【読書メモ】ソフトウェア・ファースト
ソフトウェア・ファースト あらゆるビジネスを一変させる最強戦略
- 作者: 及川卓也
- 出版社/メーカー: 日経BP
- 発売日: 2019/10/10
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
巷で話題ということで、またしても読書キューを順番抜かしして読みました。 タイトルがキャッチーで、ソフトウェア開発に関わる人からすると技術面に関する期待の高まるテーマのように感じられますが、タイトルや著者の経歴のイメージで、明日から使えるエンジニアリングの手法やマインドに関する本だと期待して読むと少し戸惑うかもしれません。メイン・ターゲットとしているのはIT以外の企業でITに関わったり取り入れようとしている経営者やマネジメント層だと思います。もちろんそれ以外の、会社や組織をソフトウェア・ファーストにしたいと強く思っている人は読むべき本です。
ソフトウェア・ファースト
タイトルに込められたテーマについて著者は次のように説明しています。
(前略)これまでに説明したプロダクト開発の手法は、ソフトウェアの価値を理解した上でプロダクト/事業開発を前に進めていくための一部にしか過ぎません。また、これらも日々変化しています。必要なのは、手法の理解ではなく、思想や姿勢です。これが本書のタイトルにもなっているソフトウェア・ファーストです。
具体的なソフトウェア開発の手法よりも、背後に押さえておくべき思想や姿勢を理解し、その価値観をベースにキャリアパスの構築、組織運営、企業経営をしていく。その取り組み方がこの本のテーマです。
ソフトウェア・ファーストで最も大事なことは、変化しないものを理解することです。ソフトウェア技術は日々進化します。ソフトウェアを活用したビジネスモデルも変化し続けます。変わらないものーーそれはビジョンやミッションであり、それに関連する社会課題や価値観です。目指す世界観に対して、ソフトウェアという変化し続ける手段を用いる人間に必要なのは、成し遂げようとする執念であり、成し遂げるために考えること、考え続けることです。
これを理解して読めば経営者やマネジメント層だけでなく、現場のリーダー、エンジニアにとっても明日から引退するまで使えるソフトウェア・ファーストの価値観を理解し、実践することができると思います。
ソフトウェア・ファーストなキャリアを築くには
エンジニア的には5章に書かれているこのテーマが最も参考になります。これは、著者自身が別の場でも語られている内容です。
www.slideshare.net
計画的偶発性理論
ソフトウェア・ファーストのキャリアを構築するための個人の重要な特性として、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授による理論が紹介されています。
慎重に立てた計画以上に予想外の出来事や偶然の出来事がキャリアに影響を与える
とし、次のような行動特性が重視されます。
- 好奇心
- 持続性
- 柔軟性
- 楽観性
- 冒険心
クイズ
冒頭に10の質問が出てきます。これらの質問に対してソフトウェア・ファーストの価値観から答えるとどうなるか、本書を一通り読むことで答え合わせできます。
Q. あなたの会社を変えるため、取り組むべきことは次のうちどれでしょう? 1. とりあえずソフトウェアエンジニアを採用する 2. ソフトエンジニア採用のために破格の条件を提示する 3. ソフトウェアエンジニアのやりたいように開発させる 4. 新規事業のアイデアが出たらすぐにエンジニアが開発をスタートする 5. デザイン思考やリーン・スタートアップという方法論を取り入れる 6. アジャイル開発を実践する 7. 未知の技術を使って障害を起こしたくないので、枯れた技術をあえて用いる 8. 将来の拡張性や保守性を考え、マイクロサービスアーキテクチャを採用する 9. リファクタリングが必要とエンジニアに言われたので、3ヶ月間リファクタリングのための期間を設ける 10. できるだけ人間のオペレーションを排除する
参考
公式のブログページがnoteにあります。
著者自身が fukabori.fm にゲスト出演して本書の概要を一通り語られています。