう意味で変に取り繕ったりすることのない純粋な探求心を持った「あり方」というのが大事なのだと感じました。
1on1のやり方とあり方
やり方
- 場・関係をつくる
- 悩みの大半は場作りをしないことからくる
- 安全な場と関係をつくる
その他トピック
- 特に話したいこと無い
- それでもあなたの話を聞きたいという気持ちで
- チェックインからはじめる
- 雑談で始めるのも気持ち悪い場合はテーマを決めてチェックインする
- おしながきをつくる
- 問いかけのリストを用意する
- あらかじめ考えてもらう
- ふせんに書いていく
- ふりかえりやすい
- 瞬発力は下がる
- タイマーを見えるところに置く
- 残り時間が気になるなら最初から置く
- 助けを借りる
- 1on1カードなど
- マンネリ防止
- 毎回成果を求めない
- 相手が変わる準備ができていないと変わらない
どうすればうまくなる?
- いろんなやり方を試す
- うまくいく方法は人によって違う
- 個性を使う
- 魔法のコトバはない
あり方
- やり方の情報はあふれている
- そういう行為を真似してもなかなか伝わらない
- 言葉だけではなく、見えるもの、感じるものから伝える
- スキルは行為ではない
- 相手に伝える影響に名前をつけたもの
あり方を感じるとき
- 暗黙的な「何か」
- 評価とか
- うそ、ごまかし、恐れ
- 隠しているつもりでも伝わってしまう
コーチングの考え方 人はもともと想像力と才知に溢れ、欠けるところのない存在である(NCRW)
好奇心を持ち、可能性を信じる
誰もがBeliefというメガネをかけている - Affares〜出来事 - Belief〜新年、認知、考え方 - Consequence〜気分、感情、感覚、行動
- 囚われ
- 言語化できないけど気持ちがざわつく
- 自己探求
- ”内なる声”に気づき暗黙的なBeliefを探求する
- 他者のフィードバックを受け入れる/取りに行く
- 自己管理
- 内なる声を横においていったん話を聴く
あり方は大切だが訓練も必要、やり方も大切
傾聴できているか?
- 意識の焦点はどこにあたっている?
- 今の自分が相手に与えている影響は?
傾聴のレベル
- 内的傾聴
- 集中的傾聴
- 全方位的傾聴
10分でできる傾聴の練習
- 話をする人、聞く人に分かれて3分間話をする
- 聞く態度
- 言葉選び
参考
ポッドキャストでも語られていました。
7. Engineering Management & Coaching by Sansan Tech Podcast | Free Listening on SoundCloud
【読書メモ】会社を強くする人材育成戦略
そろそろ次年度に向けて色々と考えていかないといけない時期ですが、育成の取り組みかたについて考える参考にしようと読んだのがこの本です。
本書は、人材育成について、企業の経営者や担当者が、全体のフレームワークや近年のトレンドを理解し、戦略や計画を立案する力をつける入門書です。
どちらかというと人事部門の視点で書かれているので厳密には畑違いの専門知識ですが、入門書ということで深く掘り下げるというよりは基礎的な知識が幅広く展開されており、組織マネジメント上で直面する人材育成においても参考にできる点が多かったです。現場としては専門知識よりも経験則に基づいてやっている面も多いので、科学的な研究や調査結果に基づくフレームワーク、近年のトレンドが紹介されている点は特に参考になります。
また、育成される側の視点でもこういった知識を知っておくと自分の成長のために取り組むうえで役立ちそうだと感じました。例えば若いうちからリーダーシップのレベルが高い人のほうが成果を出しやすく、成長力が高いことなども、研究によりそういう事がわかっていると知識的に説明されたほうが、単にリーダーシップは大事だと言われるよりも納得して取り組むことができます。
人材育成とは
人材育成について、著者は以下のように分類しています。本書で扱う人材育成はこれらの要素の中から語られています。
狭義の人材育成
広義の人材育成
- 報酬制度
- 目標管理制度(MBO)
- ジョブローテーション制度
- メンター制度
若手社員の人材育成
まずはそもそも採用が大事であることが述べられていますが、育成とは少し主旨が異なるので割愛。その次のステップについて、若手社員の社会化について述べられています。
