【勉強会メモ】スクラム道関西 オープンジャム
- 日時:2020/01/27(月) 19:30 〜 21:30
- 場所:株式会社ラクス
数ヶ月ぶりに弊社にお招きしてのスクラム道関西です。月曜なのにたくさん来ていただいて、とても嬉しかったです(会場提供しただけですが)。
今回のテーマはこちらです。現場の実践的な課題感というか、面白そうなテーマが多いと感じました。
OST形式で3セット実施しました。
1on1の落としどころ
- 上司と部下以外に、メンバー同士でも実践
- 社員以外にパートナーさんなど
- マネージャが勝手にアサインしている
- ルールは特に無い場合と、会社からやり方の説明を受けている場合がある
- 頻度は毎週だったり不定期だったり
- テーマは特に決めず、自由に話す(世間話なども)
- 仕事で困っていること、目標管理の相談など
- 毎週1on1できる部下は5人まで
- 上司として指導することもある
- 本当に問題があれば上司間で連携
出てきた意見は順不同です。様々な形式があると改めて感じました。とにかく相談相手だったり関係性の構築を目的として場を設けることがメインのケースが多いように思います。なので、決まった形はなく何かあった時に助け合ったり行動に移せる関係性ができているかどうかが落としどころかと思いました。
POの学びかた
- ビジネス視点
- 数字に強い
- データ分析ができる
- 世の中、市場のことを知る
- 職種的には非エンジニアで、コンサル、マーケティング、Webディレクターなどが向いている
- WhatとWhyが大切
- プロダクトマネジメントトライアングル
- POをさらにPdMとPjMに分担
- より価値やプロダクトよりなのはPdM
- PBIの切り方やプロダクトがいつごろ完成するかの判断はPjMに任せる
- エンジニアがやる場合はエンジニアを捨てる覚悟がいる
- 営業や企画から急にPOをやるのも戸惑いはあるかもしれない
- サービスのマネジャーなどのキャリアパスに繋がるのでやりがいはある
エンジニアのチームがスクラムを始めたときにPOはどうやって学んでいくのかという主題でしたが、エンジニアとの両立は難しそうな雰囲気でした。ありえるとしたら、PdMとPjMに分担する事例に倣って事業寄りの人に協力してもらい分担することかもしれません。そんな人がいるのなら普通にその人にPOをやってもらうのがいいのでしょうけど…
言葉のカベをこえるチームビルド
- 文化の違い、前提の違い、その人の考え方の違いがある
- 歩み寄りは必要
- 違いをお互いに認識し合う
- お互い歩み寄る意識なく仕事を求めて日本に来ているだけの人もいるかも
- NGのルールを明確化して伝える
- 一緒にご飯を食べる
- たいていの人はカタコトの英語で最低限の意思は伝わる
- 国によって自己主張の強さが違う
- 自己紹介をし合う
日本人同士ではありえないような振る舞いを起こした事例もあったようで、全てを理解するのは難しいという印象でした。わりと変わった国の人と仕事をしているケースもあるようで、そもそもその国の文化がわからんというのもありそうです。ルールを明確化して言葉で伝えることも大切だとは思いますが、やはり一緒に仕事をする以上は自己紹介やご飯を食べるなどのお互いを理解し合うような場づくりというのが大事だと個人的には思います。
余談ですが、年末年始に読んだ『異文化理解力』を紹介しようかと思いましたが時間がなかったです。
【読書メモ】ロジカル・ライティング
社会人になって書くビジネス文書をうまく書くにはコツがあって、ある程度慣れも必要です。ところがほとんどの場合はそれを誰かに教わって覚えるというよりは経験によって身につけるケースが多いのではないでしょうか。私もそうやって身につけました。そのため、自分が経験で得たコツを後輩や部下に伝えるのは思ったより難しかったりします。
議事録を書けと言われたけどどうやって書けばいいのかわからない、後輩に議事録を書いてもらったけど思ったものとは違った、でも何から直してもらえば良いかうまく伝えられない、そういう時のために、本書のようなきちんと整理され、活用実績のある手法というのが役に立つと思います。ビジネススキルは一昔前のように有無を言わさずやってみて、経験から自分で学べという時代ではなくなってきているので、きちんと手法を理解してもらってから経験によって知識を深めてもらう必要があると思っています。
