radioc@?

レディオキャットハテナ

【読書メモ】職場が生きる 人が育つ「経験学習」入門

「経験学習」入門

「経験学習」入門

タイトルからわかるようにどちらかというとチームの学習や成長のためにマネジメント視点で読んだ本ですが、個人の学習や成長のためにも役立つ内容だと思いました。人が経験から学び成長していくために、どう考えて、どういう行動に移していくべきか、ヒントを与えてくれる書籍です。

経験学習

アメリカの組織行動学者であるデビット・コルブが体系化した「経験学習モデル」が由来となっています。

f:id:radiocat:20190525163550p:plain

図:コルブの経験学習モデル

コルブ氏によると人は4段階の経験を繰り返すことで学習していくとしています。本書ではこれらの4段階をわかりやすくするため次のように説明しています。

  • 能動的実験
    • 新しい状況に適用する
  • 具体的経験
    • 具体的経験をする
  • 省察的観察
    • 内省する
  • 抽象的概念化
    • 教訓を引き出す

経験から学ぶ力のモデル

著者は経験から学ぶ力のことを次のように表現しています。

適切な「思い」と「つながり」を大切にし、「挑戦し、振り返り、楽しみながら」仕事をするとき、経験から多くのことを学ぶことができる

f:id:radiocat:20190525163617p:plain
経験から学ぶ力のモデル

ストレッチ

まずは能動的実験、具体的経験をするためにストレッチが重要です。つまり適度に挑戦できる課題に取り組むということです。そのための方略として次の3つをあげています。

  1. 挑戦するための土台を作る
  2. 周囲の信頼を得てストレッチ経験を呼び込む
  3. できることをテコにして挑戦を広げる

ストレッチの必要性の説明として「ノウイング(Knowing)」というキーワードが紹介されています。ノウイングとは「知識は他者の知識や書物から移転されるものではない」として、それらを道具として自身で新たに生み出す行為のことです。自分で考えて知を生み出すためにストレッチが重要なのです。

※「ノウイング(Knowing)」に関する参考

hrd.php.co.jp

リフレクション

リフレクションとは内省のことです。方略は次の3つと述べています。

  1. 行為の中で内省する
  2. 他者からフィードバックを求める
  3. 批判にオープンになり未来につなげる

ここでは「内省的実践」というキーワードについて述べています。

仕事や問題の本質を考えながら、自分の行為を振り返り、自分の持論やノウハウを問い直すこと

これは反省的実践などとも呼ばれ、ドナルド・ショーン氏による組織学理論のひとつです。

ja.wikipedia.org

エンジョイメント

最後に重要なのが「楽しむ」ということです。経験学習モデルをなぞるだけの修行のような作業だとつらいものになりがちなので次の3つの方略で楽しむことも重要であるとしています。

  1. 集中し、面白さの兆候を見逃さない
  2. 仕事の背景を考え、意味を見いだす
  3. 達観して、後から来る喜びを待つ

ここでは「内発的動機づけ」や「フロー理論」というキーワードが出てきます。これらは 過去の読書メモにもあるモチベーションに関するもの で、昨今様々なところで出てくる言葉なので割愛します。

思いとつながり

経験学習による成長をドライブさせる重要な要素として「思い」と「つながり」をあげています。「思い」は自分と他者の両方の思いがあり、それがストレッチ、リフレクション、エンジョイメントを高めるとしています。自分だけでなく他者も含めている理由としてプロフェッショナリズム研究について触れています。

プロフェッショナリズム

高度な知識やスキルを持つと同時に、社会や他者に奉仕する気持ちを持っていることが、プロフェッショナルの条件

最後に、「思い」を持続的に発展させる重要な要素として「つながり」をあげています。自分や他者への思いをつなぐものを「発達的ネットワーク」とし、勉強会などの職場外のつながりをつくることが重要であるとしています。

学ぶ力を育てるOJT

後半の2章で具体的な指導法や実践的なツールが紹介されています。上記の内容に興味を持って実践に繋げたいならば、ここはぜひ書籍を読むべきと思いますので割愛します。ダイヤモンド・オンラインで著者自身がいくつか紹介している記事があるので参考にすると良いでしょう。

diamond.jp