心理的契約
個人と組織の間の暗黙の相互期待のことを「心理的契約」と言うようです。
以下のような状態をつくりあげることが重要です。
- 個人の役割や職務を明確に理解する
- この仕事をやっていけるという自信が芽生えてくる
- 職務態度が安定し、組織に貢献しようという姿勢が明確に見える⇒早期離職に至る危険を回避
次のステップとして最初の3年間の重要性についても述べられています。ひとり立ちまでにかかる時間の調査結果によると、概ね3年、職種によっては長くて5年という結果が出ているようです。我々エンジニアは技術系なので5年程度かかるということになります。
- 平均3.4年、3年以内の累計で62.3%、4年以内の累計で70.3%
- 一般に事務系よりも技術系のほうが長い、5年程度かかる
「ミドルの自己学習」という論文では、最初の3年間の仕事の内容が、その後の成長に影響を与えることが示唆されているようです。
3年間の仕事において「楽だった」「忙しくなかった」という人はミドルになって学習行動をとらない
これは組織マネジメントの視点でも、新卒から入社3年までの育成方針に影響を与えそうな興味深い内容です。
また、リーダーシップの育成についても興味深い説明があります。リーダーシップ開発には時間がかかることから、新人段階から取り組むべきと述べられています。リーダーシップ開発として、次の3つの段階が紹介されています。
リーダーシップ開発
- パートナーシップ
- フォロワーシップ
- ボスマネジメント
いきなりリーダーシップというのも難しいので、まずパートナーシップから取り組みます。パートナーシップとは、以下のように説明されています。「信頼と対等」が重要な要素です。
一緒に仕事をする仲間と、信頼感に基づく、対等な関係を構築すること
ジョブローテーションの6つの効果
若手から中堅社員へ成長するにあたって、取り入れる人材育成戦略の1つがジョブローテーションです。次の6つの効果があるとまとめられています。
- 知的熟練の加速
- 一人前のプロをつくるには、経験させておきたい職務がいくつかある
- 仕事の俯瞰的理解・客観化
- 異なる事業、異なる職務を経験することで、全社全体を理解する
- リーダーシップの開発
- どのようなリーダーシップを発揮すれば成果があがるのかは、状況によって異なる
- 社内ネットワークの開拓
- 社内の人脈開拓
- 学習の促進
- 嫌でも新たに学習しなければならない
- 学習習慣が身についていない人でも、切羽詰まった状況に追い込まれて、学習をはじめる
- 適応力の向上
- 新しい環境に適応する訓練になる
OJT
経営幹部となってリーダーシップを発揮している人に「どのような出来事が役に立ったか」尋ねた調査では、「経験が7割、薫陶(関係からの学び)2割、研修1割」との回答だったようです。つまり現場での経験=OJTが最も役に立ったということです。
厚生労働省の能力開発基本調査(2012年度)を引用し、次のようにOJTに力を入れて取り組んでいる動向が紹介されています。
ワークプレイス・ラーニング
ワークプレイス・ラーニングとは、仕事現場での時間のなかにシステム化されたOff-JTを組み込んでしまう人材育成手法で、OJTの新しい波であると紹介されています。
顧客が人材育成に果たす役割
「成長を実感している人は、営業などの顧客接点を持つ人により多く、内勤のスタッフとして働くひとには少ない傾向がある」と述べられています。つまり顧客との接点を持つことが人材育成に繋がることが示唆されています。そして、顧客との直接的な接点が無い場合であっても、顧客を意識しているかどうかで成長実感に違いがあるようです。
「社外に顧客はいないが、社内のユーザーを顧客と思っている人」と「思っていない人」を比べると、前者のほうが成長実感を持っている人の比率が明らかに高い
「人が育つ組織」をつくるということ
「21正規のキャリアを考える研究会」研究報告書 という資料が紹介され、次のように述べています。
理想的な社員像を定義し、育成すべきスキル・能力や態度について具体的な言葉で表現しているが、それらを大胆に分類してゆくと最終的には「リーダーシップ」と「専門性」という2つの軸に収束してゆく
つまり、人材育成は大局的には「リーダーシップ」と「専門性」という2つの軸に収束されます。この2軸について次のような傾向が紹介されています。
