【読書メモ】ロジカル・ライティング
社会人になって書くビジネス文書をうまく書くにはコツがあって、ある程度慣れも必要です。ところがほとんどの場合はそれを誰かに教わって覚えるというよりは経験によって身につけるケースが多いのではないでしょうか。私もそうやって身につけました。そのため、自分が経験で得たコツを後輩や部下に伝えるのは思ったより難しかったりします。
議事録を書けと言われたけどどうやって書けばいいのかわからない、後輩に議事録を書いてもらったけど思ったものとは違った、でも何から直してもらえば良いかうまく伝えられない、そういう時のために、本書のようなきちんと整理され、活用実績のある手法というのが役に立つと思います。ビジネススキルは一昔前のように有無を言わさずやってみて、経験から自分で学べという時代ではなくなってきているので、きちんと手法を理解してもらってから経験によって知識を深めてもらう必要があると思っています。
本書はわかりやすい文書の書き方とはどういうものかを説明したあと、たいていの社会人が書くことになる主な種類のビジネス文書について、種類ごとに書き方のコツが説明されています。新入社員には1人ずつに配って読んでもらいたいなと思える本でした。
わかりやすさ=論理性
ビジネス文書の要件は「わかりやすさ」であり、「わかりやすさ」に必要なものは「論理性」であると冒頭で述べられています。では、論理的な文書とはどういうものかというと、以下のように説明されいます。
メッセージやストーリーが筋道立っていて、構成が構造的である文書
反対に論理的ではない文書は以下のように説明されています。
話が見えなかったり飛躍したり、構成に全体観や関連性が見えないもの
ここは論理的ではない文書の説明から考えると理解しやすいのではないでしょうか。わかりにくいと感じる文書はたいてい、全体がぼんやりしていて読むとモヤッとしたり、内容が飛躍して理解が難しいことが多いと思います。
わかりやすいビジネス文書の3つの要素
上記をふまえて論理的なビジネス文書は3つの要素が重要であると言えます。
- メッセージ:主張と根拠
- ストーリー:話の展開
- 構成:話の全体像
相手を知る
本書ではわかりやすさのひとつとして、文書を読んでもらう相手を知ることの重要性が特に丁寧に説明されています。以下の説明がその理由のひとつです。
ビジネス文書はコミュニケーションの手段です。コミュニケーションの基本は相手目線です。
相手目線に着目しているところが本書の特徴であると私は感じました。たしかに著者の言う通りで、実際のところ私の経験でもわかりやすい文書であると感じる時は読み手に寄り添った視点や言葉で書かれていると感じます。
本書では「ターゲットプロファイル」や「SWAT分析」などマーケティングなどで使われる手法も使ってターゲットを知る方法が詳細に説明されています。
目的を明確にする
わかりやすく相手に伝えるためには目的が明確でなければなりません。そのために相手目線を意識して目標設定します。
- どんな行動をとってもらいたいのか(ゴール)
- そのために何を理解してもらいたいのか
- そのためにどのような状態にするべきか
ビジネス文書の書き方
本書では様々なビジネス文書の書き方を以下の4要素の構成で説明しています。
メッセージの構成
- マインド(基本的な考え方)
- フレームワーク(骨子)
- 情報収集
- ストーリー
上記のメッセージの構成に合わせて各文書の書き方を説明しています。
- 議事録
- 通達文書
- 報告文書
- 調査報告書
- 依頼文書
- ソリューション提案書
- 企画提案書
これだけの文書について書き方を知っていればたいていのビジネス文書に応用できます。
それぞれの文書の書き方について概要だけピックアップしておきます。
議事録
- 要件
- 決定事項が把握できる
- 論点と経緯がわかる
- スピード
- マインド
- コスト意識と責任感
- フレームワーク
- 基本情報
- 目的・ゴール
- 議事内容
- 決定事項
- 情報収集
- 事前準備
- 参加者の把握
- 前提知識の把握
- 合意事項の予測
- 会議中
- メモの取り方
- 事前準備
- ストーリー
- ①議題に対して、②どう議論が展開されたのかという流れ、③議題に対する結論、④結論に対して了解が得られたかどうか
告知文書
- 要件
- 伝えるべき事実にあいまいさがないこと
- 相手にとっての意味がわかること
- マインド
- 相手意識と立場意識
- フレームワーク
- 発信者・受信者
- 告知情報
- 詳細情報
- 情報収集
- 問い合わせや例外事項への対応方針まで決めておく
- ストーリー
- SWATやプロファイルをもとに検討
報告文書
示唆がない結果の羅列は意味がない
- 要件
- 責任がまっとうできているかどうかが理解できること
- その活動が続行か変更かという投資判断ができること
- 実績として自分のやったことを評価できること
- マインド
- 相手が自分に抱いている期待を認識し、それに答えようという意識
- 感謝の念
- フレームワーク
- 目的
- 成果・進捗
- 活動
- 総括
- 課題と予定
- 情報収集
- 「事実」と「所感」を混在させないように留意して情報を集める
- 事実だけではなく、自分というフィルターを通した判断が求められる
- ストーリー
- 成果や進捗状況サマリーなど結論を先に述べ、根拠となるデーターなど細部を並べていく分類型の展開
調査報告書
依頼文書
相手の立場にたつ
- 要件
- 相手が何を依頼されているのかがわかること
- 依頼されている理由が妥当であること
- 気持ちよく依頼を受けたいと思える配慮がされていること
- マインド
- おもてなしの心
- フレームワーク
- 依頼要約
- 依頼理由
- 依頼詳細
- ベネフィットまたはリスク
- 確認
- 情報収集
- フレームワークに従って情報を集め、相手からの想定質問を洗い出す
- ストーリー
- 礼を尽くし自分の気持ちを伝える
ソリューション提案書
相手の心を動かし意思決定させる
- 要件
- あるべき姿が描かれていること
- 問題が特定できていること
- 解決策に具体性と信頼性があること
- マインド
- 相手の情報をどれだけ引き出せるか
- 「視座」を高め、「視野」を広げる思考
- フレームワーク
- 現状とあるべき姿
- 解決すべき問題
- 実現イメージ
- 予想効果
- 進め方
- 信頼性
- 情報収集
- 3C
- ストーリー
- Why+What中心
- What+How中心
- 具体性と信頼性を訴求する
企画提案書
- 要件
- 記憶に残ること
- やってみたいと思わせること
- マインド
- ロジカルシンキングだけでは新たな方向性を見出すのは難しい
- ラテラルシンキング(水平思考)
- 前提を疑う
- 見方を変える
- 組み合わせる
- フレームワーク
- 企画全体像
- 企画概要
- 進め方
- 予想効果
- 想定リスクと対応策
- 情報収集
- 企画を魅力的に思わせるために、相手の感情に訴求する材料を集める
- 感情分類(ロバート・プルチック)
- ストーリー
- 4つの不のステージ
- 不信・不適
- 不要・不急
- 不経済
- 不安
- 新しい概念を図で示す
- 4つの不のステージ
参考
著者は経営・人材育成コンサルティング事業を経営する清水久三子氏で、他にも多数の書籍を出版されています。