本書はわかりやすい文書の書き方とはどういうものかを説明したあと、たいていの社会人が書くことになる主な種類のビジネス文書について、種類ごとに書き方のコツが説明されています。新入社員には1人ずつに配って読んでもらいたいなと思える本でした。
わかりやすさ=論理性
ビジネス文書の要件は「わかりやすさ」であり、「わかりやすさ」に必要なものは「論理性」であると冒頭で述べられています。では、論理的な文書とはどういうものかというと、以下のように説明されいます。
メッセージやストーリーが筋道立っていて、構成が構造的である文書
反対に論理的ではない文書は以下のように説明されています。
話が見えなかったり飛躍したり、構成に全体観や関連性が見えないもの
ここは論理的ではない文書の説明から考えると理解しやすいのではないでしょうか。わかりにくいと感じる文書はたいてい、全体がぼんやりしていて読むとモヤッとしたり、内容が飛躍して理解が難しいことが多いと思います。
わかりやすいビジネス文書の3つの要素
上記をふまえて論理的なビジネス文書は3つの要素が重要であると言えます。
- メッセージ:主張と根拠
- ストーリー:話の展開
- 構成:話の全体像
相手を知る
本書ではわかりやすさのひとつとして、文書を読んでもらう相手を知ることの重要性が特に丁寧に説明されています。以下の説明がその理由のひとつです。
ビジネス文書はコミュニケーションの手段です。コミュニケーションの基本は相手目線です。
相手目線に着目しているところが本書の特徴であると私は感じました。たしかに著者の言う通りで、実際のところ私の経験でもわかりやすい文書であると感じる時は読み手に寄り添った視点や言葉で書かれていると感じます。
本書では「ターゲットプロファイル」や「SWAT分析」などマーケティングなどで使われる手法も使ってターゲットを知る方法が詳細に説明されています。
目的を明確にする
わかりやすく相手に伝えるためには目的が明確でなければなりません。そのために相手目線を意識して目標設定します。
- どんな行動をとってもらいたいのか(ゴール)
- そのために何を理解してもらいたいのか
- そのためにどのような状態にするべきか
ビジネス文書の書き方
本書では様々なビジネス文書の書き方を以下の4要素の構成で説明しています。
メッセージの構成
- マインド(基本的な考え方)
- フレームワーク(骨子)
- 情報収集
- ストーリー
上記のメッセージの構成に合わせて各文書の書き方を説明しています。
- 議事録
- 通達文書
- 報告文書
- 調査報告書
- 依頼文書
- ソリューション提案書
- 企画提案書
これだけの文書について書き方を知っていればたいていのビジネス文書に応用できます。
それぞれの文書の書き方について概要だけピックアップしておきます。
議事録
- 要件
- 決定事項が把握できる
- 論点と経緯がわかる
- スピード
- マインド
- コスト意識と責任感
- フレームワーク
- 基本情報
- 目的・ゴール
- 議事内容
- 決定事項
- 情報収集
- 事前準備
- 参加者の把握
- 前提知識の把握
- 合意事項の予測
- 会議中
- メモの取り方
- 事前準備
- ストーリー
- ①議題に対して、②どう議論が展開されたのかという流れ、③議題に対する結論、④結論に対して了解が得られたかどうか
告知文書
- 要件
- 伝えるべき事実にあいまいさがないこと
- 相手にとっての意味がわかること
- マインド
- 相手意識と立場意識
- フレームワーク
- 発信者・受信者
- 告知情報
- 詳細情報
- 情報収集
- 問い合わせや例外事項への対応方針まで決めておく
- ストーリー
- SWATやプロファイルをもとに検討
報告文書
示唆がない結果の羅列は意味がない
- 要件
- 責任がまっとうできているかどうかが理解できること
- その活動が続行か変更かという投資判断ができること
- 実績として自分のやったことを評価できること
- マインド
- 相手が自分に抱いている期待を認識し、それに答えようという意識
- 感謝の念
- フレームワーク
- 目的
- 成果・進捗
- 活動
- 総括
- 課題と予定
- 情報収集
- 「事実」と「所感」を混在させないように留意して情報を集める
