【読書メモ】管理しない会社がうまくいくワケ
自分の小さな「箱」から脱出する方法 ビジネス篇 管理しない会社がうまくいくワケ
- 作者:アービンジャー・インスティチュート
- 発売日: 2017/08/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
『自分の小さな「箱」から脱出する方法』のビジネス編です。管理型マネジメントの限界を指摘し、自立型組織を目指すための価値と組織の一人ひとりが持つべきマインドセットについて書かれています。今回は「箱」という表現をあまり使っておらず説明もあまり出てこないので、深く理解したいなら前著と一緒に読むほうがお勧めです。前著の読書メモは下記参照。
とはいえ、「箱」という表現は本書では「内向き思考」として説明されているので前著を読まなくても内容は十分理解できます。
外向き思考(アウトワード・マインドセット)
本書の最も重要なテーマが「外向き思考」です。マインドセットを外向き思考に変えることで大きな変化が生まれると述べています。ポイントは「ものの見方」「他者との関係性」「他者に対する責任のとり方」の3つを根本的に変化させることです。
「物」が「人」 に変わるとき、イノベーションが起こる
自分だけに焦点を合わせて行動するとき、人は周囲のすべてを「物」として見ています。これが「内向き思考」です。このマインドセットを、周囲の人たちの「ニーズや目的に関心をもつ」ように変え、そのニーズや目的のために役立つように行動を変えていくのが「外向き思考」です。書籍の中では、内向き思考で行き詰まった企業やNBAのチームが外向き思考に変わることで大きな成果を達成した事例がいくつか紹介されています。
外向き思考の3つのパターン
外向き思考に変わるために、次の3つのパターンが紹介されています。
- 相手のニーズ、目的、課題にしっかり目を向ける
- 人の役に立つように適切に努力する
- 自分の仕事が相手に与えた結果を理解し、それについて責任を負う
人がなかなか外向き思考になれない理由は「自分自身」にあります。「他者を理解すること」から目を背けることは、その人の人生を悩ましいものにする最大の要因となり、個人的にも社会的にも大きな代償を払うことになると述べています。自立型組織とは一人ひとりが3つのパターンで行動するマインドセットを持っている組織と言えます。
マネジメントの役割
ここで、かの有名なドラッカーのマネジメントを振り返ってみると、マネジメントは以下の3つの役割があると述べられています。
- 自らの組織に特有の使命を果たす
- 仕事を通じて働く人たちを生かす
- 自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献する
改めてこの3つの役割の意味を考えてみると、(特に2つ目と3つ目では)マネジメントの役割としても外向き思考が求められていることを読み取ることができます。
また、弊社のマネジメント層が持つべきマインドセットとして定義されている リーダーシッププリンシプル を改めて読んでみても「外向き思考」の要素が随所に込められているのがわかります。
つまり、マネジメント視点で読み解くと「外向き思考」はマネジメントスタイルに関係なく必要なマインドセットだと言えます。
自立型組織のマネジメントとは
では、管理型マネジメントと自立型組織のマネジメントの違いは何か?について考えてみます。本書では従来の管理型マネジメントは行動を管理するものと捉えていますが、それだけでなく一人ひとりのマインドセットにも目を向けて組織的にアプローチすることで大きな成果が得られると述べられています。
マインドセットを変えようとした組織は、行動の変化だけにアプローチした組織よりも4倍も成功する率が高い
まずは組織のリーダーがマネジメントの役割の一部である「外向き思考」をしっかり行動で示し、組織の一人ひとりが同じマインドセットを持って行動できるように支援していくことが自立型組織のマネジメントと言えます。そう考えるとコーチングや1on1も外向き思考の支援活動の1つであり、 0秒リーダーシップ や スタンフォード式最高のリーダーシップ は外向き思考を含む行動スタイルであるように思えます。
まとめると、本書のタイトルにある「管理しない会社」の意味するものは「自立型組織に変えていくこと」であると想像できますが、さらに紐解いてタイトルを言い換えるなら「行動を管理しないでマインドセットの変化を支援する会社がうまくいく」ということだと言えるでしょう。
【読書メモ】ロジカル・ライティング
本書はロジカル・シンキングを意識してロジカルな文章作成を行うための手法をまとめたものです。ロジカル・シンキングを意識するとはどういうことかというと、ロジカル・シンキングの基本であるMECEとSo What?/Why So?を使い、ピラミッド構造で論理をまとめることです。著者によるロジカル・シンキングの本もあるので、これらの基本要素はそちらに詳しく書いてあるものと思われます(未読のため想像)。
ベースはMECEとSo What?/Why So?
