radioc@?

レディオキャットハテナ

【読書メモ】論理が伝わる世界標準の「書く技術」

論理が伝わる 世界標準の「書く技術」 (ブルーバックス)

論理が伝わる 世界標準の「書く技術」 (ブルーバックス)

本書は「パラグラフ・ライティング」という手法による文章の書き方の入門書です。7つのルールに従って文章をまとめることで論理的で読みやすい文章を書くことができます。著者自身が書籍について解説した記事で概要を知ることができます。

gendai.ismedia.jp

また、この書籍の元となっているパラグラフなどのキーワードは著者が運営するサイトでも解説されています。

www.logicalskill.co.jp

本書自体がパラグラフ・ライティングによって書かれており、読みやすく、良い文章を書くための例題も多く紹介されており、基礎スキルを身につけるテキストとしてもちょうど良いので、チームに入ってくる新卒社員の文章スキルを身につけるためのテキストにしようかと思っています。入社1年目の社員には毎日業務を振り返って日報を書いてもらっているので、テキストで知識を身に着けて、日々の日報でそれを実践していけば1年後には文章によるコミュニケーションで十分なパフォーマンスを出し、エンジニア本来の技術的なスキル習得に集中していけると思います。

パラグラフとは

パラグラフとは、1つのトピックを説明した分の集まりのことです。

類似した文章の単位としての「段落」は単に文章の区切りをつける単位であるのに対して、パラグラフは必ず1つのトピックの情報で構成されます。つまり、パラグラフ・ライティングで書いたときの「段落」は1つ以上のパラグラフで構成されます。

欧米ではパラグラフを使った文章の書き方を学校で学ぶことから、パラグラフ・ライティングは世界標準の書き方であると著者は述べています。また、パラグラフで書かれた文章は以下のような優れた文章になると、著者のサイトでも述べられています。

  1. 必要な情報/不要な情報の判断が容易
  2. 重要な情報の読み落としがない
  3. 速読が可能
  4. 内容の理解が容易
  5. 筆者の考えの流れの把握が容易

www.logicalskill.co.jp

メンタルモデル

パラグラフ・ライティングの中で著者が紹介しているもう1つの重要なキーワードがメンタルモデルです。

メンタルモデルとは、人が頭の中で作る、自分なりの理解の世界です。

Wikipediaには「頭の中にある「ああなったらこうなる」といった「行動のイメージ」を表現したもの」とあります。

ja.wikipedia.org

やや心理学的な知識が持ち込まれていますが、私が読み漁った限り、どの文章術の本にも似たようなことが書いてあります。文章スキルとは別物だと思われがちですが、文章を伝える相手の頭の中をイメージすることは、実は文章スキル以前に身に着けておくべき基礎スキルと言えます。著者のサイトでも全てはここからであると書かれています。

www.logicalskill.co.jp

パラグラフで書くための7つのルール

本書ではパラグラフ・ライティングの手法として7つのルールが紹介されています。書籍で紹介されている文章の例題でもこのルールに従い解説されています。

  1. 総論のパラグラフで始める
  2. 1つのトピックだけを述べる
  3. 要約文で始める
  4. 補足情報で補強する
  5. パラグラフを接続する
  6. パラグラフを揃えて表現する
  7. 既知から未知の流れでつなぐ

著者のサイトでも紹介されているので、詳しくは以下参照(本書の内容とはやや表現が違いますが述べていることは同じです)。

www.logicalskill.co.jp

個人的には7番目の既知から未知の流れはあまり意識できていなかったことなので覚えておきたいと思いました。既知の情報から説明していくことで論理の飛躍を防止できるというのも確かにそのとおりだと思います。