- ミドル期(主に40代の社員)は伸びが小さくなる
- 個人差があるが、どちらかが高くてもう片方が低いままだと成長は次第に鈍化していく
- もう一方の伸びを必要とするという関係と、片方が伸びるともう一方の伸びを促す
- 個人のリーダーシップと専門性のレベルを「見える化」して、現在どちらの伸びが課題になっているかをチェックする必要がある
つまり40代を迎えるまでに、2軸のそれぞれを伸ばすように取り組むことが重要です。ある程度の専門性を得られたら、それを活かしたリーダー的な役割を担うなど、2軸を交互に注力するような戦略も良いかもしれません。
また、キャリア観を6つに分類した調査では、30〜40歳前後でもっとも成長しているのは「オンリーワンプロフェッショナル」タイプであると説明されており、このタイプは「50代にかけても高い成長力を持続し、最終的にもっとも高い水準に到達できる」としています。一方、「競争型ジェネラリスト」は40〜50歳では極端に低い成長度合いになっていると述べられており、このタイプは40代より前までにマネジメント層へ引き上げるか、別のタイプへ転換を促すようにマネジメントしていくのが良いかもしれません。
ローカルとコスモポリタン
キャリア志向についての2つの志向の違いが紹介されています。
- ローカル
- 所属組織へのロイヤリティが高く、組織固有の価値やモック表を内面化して、組織内での昇進に関心を寄せているが、技術へのコミットメントは弱い
- コスモポリタン
- 所属組織へのロイヤリティは低いが、専門技術へのコミットメントが高く、専門技術が媒介する準拠集団を所属組織以外に持つ
しかし、どちらかに偏るのが良いというわけではないようです。
実際には好業績の社員ほど、ローカルでもあり、コスモポリタンでもあることがわかっている
最終的に成果を出すにはローカルであり、コスモポリタンでもある人材になっていくことが求められています。
【読書メモ】ファシリテーション 実践から学ぶスキルとこころ
ファシリテーションのことを理解する目的で直前に読んだ本と合わせて読んだ書籍です。本書のほうが5人の共著ということもあり、著者らの実体験に基づいた生の声に近いものがそのまま文章として表現されています。当たり前ではありますが、直前に読んだ書籍とも表現する言葉は違えど共通する点が多々あると感じました。
他の書籍とも共通している基本的な部分をまとめた後、この本で特に強調されていると感じた「実践から学ぶスキル」と「こころ」と表現されている部分についてまとめておきます。
ファシリテーションの基本
「ファシリテーションは誰かが何かをするのを容易にしたり、促進するために使われる」と説明されています。他の書籍ともほぼ同じ説明です。
3つの基本
ファシリテーションの基本スキルは「空間デザイン」「グループサイズ」「板書」の3つであると述べています。
空間デザイン
空間デザインとは、どのような場を設けるか、席や机をどのように配置するかということです。席の配置については以下のような型が紹介されています。
- スクール型⇒教室のような慣れ親しんだ形
- ロの字型⇒お互い向き合う、対立関係になりやすい面もある
- 多角形型⇒ロの字型を少し変形するだけで全く違う空間になる
- アイランド型⇒グループ作業によく使われる
- アイランド・ハの字型⇒角度を変えることでファシリテーターへの注目度が高まる
- シアター型⇒スクール型の机なし版、前に立つ人に意識が向く
- 扇形⇒シアター型よりも全体のまとまり感
- サークル型⇒中心から等距離で始まりや終わりがない
グループサイズ
グループサイズとは参加者を複数のグループへ分けて議論や作業を行うスキルのことです。「確実にその場を変える」重要なスキルであるとしています。グループサイズの選び方によってメリット・デメリットがあり、その後の場の流れに影響します。
- 大人数だと話しにくいが意見のバリエーションが多くなる
- 少人数だとじっくり話せるが意見のバリエーションが少なくなる
議論が加熱した状態をクールダウンする時にも使えると述べられています。
板書
発言の内容を見える化することであり、ホワイトボード以外に模造紙、ポストイットなどのツールを使います。発言をあえて板書することで、次のようなメリットがあると述べられています。
「誰の発言か」よりも「どんな発言か」という発言内容そのものに注意が向く