- 事実だけではなく、自分というフィルターを通した判断が求められる
- ストーリー
- 成果や進捗状況サマリーなど結論を先に述べ、根拠となるデーターなど細部を並べていく分類型の展開
調査報告書
依頼文書
相手の立場にたつ
- 要件
- 相手が何を依頼されているのかがわかること
- 依頼されている理由が妥当であること
- 気持ちよく依頼を受けたいと思える配慮がされていること
- マインド
- おもてなしの心
- フレームワーク
- 依頼要約
- 依頼理由
- 依頼詳細
- ベネフィットまたはリスク
- 確認
- 情報収集
- フレームワークに従って情報を集め、相手からの想定質問を洗い出す
- ストーリー
- 礼を尽くし自分の気持ちを伝える
ソリューション提案書
相手の心を動かし意思決定させる
- 要件
- あるべき姿が描かれていること
- 問題が特定できていること
- 解決策に具体性と信頼性があること
- マインド
- 相手の情報をどれだけ引き出せるか
- 「視座」を高め、「視野」を広げる思考
- フレームワーク
- 現状とあるべき姿
- 解決すべき問題
- 実現イメージ
- 予想効果
- 進め方
- 信頼性
- 情報収集
- 3C
- ストーリー
- Why+What中心
- What+How中心
- 具体性と信頼性を訴求する
企画提案書
- 要件
- 記憶に残ること
- やってみたいと思わせること
- マインド
- ロジカルシンキングだけでは新たな方向性を見出すのは難しい
- ラテラルシンキング(水平思考)
- 前提を疑う
- 見方を変える
- 組み合わせる
- フレームワーク
- 企画全体像
- 企画概要
- 進め方
- 予想効果
- 想定リスクと対応策
- 情報収集
- 企画を魅力的に思わせるために、相手の感情に訴求する材料を集める
- 感情分類(ロバート・プルチック)
- ストーリー
- 4つの不のステージ
- 不信・不適
- 不要・不急
- 不経済
- 不安
- 新しい概念を図で示す
- 4つの不のステージ
参考
著者は経営・人材育成コンサルティング事業を経営する清水久三子氏で、他にも多数の書籍を出版されています。
【勉強会メモ】1on1を学びたいエンジニアのためのワークショップ
- 日時:2020/01/23(木) 19:00 〜 21:00
- 場所:Sansan株式会社 関西支店
久々の勉強会メモです。主にワークショップ形式だったうえ、スライドも公開されているためあまり参考にはならないと思いますが、メモを残しておきます。
ワークショップのほうはコーチング方式で、コーチ、クライアントと、オブザーバー(横で観察し、後でアドバイスする)の3人1組で5分間の1on1を3セット(3つの役割を交代して1まわり分)やりました。「相手に興味を持ち、話題を拡張する質問をする」というのを特に意識してやってみようということで、実際にやってみると様々な気づきがありました。いろいろな人が集まった勉強会ということで、テーマは自由でどんな仕事をしているか、とか今日はどういう目的で来たのかといった簡単な質問から入って、追加の質問で掘り下げていく流れでしたが、どんどん質問していくと意外な方向に話が向かって「こんな答えをするとは自分も思っていなかった」ということがありました。仕事で1on1をする時は何か成果を出そうと意識するあまり、逆に意外性を生むような掘り下げた質問ができていないのかもしれないと思いました。そういう意味で変に取り繕ったりすることのない純粋な探求心を持った「あり方」というのが大事なのだと感じました。
1on1のやり方とあり方
やり方
- 場・関係をつくる
- 悩みの大半は場作りをしないことからくる
- 安全な場と関係をつくる
その他トピック
- 特に話したいこと無い
- それでもあなたの話を聞きたいという気持ちで
- チェックインからはじめる
- 雑談で始めるのも気持ち悪い場合はテーマを決めてチェックインする
- おしながきをつくる
- 問いかけのリストを用意する
- あらかじめ考えてもらう
- ふせんに書いていく
- ふりかえりやすい
- 瞬発力は下がる
- タイマーを見えるところに置く
- 残り時間が気になるなら最初から置く
- 助けを借りる
- 1on1カードなど
- マンネリ防止
- 毎回成果を求めない
- 相手が変わる準備ができていないと変わらない
どうすればうまくなる?