あまり深く解説する必要はないと思いますが、ロジカル・シンキングの基本は次の2つの要素です。
以下のように探せば参考サイトがたくさんみつかります。
論理をピラミッド構造でまとめる
MECEとSo What?/Why So?をどう使うかというと、ピラミッド構造になるように論理をまとめます。
論理とは、問いへの答えを構成する結論と複数の根拠を、縦と横の2つの法則性で構造化したものであり、3つの要件を満たす。
So What?/Why So?の流れでだから何で、なぜそうなのかを説明し、説明の根拠がMECEの関係になるように漏れなくダブりなく根拠を示します。
前述と同じ参考サイトによる解説
テーマを問いに置き換える
順序が逆転しましたが、ピラミッド構造でまとめるためには、まず書こうとしているテーマを「問い」に置き換えます。例えばロジカル・ライティングがテーマであれば、ロジカル・ライティングとはどういう書き方で、どういうスキルで構成されているのか?という問いに答えます。
まず、自分が書きたいこと、書けることを書くのではなく、「『問い』に答えること」が必要
これが前述の要件1の部分です。この要件1を満たしたうえでロジカル・シンキングのテクニックで論理を整理していきます。
コミュニケーションの設定
テーマの部分についてはコミュニケーションの設定の4つの要素が重要だと述べられています。
- テーマ
- 期待する反応
- 読み手
- 書き手
これらは文章を書くための根本的な要素であり、以下のように根っこのようなものだと述べています。
「何について、何のために、誰が、誰に向けて書くのか」という、文書作成の根っこのようなもの
つまり、読み手の求めること、期待していることをしっかり理解しておくということです。コミュニケーションの設定が適切でなければ、いくら論理をきれいにまとめても読み手には伝わりません。同様のことは他の文章術の本でも様々な表現で述べられており、文章を書くということが読み手を意識したコミュニケーションの手法だということが理解できます。
【読書メモ】0秒リーダーシップ
0秒リーダーシップ:「これからの世界」で圧倒的な成果を上げる仕事術
- 作者:ピョートル・フェリークス・グジバチ
- 出版社/メーカー: すばる舎
- 発売日: 2016/07/22
- メディア: 単行本
誰もが持つべきリーダーシップ
本書ではリーダーシップは誰もが持つべきスキルであるとし、誰もがリーダーシップを発揮できるようになるための考え方、行動のしかたが述べられています。リーダーシップといえば、昨年発売されて話題になった『スタンフォード式 最高のリーダーシップ』が最近では有名ですが、本書も書いてあることは基本的に同じだと感じました。違う点は、スタンフォード式〜のほうは役割としてのリーダーに向けて書かれているのに対して、本書のほうはリーダーの役割ではない人も含めた全ての人に向けて書かれています。リーダーシップの開発には時間がかかるとも言われており(参照:『 会社を強くする人材育成戦略 』、リーダーシップを理解して普段から習慣化することは仕事で成果を上げるためにも、将来リーダーの役割になった時のためにも役立つスキルであると思います。
スタンフォード式〜のほうは過去のエントリー参照。
リーダーシップは「影響力の行使」
リーダーシップを別の言葉に置き換えると「影響力の行使」と述べられています。
自分の行動の結果、どんな影響が出るかをあらかじめ予測して、その行動をとるべきかとらざるべきかを選択して行使するのがリーダーシップです
これは役割としてのリーダーにはもちろん必要なマインドですが、組織の誰もがこのマインドを持って行動すれば組織のパフォーマンスは何倍も加速するでしょう。まさに自立化された組織と言えます。
リーダーシップ3つの基本
リーダーシップ=成果につながる影響力を行使できる人は、どのような人なのか?について3つの基本をあげています。
- 優しさ
- 厳しさ
- 茶目っ気
まず「優しさ」で周囲との信頼関係を築き、「厳しさ」で正しいことを躊躇せず実行する空気を生み出します。そして、難しい問題に直面した時でもポジティブに多角的視点で問題に向き合うために、「茶目っ気」を持っているということです。確かにマンガに出てくるようなヒーローをイメージしてみても、優しさと厳しさを兼ね備え、時にお茶目な一面を見せるリーダーが思い浮かびます。
空気を読んで、空気を壊す
著者はまた、リーダーシップは「空気を読んで、空気を壊す」という一連のアクションであるとも述べています。これは前述の「影響力の行使」の説明の言い換えでもあります。この「空気」という言葉には、チームの方針やメンバーの価値観、世の中の動向、自分が周囲にどう思われているかの自己理解など、様々な意味が含まれていると思います。簡単な言葉ですが奥の深い内容です。この様々な意味が含まれた奥深さを著者は次に紹介する9つのポイントにまとめています。