書くスピードが会話のスピードを制限してしまうデメリットもありますが、発言を整理し、議論の展開の拠り所となる点ではデメリットをしのぐものがあるとされています。
4つのステージ
ファシリテーションは「共有〜拡散〜収束〜共有」の4つのステージで構成されると述べています。
- 共有
- 様々な情報や目的・ゴール設定などを共有し、参加と相互作用の根底を作る段階
- 拡散
- 自由な発想でアイデアを広げ、多様な可能性をふくらませる段階
- 収束
- 具体的な成果に向かって意見を集約し、まとめていく段階
- 共有
- 今までの成果を確認し、次に向けてのステップを明確にする段階
共有のスキルとして「OARR(オール)」が紹介されています。
- OUTCOME(アウトカム):求める成果、生み出したい成果、ゴール設定、終わったときのメンバーの状態
- AGENDA(アジェンダ):新講師台、討議項目とタイムテーブル
- ROLE(ロール):メンバーそれぞれの役割や心構え
- RULE(ルール):メンバー間のルールや、この場での約束事
※参考: OARR(オール) - 人材開発用語集 │ ダイヤモンド社の適性検査・社員教育・研修サービス
クリエイティブカオス
「クリエイティブカオス」とは「創造的混沌」とも言われる、創造的な成果を生み出すためには、なくてはならない重要な流れの一部であり、ファシリテーションの流れの中で通り抜けるべき難関であると述べられています。具体的には次のような場面のことを言います。
良いところまで来ているのに決定だが出ない、アイデアは拡がったがどれも納得できない、ああでもないこうでもないと意見が飛び交う
前出のファシリテーションの拡散から収束に向かう流れの中では大小様々なクリエイティブカオスが起きるとされています。大切なのはクリエイティブカオスを防ぐことではなく、その存在を知り、あわてずチャンスとして活用することであると述べています。
実践から学ぶスキル
ファシリテーションの向上
ファシリテーションを向上させるために重要なものとして次の2つが挙げられています。
コンテンツとプロセス
コンテンツは発言の内容、プロセスはそれ以外の発言者の態度、周囲の反応、空気などのことです。コンテンツの理解があって初めてORRAや本質的な問いができるようになります。また、プロセスをうまく扱うためにグループサイズ、空間のデザインなどを使います。コンテンツとプロセスの両方に注目し、場を読んで質問に活かすことが重要としています。
信頼を築く
ファシリテーションをするにあたって、ファシリテーターが信頼を築くことがまず前提として重要であると述べられています。ファシリテーターの信頼がなければ場の空気は悪くなり、議論へのモチベーションが下がってしまいます。そのため、言行不一致などを避けて、全ての意見に対して対等に接し、謙虚にふるまうことが求められます。
参加と相互作用
参加と相互作用を意識することも重要です。
- 参加とは意味を共有すること
- 相互作用とはお互いが影響を与え合い、それぞれが影響を受けて考えや行動に変化が起きること
その場にいるだけで心ここにあらずでは参加とは言えません。またそれぞれが言いたいことを言うだけの平行線であったり、逆に本音を言えていない状態では相互作用は起きません。この2つは単純で当たり前な事ではありますが、ファシリテーションに対する深い意味を持っていると思いました。
ファシリテーションのこころ
「こころ」とはファシリテーターとしての心得とも言い換えられます。それはの3つの「根っこ」であると表現されており、「メタスキル」「事前の準備」「志」で構成されます。ただし、あくまで大切なのは参加者の意思やそこから出てくる答えであり、ファシリテーターはそれを支援する立場であるという前提は忘れてはいけません。とはいえ、ファシリテーターもひとりの人間であり、これら3つに対する姿勢が場や参加者に影響を与えると述べられています。ファシリテーターという中立的な立場であるからこそ、極めようとすればするほどスキルよりもベースとなるこころが重要になってくるということだと思います。
- メタスキル
- 事前の準備
- プログラムデザイン
- 目標・ゴールを中心にデザイン
- 対象者の理解
- どういう人が何人、どんな思いや期待で参加するのか
- 場のデザイン
- どのような空間のどのような配置で集うのか
- プログラムデザイン
- 志
【読書メモ】人を動かすファシリテーション思考