蛇足的なメモ

このところ文章術系の書籍を読み漁っています。自分自身がスキルを高める目的もありますが、一番大きな理由はチームのマネジメントにおいても重要だと感じているからです。エンジニアの仕事はこの10年ほどで文章を使ったコミュニケーションが格段に増えていると思います。最近ではチャットツールを導入している現場が多いと思いますし、GitHubのIssueやプルリクを書いたりするのも文章を使ったコミュニケーションです。文章を書く機会が増えている一方で、その書き方を学ぶ機会はほとんどありません。私自身、社会人になってから、分かりづらい文章や誤解を招くような表現をスポット的に指導された経験はあるものの、基礎からきっちりと教えてもらった経験はありません。良い文章の書き方を仕事の中で経験的に学んで身につけていくことはもちろん良いことですが、基礎をきっちり学べるに越したことはありません。文章によるコミュニケーションが増えているということは個人の文章スキルがチームのパフォーマンスに影響するということなので、チームのベースとなるような基礎テキストを決められるといいなと思って色々と読み漁っている次第です。

【読書メモ】するどい「質問力」

するどい「質問力」! 図解問題を1秒で解決する

するどい「質問力」! 図解問題を1秒で解決する

『「いい質問」が人を動かす』の著者による実践編的書籍です。いい質問を具体的な行動に結びつけるための実践的な内容なので前著を読んでから読むのがベストだとは思いますが、特にそれを推奨しているわけではなく、実際読んでみると本書だけでも十分理解できるし実践もしやすい内容だと思いました。こちらを先に読んで、より深い知識を得たい場合は前著という順番でも良いかもしれません。前著の読書メモについては下記参照。

radiocat.hatenablog.com

テクニック的な内容もたくさん書いてありますが、今回は次の1点についてまとめます。これは基本姿勢として大切だと改めて感じました。

まず必要なのは「関心」と「好意」

質問のテクニックを使う前にまず相手への「関心」と「好意」を持つこととし、そうでなければテクニックも活かされないと述べています。確かに、先日私が参加した1on1の勉強会でもやり方のテクニックよりも相手に関心を持って質問することがワークショップで重視されていました。コーチングなどで良く言われるラポールや傾聴も関心と好意がベースの考え方だと理解しています。

ロバート・B・チャルディーニ

その説明として心理学者のチャルディーニが引用されています。

en.wikipedia.org

チャルディーニが書いた、人の行動に与える影響力について述べた『影響力の武器』という著名な書籍は、現在のマーケティングに多大な影響を与えています。この書籍で述べられている6種類の影響力の武器の1つが「好意」です。チャルディーニは次のように述べています。

人は好意を抱いている知人からの依頼には「イエス」と言いやすい

このことから、質問も同じで好意を持った人の質問は答えてもらいやすいと著者は述べています。確かに、私が今まで接してきた人を思い出してみても、質問がうまい人は好意的に接してきて自分が興味を持ったこと、知りたいことを上手に聞き出している印象を持っています。

好意を獲得する5つの方法

チャルディーニの理論を踏まえ、好意を獲得する方法として5つの要素を取り上げています。

  • 外見の魅力
    • 身だしなみ、清潔感など
  • 類似性
    • 出身地や出身校が同じだと親近感も持つように、類似性があることで好きになる
  • 賞賛
    • 褒められた人を好きになる
  • 単純接触効果
    • 毎日顔を合わせる人に親近感を持つように、繰り返し接触することで好きになる
  • 連合
    • 好きなタレントがCMに出演するとその商品を好きになるように、好きなものと結びつけて好きになる

これら5つの要素を意識すれば必ず相手に関心を示す必要があります。誰でも自分が好意を持つ人を意識して外見を整えたり、類似性を探したり、賞賛したりします。そうやって好意を持つ相手に近づこうとすれば、関心を持たざるを得ません。そう考えると関心と好意を持たずに相手から答えを引き出す良い質問ができないというのも納得できます。

