【読書メモ】論理が伝わる世界標準の「書く技術」
本書は「パラグラフ・ライティング」という手法による文章の書き方の入門書です。7つのルールに従って文章をまとめることで論理的で読みやすい文章を書くことができます。著者自身が書籍について解説した記事で概要を知ることができます。
また、この書籍の元となっているパラグラフなどのキーワードは著者が運営するサイトでも解説されています。
本書自体がパラグラフ・ライティングによって書かれており、読みやすく、良い文章を書くための例題も多く紹介されており、基礎スキルを身につけるテキストとしてもちょうど良いので、チームに入ってくる新卒社員の文章スキルを身につけるためのテキストにしようかと思っています。入社1年目の社員には毎日業務を振り返って日報を書いてもらっているので、テキストで知識を身に着けて、日々の日報でそれを実践していけば1年後には文章によるコミュニケーションで十分なパフォーマンスを出し、エンジニア本来の技術的なスキル習得に集中していけると思います。
パラグラフとは
パラグラフとは、1つのトピックを説明した分の集まりのことです。
類似した文章の単位としての「段落」は単に文章の区切りをつける単位であるのに対して、パラグラフは必ず1つのトピックの情報で構成されます。つまり、パラグラフ・ライティングで書いたときの「段落」は1つ以上のパラグラフで構成されます。
欧米ではパラグラフを使った文章の書き方を学校で学ぶことから、パラグラフ・ライティングは世界標準の書き方であると著者は述べています。また、パラグラフで書かれた文章は以下のような優れた文章になると、著者のサイトでも述べられています。
- 必要な情報/不要な情報の判断が容易
- 重要な情報の読み落としがない
- 速読が可能
- 内容の理解が容易
- 筆者の考えの流れの把握が容易
メンタルモデル
パラグラフ・ライティングの中で著者が紹介しているもう1つの重要なキーワードがメンタルモデルです。
メンタルモデルとは、人が頭の中で作る、自分なりの理解の世界です。
Wikipediaには「頭の中にある「ああなったらこうなる」といった「行動のイメージ」を表現したもの」とあります。
やや心理学的な知識が持ち込まれていますが、私が読み漁った限り、どの文章術の本にも似たようなことが書いてあります。文章スキルとは別物だと思われがちですが、文章を伝える相手の頭の中をイメージすることは、実は文章スキル以前に身に着けておくべき基礎スキルと言えます。著者のサイトでも全てはここからであると書かれています。
パラグラフで書くための7つのルール
本書ではパラグラフ・ライティングの手法として7つのルールが紹介されています。書籍で紹介されている文章の例題でもこのルールに従い解説されています。
- 総論のパラグラフで始める
- 1つのトピックだけを述べる
- 要約文で始める
- 補足情報で補強する
- パラグラフを接続する
- パラグラフを揃えて表現する
- 既知から未知の流れでつなぐ
著者のサイトでも紹介されているので、詳しくは以下参照(本書の内容とはやや表現が違いますが述べていることは同じです)。
個人的には7番目の既知から未知の流れはあまり意識できていなかったことなので覚えておきたいと思いました。既知の情報から説明していくことで論理の飛躍を防止できるというのも確かにそのとおりだと思います。
蛇足的なメモ
このところ文章術系の書籍を読み漁っています。自分自身がスキルを高める目的もありますが、一番大きな理由はチームのマネジメントにおいても重要だと感じているからです。エンジニアの仕事はこの10年ほどで文章を使ったコミュニケーションが格段に増えていると思います。最近ではチャットツールを導入している現場が多いと思いますし、GitHubのIssueやプルリクを書いたりするのも文章を使ったコミュニケーションです。文章を書く機会が増えている一方で、その書き方を学ぶ機会はほとんどありません。私自身、社会人になってから、分かりづらい文章や誤解を招くような表現をスポット的に指導された経験はあるものの、基礎からきっちりと教えてもらった経験はありません。良い文章の書き方を仕事の中で経験的に学んで身につけていくことはもちろん良いことですが、基礎をきっちり学べるに越したことはありません。文章によるコミュニケーションが増えているということは個人の文章スキルがチームのパフォーマンスに影響するということなので、チームのベースとなるような基礎テキストを決められるといいなと思って色々と読み漁っている次第です。