- いろんなやり方を試す
- うまくいく方法は人によって違う
- 個性を使う
- 魔法のコトバはない
あり方
- やり方の情報はあふれている
- そういう行為を真似してもなかなか伝わらない
- 言葉だけではなく、見えるもの、感じるものから伝える
- スキルは行為ではない
- 相手に伝える影響に名前をつけたもの
あり方を感じるとき
- 暗黙的な「何か」
- 評価とか
- うそ、ごまかし、恐れ
- 隠しているつもりでも伝わってしまう
コーチングの考え方 人はもともと想像力と才知に溢れ、欠けるところのない存在である(NCRW)
好奇心を持ち、可能性を信じる
誰もがBeliefというメガネをかけている - Affares〜出来事 - Belief〜新年、認知、考え方 - Consequence〜気分、感情、感覚、行動
- 囚われ
- 言語化できないけど気持ちがざわつく
- 自己探求
- ”内なる声”に気づき暗黙的なBeliefを探求する
- 他者のフィードバックを受け入れる/取りに行く
- 自己管理
- 内なる声を横においていったん話を聴く
あり方は大切だが訓練も必要、やり方も大切
傾聴できているか?
- 意識の焦点はどこにあたっている?
- 今の自分が相手に与えている影響は?
傾聴のレベル
- 内的傾聴
- 集中的傾聴
- 全方位的傾聴
10分でできる傾聴の練習
- 話をする人、聞く人に分かれて3分間話をする
- 聞く態度
- 言葉選び
参考
ポッドキャストでも語られていました。
7. Engineering Management & Coaching by Sansan Tech Podcast | Free Listening on SoundCloud
【読書メモ】会社を強くする人材育成戦略
そろそろ次年度に向けて色々と考えていかないといけない時期ですが、育成の取り組みかたについて考える参考にしようと読んだのがこの本です。
本書は、人材育成について、企業の経営者や担当者が、全体のフレームワークや近年のトレンドを理解し、戦略や計画を立案する力をつける入門書です。
どちらかというと人事部門の視点で書かれているので厳密には畑違いの専門知識ですが、入門書ということで深く掘り下げるというよりは基礎的な知識が幅広く展開されており、組織マネジメント上で直面する人材育成においても参考にできる点が多かったです。現場としては専門知識よりも経験則に基づいてやっている面も多いので、科学的な研究や調査結果に基づくフレームワーク、近年のトレンドが紹介されている点は特に参考になります。
また、育成される側の視点でもこういった知識を知っておくと自分の成長のために取り組むうえで役立ちそうだと感じました。例えば若いうちからリーダーシップのレベルが高い人のほうが成果を出しやすく、成長力が高いことなども、研究によりそういう事がわかっていると知識的に説明されたほうが、単にリーダーシップは大事だと言われるよりも納得して取り組むことができます。
人材育成とは
人材育成について、著者は以下のように分類しています。本書で扱う人材育成はこれらの要素の中から語られています。
狭義の人材育成
広義の人材育成
- 報酬制度
- 目標管理制度(MBO)
- ジョブローテーション制度
- メンター制度
若手社員の人材育成
まずはそもそも採用が大事であることが述べられていますが、育成とは少し主旨が異なるので割愛。その次のステップについて、若手社員の社会化について述べられています。
心理的契約
個人と組織の間の暗黙の相互期待のことを「心理的契約」と言うようです。
以下のような状態をつくりあげることが重要です。
- 個人の役割や職務を明確に理解する
- この仕事をやっていけるという自信が芽生えてくる
- 職務態度が安定し、組織に貢献しようという姿勢が明確に見える⇒早期離職に至る危険を回避
次のステップとして最初の3年間の重要性についても述べられています。ひとり立ちまでにかかる時間の調査結果によると、概ね3年、職種によっては長くて5年という結果が出ているようです。我々エンジニアは技術系なので5年程度かかるということになります。