返報性の法則

良い質問に答えてもらうテクニックとして返報性の法則が紹介されています。

ja.wikipedia.org

相手から受け取った分をお返ししようと考える心理現象です。

人は自分の話を十分に聞いてくれたお返しをしたくなるもの

自分の話に対して関心を持って聞いてくれるなと感じてもらえれば、その後こちらからした質問にも丁寧に答えてもらえるだろうということです。この法則を踏まえると、いくら本質的な質問を準備していても、相手の話にしっかり関心を示せていなければ、お返しに質問へ答えようという返報性が生まれないので、著者の言うとおり「関心」と「好意」を持たなければ質問のテクニックも活かされないということになります。

仕事で話をしていて、どうも噛み合わない、質問に答えてもらっても腑に落ちない、こちらの意見もイマイチ伝わっていない、という時には、改めて相手への関心と好意が持てているかを自分自身に問いかけてみると良いかもしれません。

【読書メモ】マネジャーのための人材育成スキル

マネジャーのための人材育成スキル (日経文庫)

マネジャーのための人材育成スキル (日経文庫)

『会社を強くする人材育成戦略』という書籍の著者による姉妹書です。姉妹書のほうが組織論や経営視点で人材育成を捉えているのに対して、本書のほうがマネジャーが現場で実践するためのハンドブック的内容になっています。

マネジャーと人材育成

本書によるとマネジャーは「業務推進型マネジャー」と「人材育成型マネジャー」に分類され、人材育成型のほうが継続的に業績を高めていくことができると述べられています。

プロフェッショナルについては以下のように定義しています。

  1. 専門知識(わかる)…社会一般で通用する公式の知識、体系的に理解し、かつ説明できる
  2. 技術(できる)…実践的な技術、再現性がある
  3. プロ意識(プロフェッショナリズム)
    1. 自律と自己責任…やり方は自分で決める、その代わり責任を持つ
    2. 利他性…個人の満足と他者の利益のために最高品質を追求する
    3. 職業倫理…やるべきこととやってはならないことを明確に知り、厳格に守る
    4. 継続学習…常に最戦隊の専門知識を吸収し続ける向上心に終わりがない

プロフェッショナルを育てるには1万時間かかると言われています。そして、育つための条件としては、もともと才能があるかないかは関係なく、「ある一定の法則に則った経験を1万時間積み上げることができるかどうかということだけ」と述べられています。「一定の法則に則った経験」とは以下のような経験のことです。

  • 課題が適度に難しく明確であること
  • レベル設定が適度に高度であること
  • すぐに仕事の評価がわかること
  • 反省して再度挑戦する機会があること

これらは『「経験学習」入門』で言われているストレッチ、リフレクション、エンジョインメントの3つの要素とも共通しています。

radiocat.hatenablog.com

才能を操るとかの高度なテクニックは必要なく、これらの条件を満たし、途中で挫折することなく地道に継続したり、モチベーションをコントロールすることが一番大切ということです。改めてマネジメントの責任の大きさを感じます。

本書では人材の違いごとに育成の手法や考え方を述べています。後半では女性、同年代や年上、外国人など近年話題になりがちな多様な人材マネジメントについて書かれていますが、ここでは中盤までに書かれている育成ステージごとに述べられている部分についてピックアップします。一般的に知られている理論から、心理学などの専門的な研究結果なども紹介されており、ここで得た知識を足がかりに育成に取り組むのはもとより、さらに知識を深堀りしていくこともできると思います。

新人を預かる

新人に関しては次のように上司の役割がその後の成長に大きな影響を与えることが述べられています。

最初に就いた上司がいい上司だったか、そうでなかったか、またどのように仕事の仕方をする上司だったかによって、その人の生涯キャリアが大きく左右されてしまいます

また、OJTに関してはチーム全体で取り組む事例が多いことが述べられています。

新人のOJTがうまくいっている職場では、ひとりの指導員だけで新人の面倒を見るのではなくて、周囲の人々が協力して、多面的に指導している場合が多いようです

また、育成手法の1つとして「認知的師弟制」が紹介されています。次のような段階を踏む育成モデルです。

  1. 模範を示して、学習者はそれを見て真似をする(モデリング
  2. 手取り足取り指導して助言する(コーチング)
  3. できるところは独力でやらせてできないところだけ支援する(スキャフォールディング/足場づくり)
  4. 支援を少なくして自立に導く(フェイディング)

jinjibu.jp

コーチングの要素が入っているのが今風ではありますが、イメージ的には守破離に近い考え方だと思いました。「認知的師弟制」については様々な研究がされており、論文も公開されているようです。