- 作者:草地真
- 出版社/メーカー: ぱる出版
- 発売日: 2017/05/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
会議を取りまとめたり、音頭を取って議論を促し、結論をまとめて共有するスキルというのはビジネスの基本スキルですが、そのスキルを学んだり基礎を身につける機会は意外と少なく、個人の経験蓄積や努力に委ねられている部分が大きいのではないでしょうか。とはいえ、仕事の経験を積んでいくうちに誰しも意見のとりまとめや改善の推進役を担うことがあるはずです。そのような機会のために、『ファシリテーション思考』はとても役立ちそうです。
本書はビジネスシーンだけに限定せず汎用的な基礎部分がわかりやすくまとまっています。自身が基本的な知識とスキルをきちんと学ぶのはもちろん、上司がそのような人材を育てるためにも読んでおくと良い書籍だと思います。私もチームのメンバーに紹介していきたいなと思いました。
具体的な事例やテクニックは本書を読んで頂くとして、ここではファシリテーションとはどういうもので、ファシリテーターはどういう役割を意識し、どういうスキルを持っているべきかという点をまとめておきます。
ファシリテーションとは
英語の直訳は下記。
facilitate
促進する、助長する、事を容易にする、楽にする
会議や取り組みをゴールに導くための支援をするのがファシリテーションです。ファシリテーションの3つの特徴を以下のように述べています。
- 対等な関係のメンバーによる主体的な参画
- ファシリテーターの中立性
- プロセスの共有による納得と当事者意識
ファシリテーション自体がゴールや変化への責任やアクションの一部を担うものでもありません。ファシリテーションの存在に関わらず参加者がやることは変わらないわけですが、参加者の主体性や当事者意識を生み出す支援をするのがファシリテーションです。
ファシリテーターがやること
本書には以下のようなことをやると述べられています。一言で述べるなら、最終的に「人が動く」を生み出すのがファシリテーターのミッションであると言えます。
- 進め方を考える
- 問題を”見える化”する
- いつまでに、何を、どこまで進めるか、を決める
- 目的・ゴール・進め方を明確にする
- 人が動くようにする
司会者とファシリテーターは違う
中立的な立場という点は司会者も同じですが、司会者とは違う点を次のように述べています。
中立的な立場でチームのプロセスを管理し、チームワークを引き出し、そのチームの成果が最大となるように支援する(中略)
いわばテーマの中身ではなく、参加者の活動が容易に行えるように、プロセスの舵取りを行う
ファシリテーターとは次のような人であると述べられています。
- 場にコミットするが内容やあり方にはコミットしない人
- 「場」そのものをホールドする人
つまり、中身に関与せず参加者を中身に向かわせる人です。ただし、中身に関与しないということは中身を知らなくても良いという意味ではありません。
「中身に関与しない」ということは、「中身を知らない」ということではないのです。むしろファシリテーターは、何かのテーマでワークショップを開催することが決まったら、その分野について知り得ることはすべて調べた上で、ワークショップを組み立てなければなりません。
中身を知らずに参加者を支援し、その場をホールドすることはできません。そういう意味では最も中身を知っているくらいのほうが望ましいのです。
ファシリテーターに求められる力
求められる10の力が紹介されています。
- 場をつくる力(どこでやるか?席や配置など)
- 場をデザインする力(アジェンダ、ツール、タイムキーピング)
- 先を読む力(洞察力と予見力)
- 聴く力・聞く力(傾聴力、質問力)
- 伝える力(相手のアタマの中身を想像しながら話を組み立てる、相手のアタマの中の、”現在地”を確認しながら話を進める)
- 引き出す力(参加者の総意、方向性を引き出す)
- 書く力=見える化する力
- まとめる力
- 共有する力
- 動かす力
こうして改めて見ると必要なスキルは多岐にわたります。中身に関与しないからといって楽な役割ではありません。また、これらは他の様々な場面でも応用できるスキルばかりです。10の力はそれぞれのスキルに特化した書籍などもたくさん出ているので、全体像を押さえるだけでなく10の力のそれぞれを極めていこうとするとファシリテーションというのはとても奥の深いスキルであると言えます。