- 平均3.4年、3年以内の累計で62.3%、4年以内の累計で70.3%
- 一般に事務系よりも技術系のほうが長い、5年程度かかる
「ミドルの自己学習」という論文では、最初の3年間の仕事の内容が、その後の成長に影響を与えることが示唆されているようです。
3年間の仕事において「楽だった」「忙しくなかった」という人はミドルになって学習行動をとらない
これは組織マネジメントの視点でも、新卒から入社3年までの育成方針に影響を与えそうな興味深い内容です。
また、リーダーシップの育成についても興味深い説明があります。リーダーシップ開発には時間がかかることから、新人段階から取り組むべきと述べられています。リーダーシップ開発として、次の3つの段階が紹介されています。
リーダーシップ開発
- パートナーシップ
- フォロワーシップ
- ボスマネジメント
いきなりリーダーシップというのも難しいので、まずパートナーシップから取り組みます。パートナーシップとは、以下のように説明されています。「信頼と対等」が重要な要素です。
一緒に仕事をする仲間と、信頼感に基づく、対等な関係を構築すること
ジョブローテーションの6つの効果
若手から中堅社員へ成長するにあたって、取り入れる人材育成戦略の1つがジョブローテーションです。次の6つの効果があるとまとめられています。
- 知的熟練の加速
- 一人前のプロをつくるには、経験させておきたい職務がいくつかある
- 仕事の俯瞰的理解・客観化
- 異なる事業、異なる職務を経験することで、全社全体を理解する
- リーダーシップの開発
- どのようなリーダーシップを発揮すれば成果があがるのかは、状況によって異なる
- 社内ネットワークの開拓
- 社内の人脈開拓
- 学習の促進
- 嫌でも新たに学習しなければならない
- 学習習慣が身についていない人でも、切羽詰まった状況に追い込まれて、学習をはじめる
- 適応力の向上
- 新しい環境に適応する訓練になる
OJT
経営幹部となってリーダーシップを発揮している人に「どのような出来事が役に立ったか」尋ねた調査では、「経験が7割、薫陶(関係からの学び)2割、研修1割」との回答だったようです。つまり現場での経験=OJTが最も役に立ったということです。
厚生労働省の能力開発基本調査(2012年度)を引用し、次のようにOJTに力を入れて取り組んでいる動向が紹介されています。
ワークプレイス・ラーニング
ワークプレイス・ラーニングとは、仕事現場での時間のなかにシステム化されたOff-JTを組み込んでしまう人材育成手法で、OJTの新しい波であると紹介されています。
顧客が人材育成に果たす役割
「成長を実感している人は、営業などの顧客接点を持つ人により多く、内勤のスタッフとして働くひとには少ない傾向がある」と述べられています。つまり顧客との接点を持つことが人材育成に繋がることが示唆されています。そして、顧客との直接的な接点が無い場合であっても、顧客を意識しているかどうかで成長実感に違いがあるようです。
「社外に顧客はいないが、社内のユーザーを顧客と思っている人」と「思っていない人」を比べると、前者のほうが成長実感を持っている人の比率が明らかに高い
「人が育つ組織」をつくるということ
「21正規のキャリアを考える研究会」研究報告書 という資料が紹介され、次のように述べています。
理想的な社員像を定義し、育成すべきスキル・能力や態度について具体的な言葉で表現しているが、それらを大胆に分類してゆくと最終的には「リーダーシップ」と「専門性」という2つの軸に収束してゆく
つまり、人材育成は大局的には「リーダーシップ」と「専門性」という2つの軸に収束されます。この2軸について次のような傾向が紹介されています。
- ミドル期(主に40代の社員)は伸びが小さくなる
- 個人差があるが、どちらかが高くてもう片方が低いままだと成長は次第に鈍化していく
- もう一方の伸びを必要とするという関係と、片方が伸びるともう一方の伸びを促す
- 個人のリーダーシップと専門性のレベルを「見える化」して、現在どちらの伸びが課題になっているかをチェックする必要がある