若手を鍛える

ここで言う若手とは概ね20代の独り立ちしつつ中核的な業績を上げるためにさらなる飛躍が求められるステージの人材を対象としています。このステージで重要なのは「考える習慣を身に着けさせる」ことと、「強み弱みを伝える」ことです。育成手法としては一般的に紹介されているものがだいたい当てはまる印象です。

本書で紹介されているもので少し特徴的だったのは8つの枠でキャリアデザインをする「キャリア・マップ」と言われるものです。詳細は著者が書いた別の書籍『キャリアデザイン入門』で詳しく紹介されているようです。

中堅を伸ばす

「中堅」とは「30代を超えて中堅となる年代の部下」と述べられています。このステージでは上司ができることとして、3つに分けて述べられています。

  1. 背伸びしなければならない状態に追い込む
  2. 長期的なキャリア目標を設定させる
  3. 権限移譲して思い切って任せてみる

基礎を学び、自分で考えて成果を出せるようになった後、「自らの専門性を決断し、自分の仕事を自分で作り出せるように育成していく」というのがこのステージの育成です。

また、ここでは心理学からの引用で「自伝的記憶の自己機能」が紹介されています。自身のキャリアを振り返り、筋の通ったストーリーとして整理することで、「望ましい自己像」と「記憶の再構成」が行われます。

この会社に入社した動機から、現在に至るまでに記憶に残っている仕事のことなど、そこにある「筋」が存在するかのように話すのです。「望ましい自己像」の一貫性を維持するために、巧みな「記憶の再構成」が行われるわけです。

調べてみると自伝的記憶というのは様々な研究結果の論文が公開されているようです。

ja.wikipedia.org

参考

本書ではリクルートワークス研究所産業能率大学の研究結果や論文がよく引用されています。これらの情報はWeb上に公開されており、本書で引用された数年前の情報も随時アップデートされているので、常時参考にして役立てたいところです。

www.works-i.com

www.sanno.ac.jp

姉妹書である『会社を強くする人材育成戦略』については別途投稿しています。

radiocat.hatenablog.com

【読書メモ】シリコンバレー式 最強の育て方

シリコンバレー式 最強の育て方 ― 人材マネジメントの新しい常識 1 on1ミーティング―

シリコンバレー式 最強の育て方 ― 人材マネジメントの新しい常識 1 on1ミーティング―

  • 作者:世古詞一
  • 出版社/メーカー: かんき出版
  • 発売日: 2017/09/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

1on1に関する本です。タイトルが意図しているのは、1on1がシリコンバレーでは人材育成の手法として当たり前のように実践されているということのようです。人材育成というとやや仰々しい感じもしますが、私もマネジャーとして1on1を実践していて、学びや成長を支援したいという思いは上司と部下としての対話である以上は必ず生まれてきます。そういう意味で、本書が述べている1on1による「育て方」というのは、学ぶ意欲を引き出して成長を支援するための対話手法であると感じました。

著者の世古氏はVOYAGE GROUPの経営幹部として1on1を導入されており、コーチ・コンサルタントとして他にも上場企業やスポーツ選手の支援をされているようです。

servantcoach.jp

本書は前半は1on1の価値に関する知識的な解説、後半は実践に向けた解説で構成されています。1on1を行うにあたって上司としての現状を自己診断するためのマネージャ自己診断テスト、実践で活用する実践シートなども紹介されており、多くの実践から得たノウハウが詰め込まれています。ちなみに私は1on1の実践レベルは高度バランスタイプでしたが、部下との相互理解レベルはやや低めでした。本書の内容を実践してレベルを上げたいところです。