参考
【読書メモ】「いい質問」が人を動かす
著者は弁護士でTV出演などもされている 谷原誠 氏です。弁護士として裁判に勝つことだけでなく、依頼者が本当に求めていることを理解するために質問することの重要性に気づいたのが、「いい質問」を追求するきっかけのようです。
私は質問をして依頼者を知り、相手を知り、解決すべき結論を知らなければならなかったのに、質問をしないばかりに、全て知らないまま、独りよがりの裁判を続けていたのです。
質問には2つの機能があり、いい質問を使いこなすことで6つの力が得られると述べられています。
質問の2つの機能
質問をされると、①思考し、②答えてしまう
質問によって得られる6つの力
以下の6つの力について1章ずつに分けて説明されています。
- 思いのままに情報を得る
- 人に好かれる
- 人をその気にさせる
- 人を育てる
- 議論に強くなる
- 自分をコントロールする
この6つの力のどれを目的とし、適切な相手に適切なタイミングで、瞬時に適切な言葉を選んで質問するのが「いい質問」だとされています。
6つの力のうち、1〜3は質問の基本テクニック、4〜6はビジネスの現場での応用が期待できる力です。そのため、1〜3についてはオープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの違いであったり、ネガティブな質問をポジティブに変換するテクニックであったり、感情に訴えかけてから理論的な質問をするテクニックなど、他の書籍でも取り上げられるようなテクニックが紹介されています。そして、後半の4〜6については基本テクニックを応用したより実践的なテクニックが解説されています。
自分をコントロールする質問力
他者へ良い質問ができるようになると、その質問力を自分に向けて自問自答することで自身の成長にも役立てることができます。これが6つ目の力です。これが質問力の集大成として目指すべきスキルだと感じたので紹介しておきます。
7つのフィードバッククエスチョン
自分自身で振り返って行動を変えるための質問テクニックです。これはまさにふりかえりやPDCAで使われているテクニックであると感じました。
- よくできた点は何か
- それはなぜうまくいったのか
- 今後も続けたほうがよいことは何か
- うまくいかなかった点は何か
- それはなぜうまくいかなかったのか
- 今後やめた方がよいことは何か
- 今後改善すべき点はどこか
問題解決のための8つのクエスチョン
問題に直面しても諦めず前向きに行動していくための質問テクニックです。
- 視点を変えた場合、この問題のよい面は何か?
- この問題を解決したら、どのような力が身に付くか?
- 解決するには、どのような方法があるか?
- 解決するために自分がしなければならないことは何か?
- そのために今始めなければならないことは何か?
- 解決の過程で、自分が代償として差し出さなければならないことは何か?
- その代償を差し出したとしても、この問題は解決した方がよいか?
- この問題を解決するプロセスを楽しめるようにするには、どのように考えたらよいか?
この質問要素には以前読んだ経験学習のリフレクション、ストレッチ、エンジョイメントの要素が含まれていると感じました。
今すぐ自分を変えるための質問ワーク
本書の一番最後に、10個の質問に対する自分の答えを考えてみましょうという質問ワークがあります。一通り読んで、最後にこれをやってみると、なるほど、行動を起こさなければ/変えなければと思わされます。
- 1年前に戻れるとしたら、まず何をしますか?
- 会社(家族)があなたに求めている役割はどんなことでしょうか?
- あなたがその役割を果たすために、今すぐ始められることは何ですか?
- あなたを元気にしてくれる言葉は何ですか?
- あなたのマイナスの口癖は何ですか?
- 自分の周囲で変えたいことは何ですか?
- あなたが「やればできるけど、やらないだけ」と思っていることは何ですか?
- あなたが妻(夫)や恋人に怒りを感じるのは、どんなときですか?
- あなたが目標を達成するために何かを犠牲にしなければならないとしたら、何でしょうか。
- 本書のどの部分を、どのような場面で、どのように活用するつもりですか?