つまり40代を迎えるまでに、2軸のそれぞれを伸ばすように取り組むことが重要です。ある程度の専門性を得られたら、それを活かしたリーダー的な役割を担うなど、2軸を交互に注力するような戦略も良いかもしれません。
また、キャリア観を6つに分類した調査では、30〜40歳前後でもっとも成長しているのは「オンリーワンプロフェッショナル」タイプであると説明されており、このタイプは「50代にかけても高い成長力を持続し、最終的にもっとも高い水準に到達できる」としています。一方、「競争型ジェネラリスト」は40〜50歳では極端に低い成長度合いになっていると述べられており、このタイプは40代より前までにマネジメント層へ引き上げるか、別のタイプへ転換を促すようにマネジメントしていくのが良いかもしれません。
ローカルとコスモポリタン
キャリア志向についての2つの志向の違いが紹介されています。
- ローカル
- 所属組織へのロイヤリティが高く、組織固有の価値やモック表を内面化して、組織内での昇進に関心を寄せているが、技術へのコミットメントは弱い
- コスモポリタン
- 所属組織へのロイヤリティは低いが、専門技術へのコミットメントが高く、専門技術が媒介する準拠集団を所属組織以外に持つ
しかし、どちらかに偏るのが良いというわけではないようです。
実際には好業績の社員ほど、ローカルでもあり、コスモポリタンでもあることがわかっている
最終的に成果を出すにはローカルであり、コスモポリタンでもある人材になっていくことが求められています。
【読書メモ】ファシリテーション 実践から学ぶスキルとこころ
ファシリテーションのことを理解する目的で直前に読んだ本と合わせて読んだ書籍です。本書のほうが5人の共著ということもあり、著者らの実体験に基づいた生の声に近いものがそのまま文章として表現されています。当たり前ではありますが、直前に読んだ書籍とも表現する言葉は違えど共通する点が多々あると感じました。
他の書籍とも共通している基本的な部分をまとめた後、この本で特に強調されていると感じた「実践から学ぶスキル」と「こころ」と表現されている部分についてまとめておきます。
ファシリテーションの基本
「ファシリテーションは誰かが何かをするのを容易にしたり、促進するために使われる」と説明されています。他の書籍ともほぼ同じ説明です。
3つの基本
ファシリテーションの基本スキルは「空間デザイン」「グループサイズ」「板書」の3つであると述べています。
空間デザイン
空間デザインとは、どのような場を設けるか、席や机をどのように配置するかということです。席の配置については以下のような型が紹介されています。
- スクール型⇒教室のような慣れ親しんだ形
- ロの字型⇒お互い向き合う、対立関係になりやすい面もある
- 多角形型⇒ロの字型を少し変形するだけで全く違う空間になる
- アイランド型⇒グループ作業によく使われる
- アイランド・ハの字型⇒角度を変えることでファシリテーターへの注目度が高まる
- シアター型⇒スクール型の机なし版、前に立つ人に意識が向く
- 扇形⇒シアター型よりも全体のまとまり感
- サークル型⇒中心から等距離で始まりや終わりがない
グループサイズ
グループサイズとは参加者を複数のグループへ分けて議論や作業を行うスキルのことです。「確実にその場を変える」重要なスキルであるとしています。グループサイズの選び方によってメリット・デメリットがあり、その後の場の流れに影響します。
- 大人数だと話しにくいが意見のバリエーションが多くなる
- 少人数だとじっくり話せるが意見のバリエーションが少なくなる
議論が加熱した状態をクールダウンする時にも使えると述べられています。
板書
発言の内容を見える化することであり、ホワイトボード以外に模造紙、ポストイットなどのツールを使います。発言をあえて板書することで、次のようなメリットがあると述べられています。
「誰の発言か」よりも「どんな発言か」という発言内容そのものに注意が向く
書くスピードが会話のスピードを制限してしまうデメリットもありますが、発言を整理し、議論の展開の拠り所となる点ではデメリットをしのぐものがあるとされています。
4つのステージ