1on1は部下のための時間

冒頭では1on1について以下のように説明しています。

1on1ミーティング(以下1on1)とは、上司と部下による1対1の定期的な対話の時間です。一般的な面談との大きな違いは「これは部下のための時間」だということです。(中略)部下の気持ちがすっきりしたり、納得感を持ったり、次のチャレンジへ行動していこうとすることが最も重要なことです。

また、頻度については「最低でも月1回」、部下との関係構築ができていないうちは、「月2回を推奨」と述べられています。私も純粋な1on1としては月1回、MBOの状況確認も兼ねた形式で月にもう1回実践しています。後述の成長支援を考えた時に月に1回では情報を得るにしても、支援するにしても間隔が空きすぎるので、目標管理を主題とした1on1とテーマフリーの1on1を2週間おきに行うのがペース的にはちょうど良い間隔だと個人的には感じています。

1on1実践マップ

本書が紹介している1on1のスタイルは2つのステージと7つのテーマで構成されています。

信頼関係づくりステージ

  • 1 プライベート相互理解
  • 2 心身の健康チェック
  • 3 モチベーションアップ

成長支援ステージ

  • 4 業務・組織課題の改善
  • 5 目標設定/評価
  • 6 能力開発/キャリア支援
  • 7 戦略・方針の伝達

本書のテーマである育成に着目し、「成長支援ステージ」についてピックアップします。

緊急度が低く、重要度が高い領域を扱う

1on1は特に重要度は高いものの緊急度が低いテーマを扱います。理由は単純で、緊急度が高ければ部下はすぐに相談しますが、重要度が低い場合は相談しにくいためです。

言い方を変えると、1on1では数字や具体的案件の進捗管理などの目先の成果に関することは扱わないのです。

明確に課題定義できないものはなかなか相談しにくいものですが、そのような課題でも重要なものはあるので、それを拾い上げて一緒に考えることで成長にも繋がるということです。

目標設定も評価も本質は育成

目標管理制度は人事評価制度と併用しているケースが多く、公正・平等に評価する必要性もあるため慎重に扱ってしまうことも多いと思われるMBOですが、本来ドラッカーが提唱したMBOというのは組織マネジメントの理論であり評価制度とは違った目的を持ったものです。

ja.wikipedia.org

本書では「MGC目標作成法」という手法が紹介されています。MGCというのはMUST、GET、CANの頭文字を取ったものです。

  • MUST
    • 会社として行わなければならない目標
    • WHY:なぜこの目標なのか?
    • WHAT:目標は具体的に何か?そのために何を行うか?
  • GET
    • 目標の達成によって、自分のキャリアや人生に対して得られることをイメージする
    • 目標の達成が組織成果やメンバーにどのような影響をもたらすか?をリアルに想像する
  • CAN
    • 目標を達成できるという感覚

目標管理を評価を得るためのものだけでなく、自身にとって何が得られるかを考え、実際に達成できるものであるかを考えるように促します。また、著者は目標管理について次のようにも述べています。

評価制度は「理解する」のではなく「活用する」もの

目標管理を1on1でフォローすることで、本質である育成に活用することができると思いました。

能力開発とはすでにある能力を自覚させること

能力開発に関しては「コルブの経験学習モデル」が引用されています。これは「ヤフーの1on1」でも引用されていました。

radiocat.hatenablog.com

私も1on1の事前準備を行う時には経験学習モデルに従ってストレッチ、リフレクション、エンジョイメントの3つを意識してテーマを考えるようにしています。

radiocat.hatenablog.com

参考

著者の対談記事も合わせて読むと理解が深まります。

at-jinji.jp

【読書メモ】クレイジーで行こう!