0秒リーダーシップの9つのポイント
本書では9つのポイントがそれぞれ章ごとに説明されています。概要だけ紹介しておきます。
- イノベーティブシンキング
- 破壊的イノベーションを生み出すクリエイティビティ、T型スキル
- プロトタイプシンキング
- Fail fast(小さく上手に失敗する)
- デジタルリーダーシップ
- ラーニングアジリティ
- 常に学び、素早く行動に移す
- コミュニティリーダーシップ
- ダイバーシティが高い組織、2つの専門分野を持つ「π型」人材
- コンプレクシティリーダーシップ
- すぐに解決できない厄介な問題にも向き合う
- エモーショナルインテリジェンスリーダーシップ
- レジリエンス=折れない心、立ち直る力
- マインドフルリーダーシップ
- マインドフルネス(瞑想)を取り入れる
- リーダーシッププレゼンス
- リーダーにふさわしい存在感、影響力
Learn, Relearn,Unlearn
あとがきで著者は「学ぶことが大事」と説明しています。ここで紹介されている3つのワードが個人的にとても気に入っています。
- Learn=知識を増やす
- Relearn=学び直す
- Unlearn=完全に時代遅れになった考え方、価値観や信念は手放す
参考
- 本書の解説記事
- 著者の記事がいくつかあります
- 著者のインタビュー記事
【読書メモ】論理が伝わる世界標準の「書く技術」
本書は「パラグラフ・ライティング」という手法による文章の書き方の入門書です。7つのルールに従って文章をまとめることで論理的で読みやすい文章を書くことができます。著者自身が書籍について解説した記事で概要を知ることができます。
また、この書籍の元となっているパラグラフなどのキーワードは著者が運営するサイトでも解説されています。
本書自体がパラグラフ・ライティングによって書かれており、読みやすく、良い文章を書くための例題も多く紹介されており、基礎スキルを身につけるテキストとしてもちょうど良いので、チームに入ってくる新卒社員の文章スキルを身につけるためのテキストにしようかと思っています。入社1年目の社員には毎日業務を振り返って日報を書いてもらっているので、テキストで知識を身に着けて、日々の日報でそれを実践していけば1年後には文章によるコミュニケーションで十分なパフォーマンスを出し、エンジニア本来の技術的なスキル習得に集中していけると思います。
パラグラフとは
パラグラフとは、1つのトピックを説明した分の集まりのことです。
類似した文章の単位としての「段落」は単に文章の区切りをつける単位であるのに対して、パラグラフは必ず1つのトピックの情報で構成されます。つまり、パラグラフ・ライティングで書いたときの「段落」は1つ以上のパラグラフで構成されます。
欧米ではパラグラフを使った文章の書き方を学校で学ぶことから、パラグラフ・ライティングは世界標準の書き方であると著者は述べています。また、パラグラフで書かれた文章は以下のような優れた文章になると、著者のサイトでも述べられています。
- 必要な情報/不要な情報の判断が容易
- 重要な情報の読み落としがない
- 速読が可能
- 内容の理解が容易
- 筆者の考えの流れの把握が容易
メンタルモデル
パラグラフ・ライティングの中で著者が紹介しているもう1つの重要なキーワードがメンタルモデルです。
メンタルモデルとは、人が頭の中で作る、自分なりの理解の世界です。
Wikipediaには「頭の中にある「ああなったらこうなる」といった「行動のイメージ」を表現したもの」とあります。
やや心理学的な知識が持ち込まれていますが、私が読み漁った限り、どの文章術の本にも似たようなことが書いてあります。文章スキルとは別物だと思われがちですが、文章を伝える相手の頭の中をイメージすることは、実は文章スキル以前に身に着けておくべき基礎スキルと言えます。著者のサイトでも全てはここからであると書かれています。
パラグラフで書くための7つのルール
本書ではパラグラフ・ライティングの手法として7つのルールが紹介されています。書籍で紹介されている文章の例題でもこのルールに従い解説されています。
- 総論のパラグラフで始める
- 1つのトピックだけを述べる
- 要約文で始める
- 補足情報で補強する
- パラグラフを接続する
- パラグラフを揃えて表現する
- 既知から未知の流れでつなぐ
著者のサイトでも紹介されているので、詳しくは以下参照(本書の内容とはやや表現が違いますが述べていることは同じです)。
個人的には7番目の既知から未知の流れはあまり意識できていなかったことなので覚えておきたいと思いました。既知の情報から説明していくことで論理の飛躍を防止できるというのも確かにそのとおりだと思います。
蛇足的なメモ