ファシリテーションは「共有〜拡散〜収束〜共有」の4つのステージで構成されると述べています。
- 共有
- 様々な情報や目的・ゴール設定などを共有し、参加と相互作用の根底を作る段階
- 拡散
- 自由な発想でアイデアを広げ、多様な可能性をふくらませる段階
- 収束
- 具体的な成果に向かって意見を集約し、まとめていく段階
- 共有
- 今までの成果を確認し、次に向けてのステップを明確にする段階
共有のスキルとして「OARR(オール)」が紹介されています。
- OUTCOME(アウトカム):求める成果、生み出したい成果、ゴール設定、終わったときのメンバーの状態
- AGENDA(アジェンダ):新講師台、討議項目とタイムテーブル
- ROLE(ロール):メンバーそれぞれの役割や心構え
- RULE(ルール):メンバー間のルールや、この場での約束事
※参考: OARR(オール) - 人材開発用語集 │ ダイヤモンド社の適性検査・社員教育・研修サービス
クリエイティブカオス
「クリエイティブカオス」とは「創造的混沌」とも言われる、創造的な成果を生み出すためには、なくてはならない重要な流れの一部であり、ファシリテーションの流れの中で通り抜けるべき難関であると述べられています。具体的には次のような場面のことを言います。
良いところまで来ているのに決定だが出ない、アイデアは拡がったがどれも納得できない、ああでもないこうでもないと意見が飛び交う
前出のファシリテーションの拡散から収束に向かう流れの中では大小様々なクリエイティブカオスが起きるとされています。大切なのはクリエイティブカオスを防ぐことではなく、その存在を知り、あわてずチャンスとして活用することであると述べています。
実践から学ぶスキル
ファシリテーションの向上
ファシリテーションを向上させるために重要なものとして次の2つが挙げられています。
コンテンツとプロセス
コンテンツは発言の内容、プロセスはそれ以外の発言者の態度、周囲の反応、空気などのことです。コンテンツの理解があって初めてORRAや本質的な問いができるようになります。また、プロセスをうまく扱うためにグループサイズ、空間のデザインなどを使います。コンテンツとプロセスの両方に注目し、場を読んで質問に活かすことが重要としています。
信頼を築く
ファシリテーションをするにあたって、ファシリテーターが信頼を築くことがまず前提として重要であると述べられています。ファシリテーターの信頼がなければ場の空気は悪くなり、議論へのモチベーションが下がってしまいます。そのため、言行不一致などを避けて、全ての意見に対して対等に接し、謙虚にふるまうことが求められます。
参加と相互作用
参加と相互作用を意識することも重要です。
- 参加とは意味を共有すること
- 相互作用とはお互いが影響を与え合い、それぞれが影響を受けて考えや行動に変化が起きること
その場にいるだけで心ここにあらずでは参加とは言えません。またそれぞれが言いたいことを言うだけの平行線であったり、逆に本音を言えていない状態では相互作用は起きません。この2つは単純で当たり前な事ではありますが、ファシリテーションに対する深い意味を持っていると思いました。
ファシリテーションのこころ
「こころ」とはファシリテーターとしての心得とも言い換えられます。それはの3つの「根っこ」であると表現されており、「メタスキル」「事前の準備」「志」で構成されます。ただし、あくまで大切なのは参加者の意思やそこから出てくる答えであり、ファシリテーターはそれを支援する立場であるという前提は忘れてはいけません。とはいえ、ファシリテーターもひとりの人間であり、これら3つに対する姿勢が場や参加者に影響を与えると述べられています。ファシリテーターという中立的な立場であるからこそ、極めようとすればするほどスキルよりもベースとなるこころが重要になってくるということだと思います。
- メタスキル
- 事前の準備
- プログラムデザイン
- 目標・ゴールを中心にデザイン
- 対象者の理解
- どういう人が何人、どんな思いや期待で参加するのか
- 場のデザイン
- どのような空間のどのような配置で集うのか
- プログラムデザイン
- 志