シリコンバレーで水道管の劣化状況を予測するソフトウェアサービスを提供する「Fracta,Inc.(フラクタ)」を創業した加藤崇氏の3年間のベンチャー企業立ち上げの記録です。

www.fracta-jp.com

著者はヒト型ロボットのベンチャー企業であるSCHAFT(シャフト)を創業し、その後Googleに売却したことでも有名です。

500startups.jp

ベンチャービジネスの本ですが、事業会社で働く私にもたくさんの気づきや刺激を与えてくれる内容でした。特に、あとがきで著者が述べている以下の文章が気に入っています。

そう、僕は未来を予測する天才などではなく、現実を懸命に生きた凡人なのだ。これは大いなる凡人の物語だ。凡人であっても、仲間に恵まれ、志を失わなければ、社会にインパクトのあることを成し遂げることができる。

良いチームをつくること

全編通してこの本から学べることは「何かを成し遂げるには良いチームをつくること」であると感じました。そしてそれはベンチャーだとか最先端技術とかは関係なく大切なことであると実感できます。著者も次のように述べています。

技術だとか、営業だとか、テクニカルな問題というのは、結局は乗り越えられるもので、ただしそれを乗り越えるためには、良いチームに恵まれなければならないということだ。

そして、良いチームを支える才能と情熱にあふれた人たちはお金に代えられない希少価値であり、最大の敬意を払うべきであると述べています。

目覚ましいアイデア、才能を持った変わった人たち、その人たちの内側から溢れ出す情熱の集積、こうした非常にソフトなもの、ある種、移り気な才能の固まりのようなものが、経済の中でも非常に重要な役割を果たすようになってきていて、それは残念ながら希少価値を持っているために、世の中に溢れてしまったお金(資本)などよりもよほど重要で、こうした人たち(変わった人たちという希少資源)に対して無限大の尊敬を払うことができなければ、たちまちそっぽを向かれてしまうということになっている気がする。

才能と情熱ある人に敬意を持ち、良いチームで働くことが何より大切であるというのはHRTの原則の理念でもあり、まさにTeam Geekです。

employment.en-japan.com

巨大な資本を持つGoogleのエンジニアと、ベンチャー企業で戦う人たちが同じものを大切にしているということで、HRTの大切さを改めて認識できます。余談ですが、私のチームも 5S とHRTをバリューに設定しています。

正しい日本語を書くこと

もうひとつ、著者が重要だと述べているのが日本語の書き方です。

僕は、昔から自分の部下に対して、日本語の書き方についてうるさく言うことが多かった。何でも自由に見えるベンチャー企業にあっても、これは重要なことだ。なぜならスピードを重視するベンチャー企業経営だからこそ、コミュニケーションによる時間ロスは致命的だからだ。

確かに、良いチームはコミュニケーションの質も高いはずです。正しい言葉の使い方にこだわり、日々改善することが組織の力強い基礎になると著者は述べています。これは組織マネジメントの視点として参考にしたいです。

ベンチャービジネスルービックキューブに似ている

著者が偶然口にして自分で納得したというエピソードが出てきます。これは何となくイメージできて、納得できる部分があります。

ある種のパターンはあるが、最初からパターンにはめようとしすぎると、計算量が膨大になり、逆に解くのが遅くなってしまう。大切なのは、あと2,3手でパターンに落とし込めるところまでは、まずはひたすらクルクル回し続けていくこと、直感を信じつつ、実験的な行動を続け、すぐに諦めないこと、その中でまた新たなパターンを見つけていくことだろう。

しかしこれもベンチャービジネスに限らず言えることではないかと思います。型にはめようとしすぎるとスピード感を失ってうまくいかないのは多かれ少なかれビジネス全般について言えることだと思います。そして諦めずに「クルクル回し続ける」というのはコンパクトにPDCAを回し続けるということだと思います。これもビジネス全般に言えることです。弊社の リーダーシッププリンシプル にも「小さく試して大きく育てる」とあり、私も日頃から大切にしている事のひとつです。

参考

本書に関して著者がインタビューに答えている記事がいくつかあるので合わせて読むと理解が深まります。

www.sankeibiz.jp

goetheweb.jp

president.jp