このところ文章術系の書籍を読み漁っています。自分自身がスキルを高める目的もありますが、一番大きな理由はチームのマネジメントにおいても重要だと感じているからです。エンジニアの仕事はこの10年ほどで文章を使ったコミュニケーションが格段に増えていると思います。最近ではチャットツールを導入している現場が多いと思いますし、GitHubのIssueやプルリクを書いたりするのも文章を使ったコミュニケーションです。文章を書く機会が増えている一方で、その書き方を学ぶ機会はほとんどありません。私自身、社会人になってから、分かりづらい文章や誤解を招くような表現をスポット的に指導された経験はあるものの、基礎からきっちりと教えてもらった経験はありません。良い文章の書き方を仕事の中で経験的に学んで身につけていくことはもちろん良いことですが、基礎をきっちり学べるに越したことはありません。文章によるコミュニケーションが増えているということは個人の文章スキルがチームのパフォーマンスに影響するということなので、チームのベースとなるような基礎テキストを決められるといいなと思って色々と読み漁っている次第です。
【読書メモ】するどい「質問力」
『「いい質問」が人を動かす』の著者による実践編的書籍です。いい質問を具体的な行動に結びつけるための実践的な内容なので前著を読んでから読むのがベストだとは思いますが、特にそれを推奨しているわけではなく、実際読んでみると本書だけでも十分理解できるし実践もしやすい内容だと思いました。こちらを先に読んで、より深い知識を得たい場合は前著という順番でも良いかもしれません。前著の読書メモについては下記参照。
テクニック的な内容もたくさん書いてありますが、今回は次の1点についてまとめます。これは基本姿勢として大切だと改めて感じました。
まず必要なのは「関心」と「好意」
質問のテクニックを使う前にまず相手への「関心」と「好意」を持つこととし、そうでなければテクニックも活かされないと述べています。確かに、先日私が参加した1on1の勉強会でもやり方のテクニックよりも相手に関心を持って質問することがワークショップで重視されていました。コーチングなどで良く言われるラポールや傾聴も関心と好意がベースの考え方だと理解しています。
ロバート・B・チャルディーニ
その説明として心理学者のチャルディーニが引用されています。
チャルディーニが書いた、人の行動に与える影響力について述べた『影響力の武器』という著名な書籍は、現在のマーケティングに多大な影響を与えています。この書籍で述べられている6種類の影響力の武器の1つが「好意」です。チャルディーニは次のように述べています。
人は好意を抱いている知人からの依頼には「イエス」と言いやすい
このことから、質問も同じで好意を持った人の質問は答えてもらいやすいと著者は述べています。確かに、私が今まで接してきた人を思い出してみても、質問がうまい人は好意的に接してきて自分が興味を持ったこと、知りたいことを上手に聞き出している印象を持っています。
好意を獲得する5つの方法
チャルディーニの理論を踏まえ、好意を獲得する方法として5つの要素を取り上げています。
- 外見の魅力
- 身だしなみ、清潔感など
- 類似性
- 出身地や出身校が同じだと親近感も持つように、類似性があることで好きになる
- 賞賛
- 褒められた人を好きになる
- 単純接触効果
- 毎日顔を合わせる人に親近感を持つように、繰り返し接触することで好きになる
- 連合
- 好きなタレントがCMに出演するとその商品を好きになるように、好きなものと結びつけて好きになる
これら5つの要素を意識すれば必ず相手に関心を示す必要があります。誰でも自分が好意を持つ人を意識して外見を整えたり、類似性を探したり、賞賛したりします。そうやって好意を持つ相手に近づこうとすれば、関心を持たざるを得ません。そう考えると関心と好意を持たずに相手から答えを引き出す良い質問ができないというのも納得できます。
返報性の法則
良い質問に答えてもらうテクニックとして返報性の法則が紹介されています。
相手から受け取った分をお返ししようと考える心理現象です。
人は自分の話を十分に聞いてくれたお返しをしたくなるもの
自分の話に対して関心を持って聞いてくれるなと感じてもらえれば、その後こちらからした質問にも丁寧に答えてもらえるだろうということです。この法則を踏まえると、いくら本質的な質問を準備していても、相手の話にしっかり関心を示せていなければ、お返しに質問へ答えようという返報性が生まれないので、著者の言うとおり「関心」と「好意」を持たなければ質問のテクニックも活かされないということになります。
仕事で話をしていて、どうも噛み合わない、質問に答えてもらっても腑に落ちない、こちらの意見もイマイチ伝わっていない、という時には、改めて相手への関心と好意が持てているかを自分自身に問いかけてみると良いかもしれません。